映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

しあわせのマスカット

2025年01月22日 | 映画(さ行)

お菓子でも果物でも、おいしいものは人を幸せにする

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「消えた初恋」以来、福本莉子さんのファンなもので・・・。

北海道から修学旅行で岡山を訪れた相馬春奈(福本莉子)。
入院中の祖母へのお土産に、ぶどうの女王、マスカット・オブ・アレキサンドリアを
買おうとしていたのですが、財布を落としてしまい買うことができません。
しかたなく手元に残ったお金でアレキサンドリアを使った
和菓子「陸乃宝珠」を買い、祖母に持ち帰ります。
祖母はとても喜んでくれて、春奈自身もそのおいしさに感激。
やがて春奈は、その和菓子を製造している岡山の老舗和菓子メーカーに就職します。

しかし、何をやっても失敗ばかり。
いろいろな部署をたらい回しにされたあげく、
会社が提携しているぶどう農家の援農に派遣されます。
その農家の主、秋吉(竹中直人)は、とんでもなく偏屈で、
手伝いなどいらないと春奈を拒否。
それでもなんとか頑張ろうと春奈は思うのですが・・・。

マスカットと言うことで、農家で頑張る話かと思いきや、和菓子屋さんに就職。
これは「和菓子のアン」の流れかと思いきや、
結局やはりぶどう農家へと向かう話なのでした。

何をやっても失敗ばかりという春奈ですが、
その失敗の影には人の良さがあって、よきキャラクターですね。
北海道出身というのにもちゃんと彼女の背景があるのです。

心が温かくなるお仕事ストーリー。

この和菓子屋さんは、大手の「源吉兆庵」で、「陸乃宝珠」も実在します。
今度買ってみようかな・・・。

<Amazon prime videoにて>

「しあわせのマスカット」

2021年/日本/93分

監督:吉田秋生

脚本:清水有生

出演:福本莉子、中河内雅貴、本仮屋ユイカ、田中要次、長谷川初範、竹中直人

一生懸命度★★★★★

満足度★★★.5

 


シビル・ウォー アメリカ最後の日

2025年01月04日 | 映画(さ行)

絵空事ではない

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近未来、連邦政府から19の州が離脱したアメリカ。

テキサス州、カリフォルニア州からなる西部勢力と政府軍の間で内戦が勃発。
各地で武力衝突が起こります。
就任3期目の権威主義的大統領は、勝利が近いことをテレビの演説で訴えますが、
その実、ワシントンD.C.の陥落が目前に迫っています。

戦場カメラマンのリー(キルステン・ダンスト)を始めとする4人のジャーナリストが、
大統領の単独インタビューを行おうと、
ニューヨークからホワイトハウスを目指して旅に出ます。



これは戦場と化した道路を行く、内戦の恐怖と狂気を目の当たりにする過酷なロードムービー。
米国内の分断と、来たるべき再選大統領の独裁化を思うと、
どうにも絵空事とは思えない空恐ろしい作品です。

私は、めちゃめちゃになった米国の未来人が、
タイムトラベルをしてトランプ氏を狙撃しようとしたというのが、
あの2024年7月13日の事件の真相では?などと思ったりしています・・・。

かつてはアメリカも国内2分して争ったという歴史もありますし、
こんな話もあり得ないとは思えない・・・。

本作でさらに恐ろしいのは、いつしかイデオロギーも何も関係なく、
ただ闇雲に人々が殺し合うような場面があること。

集団リンチや虐殺・・・。

平和はあって当たり前のものではない、ということを心しなければなりません。

<Amazon prime videoにて>

「シビル・ウォー アメリカ最後の日」

2024年/アメリカ/109分

監督:アレックス・ガーランド

出演:キルステン・ダンスト、ワグネル・モウラ、ケイリー・スピーニー、
   スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン

来たるべき近未来度★★★★☆

満足度★★★☆☆


聖☆おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団

2024年12月25日 | 映画(さ行)

笑えない・・・

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神の子イエスと仏の悟りを開いたブッダが、
「休暇」と称して、東京立川の6畳一間のアパートで2人暮らしをするという、
ギャグ漫画「聖☆おにいさん」の実写映画化。

