映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「文学キョーダイ!!」奈倉有里 逢坂冬馬

2024年11月20日 | 本(その他)

どういう家庭に育てば、こんな風になれるのか・・・

 

 

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ロシア文学者・奈倉有里と、小説家・逢坂冬馬。

文学界の今をときめく二人は、じつはきょうだいだった!
姉が10代で単身ロシア留学に向かった時、弟は何を思ったか。
その後交差することのなかった二人の人生が、
2021年に不思議な邂逅を果たしたのはなぜか。
予期せぬ戦争、厳しい社会の中で、我々はどう生きるか?

縦横無尽に広がる、知性と理性、やさしさに満ちた対話が一冊の本になりました。

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私、敬愛する奈倉有里さんと、大ヒット作「同志少女よ敵を撃て」の著者・逢坂冬馬さんが
姉弟であると知った時には驚きました。
そして、一体どう育てればこんな立派な子どもたちができあがるのか、
と、つい思ってしまいました。

本巻、そんな下世話な疑問にも答えの出る本となっています。

 

お二人のお父様は、日本史の先生なのですね。
ただ教える人というよりも、現役の研究者。
そして、子どもたちには「好きなことを好きなようにやりなさい」という主義。
出世しなさいみたいなことはまったく言わない。

よく、周りの人からお父さんは「となりのトトロ」の
さつき・メイ姉妹のお父さんに雰囲気がよく似ていると言われたそうで。
なるほど、そういわれると、すごく想像しやすいですね、その感じ。
で、ジブリついでで、このお二人は「耳をすませば」の天沢聖司と月島雫であるという。
つまり、好きなことのために外国へ留学してしまった天沢聖司が奈倉有里さん。
文を書くことが好きで作家になった月島雫が逢坂冬馬さん。
男女逆転しているところがまた、この姉弟っぽい。
お二人の子どもの頃や、その家族、お祖父さまの話など、大変興味深く拝読しました。
・・・まあ、なんにしてもやはり、そこらの家庭とは違うな、とは思います。

 

そして、お二人は特別親しく連絡を取り合うということもなく、
互いの近況は人づてに聞く程度であったにもかかわらず、
2021年、有里さんは初の単著「夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く」を上梓し、
その一ヶ月ほど後に逢坂冬馬さんのデビュー作「同志少女よ、敵を撃て」が出版されたとのこと。

しかも「夕暮れに」は紫式部賞受賞。
「同志少女」はアガサ・クリスティー賞および本屋大賞受賞。
なんというタイミング! 
スバラシイですね。

 

そして、最終章ではうんと話は深まって「戦争」についてが語られて行きます。
ロシア文学を研究する有里さんにとっては、戦争は避けては通れないし、
逢坂さんの「同志少女」も、そのものズバリ、戦争の話ですものね。

この日本もまた、ある種の国民の思想統制的な流れが現在進行形である
・・・というあたりも一読に値するのではないでしょうか。

 

対談中、有里さんが弟を逢坂さん、逢坂さんは姉を「有里先生」と呼んでいるのが、
いかにも互いを尊重していることがうかがわれて、ステキでした。

 

<図書館蔵書にて>

「文学キョーダイ!!」奈倉有里 逢坂冬馬 文藝春秋

満足度★★★★★


グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声

2024年11月18日 | 映画(か行)

年月を経たからこその

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大ヒット作「グラディエーター」の、24年ぶりとなる続編。
私、つい最近「グラディエーター」は見直していて、予習はバッチリでした。

冒頭、舞台は北アフリカ。
将軍アカシウス(ペドロ・パスカル)率いるローマ帝国軍の侵攻により
敗れ、愛する妻を殺され、奴隷の身となったルシアス(ポール・メスカル)。
すべてを失った今、アカシウスへの復習を心に誓っています。

そんな時彼は、奴隷商人アクリヌス(デンゼル・ワシントン)と出会う。
アクリヌスは、ルシアスの中で燃えさかる怒りに目を付け、
彼を有望株の剣闘士(グラディエーター)として、ローマへ移送します。
そしてルシアスは、コロセウムでの戦いに挑んでいく。

さて、ルシアスは作中の半ばほどまでルシアスとは名乗らず、
別の名を名乗っています。

ネタばらしとなってしまいますが、これは本作の解説サイトなどでも言ってしまっているので、
ここでも、お許しを・・・。

つまりルシアスというのは、先々代の皇帝の娘にして、先代の皇帝の姉である
ルッシラの息子なのです。
今の皇帝は狂気の独裁者である双子の兄弟。
ルッシラは、この2人に必ずや命を狙われることになるであろう息子を逃し、
以後、行方も分らなくなっていたのでした。

ところが、なんとなんと、このルシアスは、
前作のヒーローであるマキシマスの息子であるというのです。
うそ~、と思いますが、前作でマキシマスとルッシラが
以前ただならぬ関係だったらしいとは誰もが感じるような作りになっていましたし、
一度だけ獄中にあるマキシマスと少年ルシアスの対面シーンは
妙に意味ありげで印象的な場面となっていました・・・。
実は親子であると、そうした含みがあったことを24年後の今知るなんて・・・。
恐るべし。

というように、本作、単に二番煎じではなくて、
年月の流れを経たことにこそ意義があるのです。
ルシアスは、他のいかにも筋骨隆々の戦士たちに比べるとやや小柄ではあるけれど、
あのマキシマスの血を引いているとなればその剣闘センスに納得なのです。
実の母との対面とか・・・エモい、エモすぎます。

そして、前作でもそうだったけれど、「独裁政治」の恐ろしさは、さらにスケールアップ。
トップがどれだけ横暴でバカであっても、
周囲の重鎮は我が身のかわいさで異論を挟むことをしない。
すべてが皇帝の意のまま・・・。

