「精霊探偵」 梶尾真治 新潮文庫
帯にスピリチュアル・ミステリー、とあります。
私はそもそも、その手の話しはあまり好きではないのですが、カジシンのストーリー自体は好きなので、読んでみました。
語り手の新海は、大きな事故のあと、不思議なものが見えるようになってしまった。それがなんと、人の背後霊!!
実は、その事故で最愛の妻を亡くしてしまい、彼は失意で、生きる気力もなくしてしまっていた。
そんな時、ある行方不明の女性を探す仕事を請けるのです。
でも、その調査をするうちに、次第に生きる気力を取り戻していく、そういうお話。
さてある日、一人の浮浪者にとんでもない凶悪な人相の2つもの霊が取り付いているのを見る。
清めの塩を振ってみると、その2つの霊は消え去ってしまった。
実はもう一体霊は残っていて、これが本来の彼の守護霊。
なんとこの後、このホームレスはどんどんツキが出て、元から得意だった演歌の実力も発揮。
瞬く間に、活気のある生活を取り戻していく・・・。
このあたりのくだりがすごく面白くて、本を読んでいた私はもう少しでバスを乗り過ごすところでした。
それからもう一人、ステキな登場人物がいまして、
それは小夢ちゃんという小学生の女の子。
はじめは母親から虐待を受けている子という設定で登場しますが、
実はその母親の方になんと黒猫の霊がついており、これも新海が取り除いて解決。
ところがその黒猫が今度は小夢についている。
しかし、なぜか霊とウマが合うとでもいうのでしょうか、
小夢はますます利発さと積極性を発揮しはじめるのです。
そして自ら探偵助手を名乗り、これがまた実に有能なので、恐れ入る。
ふう、実はここまでは前フリのストーリーで、本当のストーリーはここからなのです。人の背後霊を食い、成り代わってその人を操ろうとする、邪悪なモノたちとの戦いのストーリー。
このあたりで、そうかこれはやっぱりSFなんだな~、とようやく思うのですが、
そうですね、私は前フリのストーリーの方が面白かったかも・・・。
さて、ところがなんとラストに驚きのどんでん返しが潜んでいました!!
よく新本格ミステリのラストにあるような、あれです。
ミステリとしてはきわめて斬新。
スピリチュアルとしてもよし。
切ないラブストーリーとも見える。
そして、人類を侵略するエイリアン(?)と戦うSFでもあるという、
面白さ満載の本なのでした。
満足度★★★★