私は原作を読んだことはないのですが、
テレビドラマ版はしっかり見ていてファンですので、
本作もまあ見てみようかと・・・。
でも、本作の面白さはダラダラとした日常生活をこの2人が送る
というところにあるのだけれど、悪魔軍団と戦うなんてことは
すでに日常生活を逸脱していて、単に子供だましなのでは、とイヤな予感も。
ただまあ、単純に笑い飛ばすのもアリかとも思った次第。

結果、つまり悪魔軍団と戦うというのは、ドラマの撮影の話だったわけ・・・。

でもやはり、その前段階の、2人の日常の生活部分は楽しかったけれど、
悪魔との対決シーンになってからはサッパリ笑えず、正直くだらなかった・・・。

ムダに豪華なキャストも、本当にムダでした。

これは、Amazon prime videoで無料で見られるようになってからで十分だったなあ、
というのが私の偽らざる感想です。

<シネマフロンティアにて>

「聖☆おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団」

2024年/日本/93分

監督・脚本:福田雄一

原作:中村光

出演:松山ケンイチ、染谷将太、賀来賢人、岩田剛典、白石麻衣、勝地涼、仲野太賀、神木隆之介、窪田正孝

 

コスプレ度★★★★☆

満足度★★☆☆☆

 


侍タイムスリッパー

2024年12月09日 | 映画(さ行)

時を超えて、ここにいる意味

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2024年8月、当初一館のみで封切りされた本作。
東映京都撮影所の特別協力のもと撮影されたという自主制作作品です。
その後、口コミで話題が広まり上演館が増加していきまして、
興味はあったけれどもタイミングが合わずに見逃してしまっていた私も、
やっと見ることができました。

会津藩士、高坂新左衛門(山口馬木也)は、家老から長州藩士を討つよう密命を受け、
標的の男と刃を交えた瞬間、落雷によって気を失ってしまいます。

目を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。
周囲は江戸時代の服装をした人ばかりなので、
新左衛門はしばらくこの異変に気づきません。

が、さすがにここは自分が元いた世界とはまるで異なることに気づきます。
江戸幕府は140年前に滅んだことを知って、愕然とし、
どうして良いのか分らなくなってしまう新左衛門。

でも、心優しい人たちに助けられ、生きる気力を取り戻していきます。
そして自らの磨き上げた剣の腕を頼りに、撮影所で斬られ役として生きていくことに。

そして順調に進み始めた新左衛門の新たな人生。
そんな時、彼に思わぬ出会いが訪れます。

 

さて、新左衛門と同時に落雷に討たれた長州藩士はどうなったのか、
そんなところも本作の重要なポイントです。

また、新左衛門が消えた後に、
故郷会津藩がたどった悲惨な運命を知ったときの彼の心境。

まったく偶然に起こったタイムスリップではありますが、
自分が時を超えてこんなところで生きている意味をも探ることになる新左衛門。

現代の撮影所近辺の人々が、ほのぼのと新左衛門を受け入れてくれるところが救いでもあります。
新左衛門は記憶喪失になってしまった、というテイでこの地に住み着いているのです。

特別にタイムスリップなどというSFになじみのない方でも、
すんなり受け入れられるストーリーだと思います。

ラストの緊迫感もよし。

映画は予算をかければよいというモノでもないのがよく分ります。

時代劇は今、確かに斜陽かもしれないけれど、
人の心の有り様は今も昔も変わらないので、
きっとまた一回りして、流行るときが来るのではないかな? 
月9で時代劇ラブストーリーなんていかが・・・?
あ、すでに今年の大河ドラマは平安ラブストーリーだったな。

<サツゲキにて>

「侍タイムスリッパー」

2024年/日本/131分

監督・脚本:安田淳一

出演:山口馬木也、冨塚ノリマサ、沙倉ゆうの、峰蘭太郎

武士の生き様度★★★★☆

満足度★★★★★


正体

2024年12月02日 | 映画(さ行)

逃亡を続ける真の目的

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本作は私、WOWOWのドラマを見て、原作も読んでいるので、
とてもなじみ深い作品です。
でもやっぱり、横浜流星版も見てみたくて・・・。

