私は、いますか?
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ぼーっとしては見られない作品。
孤独なロボット工学者・桐生薫(豊川悦司)は、
古色蒼然とした元病院の洋館に一人住んでいます。
大学教員の仕事の傍ら、自分そっくりな
「もう一人の僕」のアンドロイド開発に没頭しているのです。
ある日、ずっと会っていなかった腹違いの弟(安藤政信)が訪ねてきます。
父が危篤であることを告げ、そしてこの土地・建物を売却処分したいと、
勝手なことを言いますが・・・。
終始陰鬱な画面。
いつも雨です。
桐生は、なぜかときおり右足がいうことを聞かなくなり、
歩くのにも不自由してしまう。
授業はいつも黒板にひたすら難解な数式を書くばかりで、
最後に「字が汚くてすみません」と一言だけ言って帰ってしまう。
さすがに、大学当局からも苦言を入れられてしまいます。
しかしつまり、桐生の情熱はすべてアンドロイド開発に向けられているのです。
作中に登場する心理カウンセラーが言うことには、
自分の体なのに、自分の体ではないように思えてしまう人がいる。
まるで死んでしまった物体のように、自分自身が生きている感覚が薄い。
だから、自分の足も動かせなくなってしまう。
それが正解かどうかは分からないけれど、
それでも気力を振り絞って、なんとか足を動かすこともできる桐生。
でもそれはつまり、自分の体ではない「物」であっても、
自身の「動かそうと思う力」で、動くのではないか???
桐生が作ろうとしているアンドロイドの原理は作中では語られませんが、
私は勝手にこのような想像をしてしまいました。
桐生の住んでいる家は、巨大な岩壁を削って作ったらしき小さなトンネルをくぐり抜けた先にあります。
まるで、異界へ通じるトンネルのようでもある。
大正か昭和初期のような時代がかった病院の光景と、最先端テクノロジーのアンドロイドの研究。
まるでフランケンシュタインを作り出そうとしているようでもあります。
2020年に完成済みながら、コロナ禍により2022年に公開になったという本作。
なんとも不思議でほの暗い雰囲気にあふれる作品。
<WOWOW視聴にて>
「弟とアンドロイドと僕」
2020年/日本/94分
監督・脚本:阪本順治
出演:豊川悦司、安藤政信、風祭ゆき、本田博太郎
不可思議度★★★★☆
満足度★★★★☆