リピート (文春文庫 い 66-2) 乾 くるみ 文藝春秋 このアイテムの詳細を見る |
「リピート」乾くるみ 文春文庫
精神のタイムトリップ。
SFっぽくもあるこの物語の設定は、西澤保彦にも似ています。
また、心だけが過去の自分の肉体にトリップするというのは、
「バタフライ・エフェクト」にも似ています。
しかし、やはりこれはかなり独自の世界でした。
基本的にはミステリなんでやっぱり人が死にます・・・。
学生である毛利は、ある日突然不可解な電話を受ける。
風間というその男は、これから来る地震を時刻も震度もぴたりと当ててみせ、
実は自分は未来からタイムトリップしてきたのだという。
男はこの現象を「リピート」と呼んでおり、
次のリピートを、一緒にしないか、というもの。
行けるのは10ヶ月前だけ。
10月のある特定の場所、時刻からでなければそれはできない。
風間はそれでもう何度も、この10ヶ月をリピートしているという。
9人が同様に集められ、総勢10人で10ヶ月前に向かうことになる。
読み進むうちに、この9人は無作為に選ばれたのではなく、
ある一定の基準で選ばれたことがわかります。
果たして、彼らは自らの運命を変えることができるのでしょうか・・・。
そして、リピーターが一人、また一人と謎の死を遂げていくのは一体どうして・・・。
さて、自分のことを考えると10ヶ月前・・・。
戻りたいですかね?
私はこの退屈な日々をまた繰り返すのなんて、真っ平ごめんという気がしますが・・・。
もっと若い頃に戻って人生をやり直す、というのならどうかなあ・・・。
ストーリーの中では、いろいろな可能性を言っていました。
受験に失敗した若者。出る問題はわかっているのだから、今度は成功間違いなし。
競馬の結果がわかっているので、ぼろもうけができる。
振られた彼女を今度はこっちからさっさと縁を切って、新しい彼女を作る。
なるほど・・・、おんなじ映画を見たってつまらないと一瞬、思ったのですが、
今度は別の映画を見ればいいわけですか・・・。
いや、そんなことのために私はわざわざ10ヶ月前になんか行こうとも思わないなあ・・・。
それより、彼らはリピートに旅だった後の自分の運命が気にならないのでしょうか。
精神が抜けた肉体って、すなわち死なのではないかな・・・。
それとも、旅立った精神とは別の自我が、またそこに宿るのでしょうか。
であれば、その「自分」は、
「何も起らなかったじゃないか、ウソツキ」、と思うでしょうね。
つまりある時点でいろいろな運命に枝分かれしている多元宇宙。
今意識している「自分」さえ良ければ、後の世界の「自分」はどうなってもいい、
と、そう簡単に割り切れるものかなあ。
いろいろと考えるとこんがらがって分けがわからなくなります。
でも、そういう話を想像するのは嫌いではありません。
結局このストーリーの結末は結構悲惨。
やはり、一度の人生を堅実に生きましょうよ・・・。
満足度★★★☆☆