 

一家3人を殺害した凶悪犯で、死刑判決を受けている鏑木慶一(横浜流星)が脱走します。

鏑木は様々な場所で潜伏生活を送り、
様々な人と知り合い、交流を持っていくのですが、
やがて警察の手が迫り間一髪の逃走を繰り返します。

最初の逮捕時から鏑木に向き合っている刑事・又貫(山田孝之)は、
鏑木がそれぞれの場所で出会った人々を取り調べますが・・・。
やがて、彼が必死に逃亡を繰り返す真の目的が明らかになっていきます。

内容を知っているので、いまさら驚きはない・・・と思っていたのですが、
意外にも(?)感動させられてしまいました。

潜伏生活、できるだけめだたないようにしていたいはずの鏑木ですが、
つい人の良さがでてしまい、余計なお世話までしてしまう・・・。
そう、どう見ても彼が殺人犯であるわけがないと、私たちも納得していきます。
逃走先のエピソードは本当はもっと多くて、
その全貌を知りたい方はぜひ原作の方を読んでください。
でも、原作のラストは映画とはちょっと違いますね。
映画の方が好きです!

鏑木が事件で誤認逮捕されたのは17歳のとき。
本作の冒頭では21歳になっています。
そんな彼が終盤でこんな風に言う。

「逃亡生活の中で、初めてお酒を飲んで、友達ができて、好きな人ができて・・・」

通常ならば、青春を謳歌しているはずの年代。
逃亡生活という過酷な状況にありながら、
ごくごくささやかな人らしい幸せを手にできたことを喜んでいるのです。
ちなみに彼は親がいなくて、施設で育ったのですね。

あまりにも幸薄いこれまでの人生が思いやられて、実に切ない。
そして、こんなささやかな体験すらも、
その機会を失わせてしまう「冤罪」というものの恐ろしさ。
あってはならないことです。

WOWOWドラマの亀梨和也さんももちろんよかったのですが、
本作の横浜流星さんも文句なしによかったです。

原作はこちら→「正体」染井為人

 

<シネマフロンティアにて>

「正体」

2024年/日本/120分

監督:藤井道人

原作:染井為人

出演:横浜流星、吉岡里帆、森本慎太郎、山田杏奈、田中哲司、松重豊、山田孝之

冤罪の残酷さ★★★★☆

満足度★★★★.5


十一人の賊軍

2024年11月04日 | 映画(さ行)

生き残るために

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戊辰戦争時を舞台とするストーリー。
私、かねてからの会津贔屓ですので、賊軍の話、大歓迎と思って見始めましたが、
これはそういうものとはまた別の話。

1868年、旧幕府軍と新政府軍(官軍)が争いを繰り広げていたわけですが、
越後の新発田(しばた)藩は、どちらにつくべきか、決断がつかずにいたのです。

奥羽越列藩同盟に加わっていた長岡藩は、
当然新発田藩も加わるもはずとして圧力をかけてきますが、
冷静に状況を見れば官軍の方が有利。
そのため、官軍と通じようとしているところへ、
長岡藩士がこちらの決断を確かめに来る・・・。

切羽詰まった溝口内匠(阿部サダヲ)は、ある計画を立てます。

さて一方、妻を寝取られた怒りから新発田藩士を殺害し、
死罪を言い渡された政(山田孝之)やその他の罪人たちは、
新発田藩士・入江(野村周平)や鷲尾(仲野太賀)から、こんな話を持ちかけられます。

これからやってくる官軍から砦を守り抜けば、無罪放免とする、と。

どうせこのままなら死罪で終わり。
それならば、なんとかやってみよう、と決意する罪人たち。

官軍につくか、それとも旧幕府軍か・・・という話、
少し前にも見たなあ・・・と思い起こせば、
それは長岡藩の内情を描く「峠 最後のサムライ」という作品でした。
役所広司さん演ずる藩士が状況は官軍に有利だけれど、
奥羽越列藩同盟の義理の方を重んじ、立派に戦って死んでいく・・・と、
武士の滅びの美を描いたものでしたが、
その時にいみじくも私は
「どんなにみっともなくても、生き残る人間くささも嫌いじゃない」
と書き記していました・・・。

