映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

仕掛人 藤枝梅安

2025年03月01日 | 映画(さ行)

非情を貫く、仕掛人

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江戸郊外、品川台町に住む、鍼医者の藤枝梅安(豊川悦司)。
腕のいい医者ではありますが、実は裏の顔を持っています。
それは、生かしてはならない者たちを闇に葬る冷酷な仕掛人。

この度、ある料理屋の女将の仕掛けを依頼されます。
梅安がまずはその本人のことを調べるために料理屋に出向き、
女将の顔を見た瞬間、思わず息をのみます。
どうやら梅安は、彼女とは浅からぬ因縁があるらしいのですが・・・。

本作は池波正太郎さん原作で、
よく知られているTVドラマシリーズ「必殺仕事人」の、もととなったものですね。
2023年に、池波正太郎生誕100年を記念して制作された2部作のうちの一作目です。

最近少なくなった本格的な時代劇。
トヨエツ演じる渋~い藤枝梅安。
シビれます。

仕掛人は本来、依頼の請負人から仕事を受け、
その依頼者のことは知らないままということが多いようです。

考えてみれば、高い仕掛けの料金を払えるのは相当なお金持ち。
だから本当は、金持ちが自分の儲けのために邪魔になる人物を殺害したいという思いで
仕掛けを依頼することが多くなってしまうような気がします。

けれど、他の人はどうか分からないけれど、少なくとも梅安は
「決して世のためにならないあくどいヤツ」を消したいと思っている。
そのためには、殺人依頼を差配する「請負人」の人格が重要なんですね。
同じような志のあるものと組まなければ、
単なる金儲けのための殺し屋になってしまう。
それではドラマになりませぬ・・・。

この度の仕掛けの標的おみの(天海祐希)は、
確かに周囲の評判もあまり良くはないのですが、
実は梅安は、この女将の前の女将、
つまりこの家の主人の前妻の仕掛けを依頼されて、実行したことがあったのです。
そのため、此度の仕掛け依頼には何か引っかかりを覚えてしまう。
あの時は誰が依頼人かなどは詮索もしなかったけれど、
一体どういうことだったのだろう・・・。
今さらながら真相が知りたくなってくる梅安。
彼の仕掛人仲間である彦次郎(片岡愛之助)とともに、
この料理屋の周辺を探り始めます。

本作ではおみのの正体が知れるにつれて、梅安の過去も分かってくるのですが、
それにしては、あまりにも非情な終わり方・・・。
いやいや、それが仕掛人というものなのでしょう。
キビシイ・・・。

渋い作品ながら豪華キャストで、天海祐希さんが存在感あったなあ・・・。
菅野美穂さん演じる、梅安と情を交わすことになる女中さんも、いい雰囲気でした。

 

<Amazon prime videoにて>

「仕掛人・藤枝梅安」

2023年/日本/134分

監督:河毛俊作

脚本:大森寿美男

出演:豊川悦司、片岡愛之助、菅野美穂、高畑淳子、柳葉敏郎、天海祐希

時代劇度★★★★★

満足度★★★★☆