ライ麦畑愛
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本作を見るために、予習として「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を読んでおいたのですが、
それが大正解!!
やはり、「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の主人公ホールデンを知っているかいないかで
本作への思い入れが全然違うことになると思います。
そもそも2019年1月1日は、J・D・サリンジャー生誕100周年だったのですね!
本作はその、J・D・サリンジャーの半生を描く作品です。
1939年、作家を志しコロンビア大学創作学科に編入した20歳、サリンジャー(ニコラス・ホルト)。
教授・ウィット・バーネット(ケビン・スペイシー)のアドバイスで短編小説を書き始めます。
小説の出版社への売り込みも断られ続けますが、
ようやく掲載が決まったところで第二次大戦勃発。
掲載は見送られてしまいます。
そして招集により戦地に赴いたサリンジャー。
ノルマンディー上陸のあのDデイの激烈な戦闘、酷寒の森、
そしてユダヤ人収容所の惨状等を目撃し、心に大きな傷を負うのです。
しかしそんな戦地でも彼は、「短編」に登場したホールデンの物語を長編に仕立てるべく、
小説を書き続けていました。
そしてようやく終戦。
故郷へ戻ったサリンジャーはいよいよ長編を書き上げようとするのですが・・・。
なるほど、ホールデンはサリンジャーの分身なのだなあ・・・という思いを強くしました。
「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の出版は1951年。
戦地で書き続けていたというのに、ずいぶん後だなあ・・・と思うわけですが、
実は大変な事情があったということがわかります。
そしてまた、この大ヒットで著名になると同時に、
サリンジャーにとってはまた苦難が始まることになる。
彼ほどナイーブな人でなければ何も問題はなかったのでしょうけれど。
いやナイーブだからこそ、こうしたストーリーが描けるというわけですよね。
その後隠遁生活、出版拒否という特異な人生を歩むことになる・・・。
こうしてみると彼の人生そのものが、まるで彼の作品であるような・・・。
カモの池のシーンとかメリーゴーランドのシーンとか、
「キャッチャー・イン・ザ・ライ」にあるシーンをあえて入れてくれているのが嬉しい。
ちなみに私は村上春樹さん訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の題名を愛していますので、
あえて「ライ麦畑でつかまえて」とはしていませんのでご了承くださいませ。
そしてまた、ちなみに、私はつい先ごろ「戦場のコックたち」の本で
Dデイの戦闘、酷寒の森の塹壕のシーン、ユダヤ人収容所の開放時のシーンを
読んだばかりでした。
時々ありますよね、こうした自己シンクロニシティ。
<シアターキノにて>
「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」
監督:ダニー・ストロング
出演:ニコラス・ホルト、ケビン・スペイシー、ゾーイ・ドゥイッチ、サラ・ポールソン、ビクター・ガーバー
ライ麦愛度★★★★★
満足度★★★★★