で、本作はまさに、何が何でも生き残ってやろうともがく者たちの物語なのです。

彼ら咎人たちは、つまり新発田藩家老にとって使い捨てのコマにしか過ぎません。
そうした真実を知った彼らは、もう官軍も賊軍も、正義も、何も関係ない。
とにかく生き抜こうともがくのです。

死罪を申し受けた罪人は政ら11人。
でもうち一人は女性で、実際に戦闘に加わるわけではありません。
では本当の11人目は誰なのか? 
そこがミソであります。

武士ではない罪人たち(武士も含まれてはいますが)の戦いぶりは
決してカッコ良くはないのですが、何しろ迫力があります。
血みどろ、汗みどろ・・・。
一人、また一人と倒れていきます・・・。
壮絶。

とにかく息を潜めて見入るのみ・・・。

 

話は変わりますが、この日は久しぶりにサツゲキにて鑑賞。
でも、どうしてこの頃ここに足が遠のいていたのか分った気がしました。
あまりにも空いているので、居心地が悪いのです・・・。
だいじょうぶなのか、サツゲキさん・・・。

 

<サツゲキにて>

「十一人の賊軍」

2024年/日本/155分

監督:白石和彌

原案:笠原和夫

脚本:池上純哉

出演:山田孝之、仲野太賀、尾上右近、岡山天音、一ノ瀬颯、野村周平、玉木宏、阿部サダヲ

 

血まみれ度★★★★☆

迫力度★★★★☆

満足度★★★★★

 


静かな情熱 エミリ・ディキンスン

2024年10月16日 | 映画(さ行)

深い思索の中で生きた1人の女性

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1800年代を生きたアメリカの女性詩人、エミリ・ディキンスンの生涯を描きます。
正直、私は存じませんでしたが・・・。

エミリ・ディキンスンは、北米の小さな屋敷から出ることなく、
生前にわずか10編ほどの詩を発表したのみで、無名のまま生涯を終えました。
しかしその死後に、1800編もの詩が発見され、
繊細な感性と深い思索の中で綴られた詩の数々は、
後世の芸術家に大きな影響を与えたのです。

本作中のエミリは、気性が荒く、偏屈。
人と気安く打ち解けるような人物ではありません。
若い頃に寄宿学校へ入っていたのですが、
自分の信条と合わずに、戻って来てしまいました。
以後、ほとんど実家に籠もりきり。
思いを寄せる人は既婚者で、もちろん自分の思いを伝えることはしない。
逆に、彼女に思いを寄せる相手もいたのに(希少価値!)
そちらには手ひどく冷たい仕打ち。

ただ夜な夜な詩を書くときのみが彼女の安らぎの時。
しかしその詩は、当時「女が書く詩なんて・・・」と編集者に軽んじられて、
まともな評価を受けることができなかった訳です。

ただ1人の親友は結婚で離れて行ってしまい、
彼女の詩作を許してくれた父も亡くなり・・・、
いよいよ孤独の淵に立つ彼女を、さらにまた難病が襲います。

当時としては結婚もせず実家にいて、
自分のやりたいこと、詩を書くことだけをして生きていたというのは、
女性の生き方としてはまことに希有でありましょう。
つまり実家は並以上には裕福であったということで、
病気のことを除けば実は幸福であったのかも知れません。

彼女を見守る妹や兄、兄嫁もいて、
これで孤独だなどと言ったらバチが当たる。

逆に言うと、こういう境遇だからこそできた多数の詩編。
人生のままならなさは、そのままならなさから生まれる何かもある、
ということですね。

ちょっと退屈な作品かな・・・などと思いながら見ていたのですが、
今思えば、女性の生き方を考える上では意義深い作品のようです。

 

<Amazon prime videoにて>

「静かな情熱 エミリ・ディキンスン」

2016年/イギリス/125分

監督・脚本:テレンス・デイビス

出演:シンシア・ミクソン、ジェニファー・イーリー、キース・キャラダイン、
   ジョディ・メイ、ダンカン・ダフ

頑迷度★★★★☆

満足度★★★☆☆


ザ・ハッスル

2024年09月20日 | 映画(さ行)

だまし、だまされ・・・

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1988年映画「ペテン師とサギ師 だまされてリビエラ」で
マイケル・ケインとスティーブ・マーティンが演じた主人公の
性別を変えてリメイクしたもの、ということです。
・・・そちらの元作は見ていませんが・・・。

 

南フランスの海辺の町。

男を騙して小金を稼ぐペニー(レベル・ウィルソン)が、
凄腕のサギ師ジョセフィーヌ(アン・ハサウェイ)と出会います。
ペニーはジョセフィーヌに師事する形で、一緒にサギを働くように。

男たちから次々に金を巻き上げて行く2人。
いつまで経っても分け前をもらえないことに業を煮やしたペニーは、
ジョセフィーヌと決別。

2人は、莫大な財産を持つ純朴そうな青年トーマスをターゲットに、
サギの腕を競い合うことになってしまいますが・・・。

 

女性のサギ師が男を騙して金を巻き上げるというストーリーが気に入りました。
そしてこの2人は息が合って協力関係、というのではなく、
なにかと反目しあっているというところも。

2人の標的となってしまった純朴そうな青年がお気の毒・・・と見ていましたが、
なんと!!というストーリーも洒落ていますね。

おちゃらけてばかりのペニーが意外にもプロ意識が高いど根性の持ち主というのも伝わりました。
なかなか熾烈。

でも、最後のオチもまた良くて、とてもオシャレな仕上がりの作品だと思います。

 

「ザ・ハッスル」

2019年/アメリカ/93分

監督:クリス・アディソン

出演:アン・ハサウェイ、レベル・ウィルソン、アレックス・シャープ、ディーン・ノリス

ペテン度★★★★☆

満足度★★★.5


スオミの話をしよう

2024年09月17日 | 映画(さ行)

本当はどういう女だったのか

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豪邸に暮らす著名な詩人・寒川(坂東彌十郎)の新妻・スオミ(長澤まさみ)が行方不明になります。

そこへ訪れたのが、刑事・草野(西島秀俊)ですが、
彼はスオミの元夫で、私的に呼ばれただけ。
寒川は大事にしたくないといって、警察に届け出ることを拒否。
草野は誘拐かもしれないから、警察に連絡して、
捜査を開始すべきと言うのですが・・・。

そんな中、さらにスオミの元夫たちが集まってきます。

最初の夫で、今はこの屋敷の庭師兼家政婦をしている魚山(遠藤憲一)。

2番目の夫、ユーチューバーで資産家の十勝(松坂桃李)。

3番目の夫は警察官・宇賀神(小林隆)。
スオミが中国人で中国語しか話さないと思い込んでいた!!

4番目の夫が刑事・草野。

そして5番目の夫が、現在の夫・寒川。

彼らはスオミと出会い結婚したいきさつなどを熱く語り合うのですが、
男たちの口から語られるスオミは、それぞれまったく違う性格の女性で・・・。

一体、スオミとは何者だったのか?
そして、今回の失踪の原因は?

いかにも、三谷幸喜ブシ全開。
ほとんどの舞台はこの屋敷の中。
そしてすべてワンカットとは言えないまでも、
相当の長回しで登場人物を追いながらカメラを回すという手法。
舞台を見る感覚に近いです。

それぞれの人物が語る回想シーンに、
必ず同じ女性(宮澤エマ)が、それぞれまったく異なる職業で登場するのも面白い所です。
一体この女は何者なのか・・・?

スオミは結婚詐欺的な人物なのかと思ったのですが、
でも、誰も大金を巻き上げられたりしてはいない様子。
ただ、金持ちのはずの寒川の、あんまりな吝嗇ぶりには嫌気がさしたようではあります。

ただ男たちの望む姿でいようとした・・・、
けれど結局男たちを手玉にとっている。
そういうタフさがいいなあ・・・。

ラストのショー仕立てのシーンでは、西島秀俊さんのダンスが見られるのも、儲けもの。
(もちろん、他の出演者たちも同様ではありますが。)

楽しかった~♪

TOHOシネマズ札幌にて

「スオミの話をしよう」

2024年/日本/114分

監督・脚本:三谷幸喜

出演:長澤まさみ、西島秀俊、松坂桃李、坂東彌十郎、遠藤憲一、
   小林隆、瀬戸康史、戸塚純貴、宮澤エマ

コミカル度★★★★☆

満足度★★★★☆


ジュリーと恋と靴工場

2024年09月13日 | 映画(さ行)

職人のプライドをかけた靴作り

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25歳、職なし金なし彼氏なしのジュリー。
ようやくフランスのロマン市にある高級靴メーカーの工場での仕事に就きます。
しかし、工場は近代化のあおりで閉鎖の危機。

職を失うことを恐れた靴職人の女性たちが抗議のためパリ本社へ乗り込み、騒動を起こします。
ジュリーもそれに巻き込まれてクビになりかけたりもします。
職人の意地とプライドをかけた女性靴職人たちは
「闘う女」と名付けられた赤い靴を武器に、この危機を乗り越えようとします。

ミュージカル仕立てのストーリー。

何もかも合理化の波にさらされて消えていく・・・、
今だからこそそうしたことに異議を唱えるストーリーなんですね。
入社したてのジュリーはストライキに参加すれば即クビ。
だから少し盛り上がる同僚たちとは距離を置いていたのですが、
次第に手仕事に情熱とプライドを持つ彼女たちの心に寄り添うようになっていきます。

でもね、確かに上質で高級なその靴を、一体どれだけの人が履けるのだろうか・・・
と、私はちょっぴり思ったりするのです。
ジュリーがその前に務めていたところの量産品の安価な靴だって意義があると思うけど。

まあそれは余計な話。
ジュリーの恋も絡めて、さすがオシャレなフランス作品ではあります。

<Amazon prime videoにて>

「ジュリーと恋と靴工場」

2016年/フランス/84分

監督・脚本:ポール・カロリ、コスチャ・テステュ

出演:ポーリーヌ・エチエンヌ、オリビエ・シャントロー、フランソワ・モレル、
   ロイック・コルベリー、ジュリー・ビクトール

 

満足度★★★☆☆

 


スラムドッグス

2024年09月07日 | 映画(さ行)

犬を捨てたヤツに復讐せよ

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犬のレジーは、飼い主のダグに家から遠い場所に捨てられてしまいます。

実は、レジーはダグから数々の虐待に近い扱いを受けていたのですが、
それを遊びかゲームと思い込んでいました。
それでこのたびのことも、ゲームの一つと思い、
とまどいつつも、家を目指してさまよい始めます。

そんな時に、ノラ犬のバグと出会い、
ダグの扱いは虐待で、これはゲームではなく捨てられたのだと指摘します。
飼い主ダグが最低なヤツだとようやく認識したレジーは、復讐を決意。
賛同するバグと、新たに知り合ったマギー、ハンターとともに、レジーの家を目指すことに。

さてさて、ごく気楽に見られるものが見たいと思い見始めましたが、
あまりにも下ネタ満載、下品な言葉のオンパレードに
ちょっとげんなりさせられました・・・。
イヌのことだからいい?? 
イヤイヤイヤ、本作、子供には見せられませんよ。
(実際、PG12だった!!)

それでも、犬たちは十分可愛くユーモラス。
これはすべて実写ではなくて、CGも入ってる感じですね。
犬が話している口元とかを見ると・・・。

ちなみに、彼らはみな違う犬種で、

レジー:ボーダーテリア

バグ:ボストンテリア(野良犬生活を謳歌中)

マギー:オーストラリアンシェパード(飼い主は子犬に夢中で、マギーに興味を失っている)

ハンター:グレートデン(体格はいいが、警察犬になり損ねた臆病犬)

まあ、犬同志の友情は美しかった・・・。

<Amazon prime videoにて>

「スラムドッグス」

2023年/アメリカ/94分

監督:ジョシュ・グリーンバウム

脚本:ダン・ペロー

出演(声):ウィル・フェレル、ジェイミー・フォックス、アイラ・フィッシャー、ランドール・パーク

下品度★★★★★

満足度★★☆☆☆


シグナル

2024年08月09日 | 映画(さ行)

何のために・・・?

* * * * * * * * * * * *

MIT(マサチューセッツ工科大学)の学生ニックは、
大学のパソコンにハッキングを仕掛けてきたハッカーの居場所を突きとめるため、
友人のジョナス、ガールフレンドのヘイリーとともに、ネバダを訪れます。
しかし、そこで何者かに襲われ、拉致されてしまいます。
そして、気がつくと政府のものらしき隔離施設に監禁されているのでした。

職員は、ニックたちが『何か』に接触したために感染したと説明。
彼らはガッチリした防護服に身を包んでいて、決してニックらに直接触れようとしません。
それ以前に、ニックは病で足が動かなくなってきていて
杖がなければ歩けない状態だったのですが、その足にも変化が・・・!

途中でネバダ州のこの場所がエリア51であることが明かされます。
つまり、エイリアンがらみのお話・・・?

エイリアンの恐るべき技術が、彼らの体を変化させているらしいのですが、
そもそもその目的は?

そしてここの職員たちは果たしてニックらの味方なのか、
それともエイリアン側の味方なのか?

ナゾは深まるのですが、結局最後までなにもかも余計疑問が膨らむばかりで、
サッパリ分らない。

どうもこういうオチは苦手です。

<Amazon prime videoにて>

「シグナル」

2014年/アメリカ/97分

監督:ウィリアム・バンク

出演:ブレントン・スウェイツ、ローレンス・フィッシュバーン、オリビア・クック、ボー・ナップ

不可解度★★★★★

満足度★★☆☆☆


セイント・フランシス

2024年07月19日 | 映画(さ行)

女だからこそ、立ち向かう問題

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大学は中退で、正規の職には就けず、レストランの給仕として働きながら、
夏の子守りの短期仕事を探す34歳、独身のブリジット(ケリー・オサリバン)。

ようやく、6歳の少女フランシスの子守りの仕事にありつきます。
男児を出産したばかりの白人女性マヤと会社勤めの黒人女性アニー、
この2人のレズビアンペアの娘がフランシスです。

始めから、おっと思ってしまう設定。
多様性の時代。
今さら目くじらを立てることもありません。
さて、マヤは産後ウツなのかも知れないけれど、精神的にやや不安定。
また、仕事に出ているアニーは、日中マヤが浮気をしているのでは?
などと疑惑を持っています。
そうした家族の状況も波乱含み。
そして、ブリジットは妊娠していることに気づき、ほとんど悩むこともなしに中絶を決意。
そもそも、その相手のことを「付き合っている彼氏」とも認識していないようです。
単なるセフレ・・・? 
でもその彼は意外とイイ奴で、ブリジットを気遣ってくれたりしているのですけれど・・・。

ブリジットは、子供好きというわけではありません。
そしてフランシスは無愛想で気難しげ。
実は母親が赤ん坊にかかりっきりでしかも精神不安定ということで、
フランシスをかまってもらえず、淋しくて不機嫌になっていたようです。
そんなわけで、なんとも良好とは言いがたい、ブリジットとフランシス。

生理のこと、妊娠のこと、避妊のこと、妊娠中絶のこと・・・。
人類の半数は女性であるのに、
ドラマや映画でこのようなことが取り扱われることはとても少ないですね。
本作では目をそらさず、真っ正面からこのような問題に取り組んでいます。

ブリジットとフランシスは次第に友人同志のような良い関係に向かっていきます。
女性にしかできない、妊娠、出産。
リスクも大きいけれど、でもやはり子供は宝であるという示唆は悪くはありません。

子供がいなければ未来もないですもんねー。

 

<Amazon prime videoにて>

「セイント・フランシス」

2019年/アメリカ/101分

監督:アレックス・トンプソン

脚本:ケリー・オサリバン

出演:ケリー・オサリバン、ラモナ・エディス=ウィリアムズ、チャーリン・アルバレス、リリー・モジェク

 

多様性度★★★★★

女性の生理度★★★★☆

満足度★★★★☆


散歩時間~その日を待ちながら~

2024年07月06日 | 映画(さ行)

コロナ禍で得られなかったもの

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獅子座流星群がピークを迎えた2020年11月17日。

コロナ禍の始まりの年。
人々が戸惑いと不安の中で、その閉塞感とどのように折り合いを付けていったのか・・・、
今となっては思い出したくもないような気もしますが、重要な歴史の1ページ。
その意味で将来、貴重な資料的映像作品となるかも知れません。

コロナ禍で、通常なら当たり前にできることが、できなくなってしまった。
そんな人々の群像劇です。

結婚式が挙げられなくなってしまった新婚夫婦、亮介とゆかり。
都会から離れた友人の家で、お祝いパーティを開いてくれました。
そんな語らいの場で、日頃から本音を語らない亮介の隠し事を知ってしまったゆかり。
その場には不穏な空気が流れます・・・。

出演舞台の中止がつづく、若手俳優の片岡。
ウーバーイーツのバイトをしていますが、とりあえず次の公演の予定は立っていて・・・。

帰省できず、里帰り出産の我が子を抱くこともできずにいる、タクシー運転手。

学校イベントがほとんど中止となってしまった、幼馴染みの中学3年男女。
恋心を打ち明けられずにいます・・・。

一応別々の話ではありますが、途中で互いがほんの少し接点を持ったりするところが楽しい。

それぞれが抱えていた失意や閉塞感は、
結局はやはり人とのつながりを持つことで癒されていくようです。
そして、夜空を流れて行く獅子座流星群。
その雄大な事象の美しい光景に、ちょっぴり勇気と力をもらうのでした。

<Amazon prime videoにて>

「散歩時間~その日を待ちながら~」

2022年/日本/95分

監督・原案:戸田彬弘

脚本:カクカワサキ

出演:前原滉、大友花恋、柳ゆり菜、中島歩、篠田諒、めがね

 

癒やし度★★★☆☆

満足度★★★☆☆

 


ザ・ウォッチャーズ

2024年07月02日 | 映画(さ行)

見ているのは、何者か

* * * * * * * * * * * *

M・ナイト・シャマラン制作、その娘さんのイシャナ・ナイト・シャマラン監督作品です。

舞台はアイルランド。

28歳のアーティスト、ミナ。
鳥かごに入った鳥を指定の場所に届けに行く途中、
地図にない不気味な森に迷い込みます。
スマホやラジオが急に使えなくなり、そして車も動かなくなってしまいます。
助けを求めようと車外に出ると、その車も消えてしまいます。

やむなく森の中をさまよううちに、忽然とガラス張りの小屋が現れます。
そこにいたのは、60代マデリン、20代シアラ、そして19歳のダニエル。

彼らは、自分たちはここで毎夜訪れる“何か”に監視されていると言うのです。

ここで暮らす三つの掟は

・監視者に背を向けてはいけない。

・決してドアを開けてはいけない。

・常に光の中にいる。

これを破ると殺されるというのですが・・・。

状況を変えようとしない3人に対して、ミナはなんとか監視者の状況を探り、
この森から脱出できないかと方法を探ります・・・

私、この予告編を見たときに、常に彼らを監視しているというのは、
つまりテレビなどで彼らのことを見ている「視聴者」なのでは・・・?と、
つい以前にどこかで見たようなストーリーを想像してしまったのですが、
安心してください。
それは全く違いました!

アイルランドが舞台というあたりが多分ミソでして、
古代からの伝承が絡んでいる・・・。

まあ、たとえそれがどんな相手ではあっても、
決してあきらめず、希望を持って、できる限りのことをするということが大事なのでしょう。

本作は、ミナが15年前の母の死に関してのトラウマを抱えていて、
そのことからの脱却も合わせて行われる、
と、前進するタフな女性像は、よいですね。

<シネマフロンティアにて>

「ザ・ウォッチャーズ」

2024年/アメリカ/102分

監督・脚本:イシャナ・ナイト・シャマラン

制作:M・ナイト・シャマラン

原作:A・M・シャイン

出演:ダコタ・ファニング、ジョージナ・キャンベル、オルウェン・フエレ、
   アリスター・グラマー、オリバー・フィネガン

 

スリル感★★★☆☆

満足度★★★☆☆