本作はこうした独裁政治の恐ろしさも強く訴えていると思います。
現在、大国のトップがいつこんな風に豹変するとも限らない恐怖・・・。
(いえ、豹変ではなくて、すでにそうなのでは? R国だけでなくA国も)

 

そして戦闘シーンの迫力も、スケールアップしています。
殺人ヒヒとか、巨大なサイとか・・・。
コワイコワイ。
あげくに、コロセウム内に水をたたえての、海戦シーン。
周囲には巨大なサメがうようよって、きゃー、しんどい。

結果、マキシマムがいてこその本作。
もちろん本作だけでも十分に楽しめるのですが、
前作と引き続き見たほうが、感慨もひとしおです。
ぜひ、「グラディエーター」を見てからこちらをご覧ください。

 

<シネマフロンティアにて>

「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」

2024年/アメリカ/148分

監督:リドリー・スコット

出演:ポール・メスカル、ペドロ・パスカル、ジョセフ・クイン、
   フレッド・ヘッキンジャー、コニー・ニールセン、デンゼル・ワシントン

迫力度★★★★★

残酷度★★★★☆

満足度★★★★★

 


眠りの地

2024年11月16日 | 映画(な行)

大企業のやり口を暴け

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実話をもとにしています。

葬儀社を営むジェレマイア・オキーフ(トミー・リー・ジョーンズ)。
近年、資金繰りに困っていて、会社の一部を大企業に売却しようと考え、
大手企業と契約を結ぼうとしたのですが、相手方からの書類が戻って来ません。
どうやら、相手方ローウェン・グループの悪意あるたくらみようなのです。

オキーフは代々つづく家業をこの巨大企業ら守るため、
訴訟を起こすことを決意します。
そこで、近年負けなしというカリスマ弁護士、ウィリー・E・ゲイリーを雇います。
正反対の性格の2人ですが、
大企業の腐敗や人種的不公平を共に暴いていくうちに、絆が芽生えはじめます。

ウィリーはこれまで契約関係の弁護経験がなかったのですが、
この度初めて取り組むことに。
本当に大丈夫なのか?と思いますが、本人はとにかくハッタリめいた強気な主張で
これまで勝ち抜いてきたので自信満々。
多大な賠償金を相手方に要求します。

さて、見ていて気づくのは、この裁判では契約のあり方について、
針の穴に糸を通すような小難しい法解釈を用いたりしない。
どうやって陪審員の関心と共感を呼び、味方に付けるかというのが主題。

この裁判所の地域は黒人が多い地域で、陪審員もほぼ黒人。
そんな中で、弁護士が黒人で、オキーフ自身も差別意識がないというのは有利な条件。
でも、もっと決定的な決め手は相手方にありました。
巨大企業の悪質なやり方をウィリーらは暴いていく・・・。

ということで、陪審員たちの気持ちは一気に反ローウェン・グループへと傾いていく・・・と。

訴訟の本題とは異なるところで、こうしたことが決定していって良いのかな?
と疑問に思わなくもないのですが、
それにしても大企業の悪質なやり口を目の当たりにしたら、
やっぱり小さな企業を勝たせるのが正義とも思えてきます。

陪審員制度って、どうなのか。
難しいところではあります・・・。

<Amazon prime videoにて>

「眠りの地」

2023年/アメリカ/127分

監督:マギー・ベッツ

原作:ジョナサン・ハー

脚本:ダグ・ライト、マギー・ベッツ

出演:トミー・リー・ジョーンズ、ジェイミー・フォックス、
   ジャニー・スモレット、ママドゥ・アティエ、パメラ・リード、アラン・ラック

大企業の真実度★★★★☆

陪審員重要度★★★★★

満足度★★★.5


やすらぎの森

2024年11月15日 | 映画(や行)

世捨て人たちの住むところ

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カナダ、ケベック州。
人里離れた深い森の中にある湖のほとり。
そこで3人の男性老人がそれぞれの小屋で犬と共に暮らしています。
3人はそれぞれの理由で社会に背を向け、世捨て人となったのです。

毎日湖で泳ぎ、絵を描いたりギターをつま弾いて歌ったり、気ままな暮らし。
しかしその、絵を描いていた男が、ある日穏やかに永遠の眠りについてしまったのです。
そんな時から物語は始まります。

1人の老婦人がここへやって来ます。
彼女は少女時代の不当な措置により、精神科療養所に60年以上も入れられ、
外界と隔絶した生活を強いられてきたのでした。

世捨て人たちに受け入れられた彼女は名を捨て、マリーと名乗り、
第二の人生を踏み出し、日に日に活力を取り戻していきます。

しかしそんな時、森の日常を揺るがす緊急事態が・・・。

この地域一帯は、その昔大規模な森林火災があって、
多くの人々が犠牲になった地でもあります。
絵を描いていた老人は、おそらくその時に家族を亡くして、
孤独の淵に沈みながら、焼け焦げた森の絵を描き続けていたのでしょう。

マリーはおそらく霊感が強い人で、子どもの頃そのようなことを口にしたために、
父親に気味悪く思われて精神病院に入れられたということのようなのです。
だから彼女は絵描きの描き残した絵に、強く反応するのです。

それにしても、60年・・・。
人間らしい扱いも受けられず、外の世界を見たこともない・・・。
あまりのことに言葉を失います。

そして世捨て人とはいっても老人同士は気心も知れて、
やはり人と人との絆を求めてはいるわけで。

けれど、なんのために生きるのか、生きているのか。
そうしたことが最後まで生きようとするか、もういいと思うのかの
分かれ目ではあるのですね。

とにかく、この森の奥の老人たちの世界はまずはうまく回っているのです。
ところが、これが外界の現実社会から見ると見方は変わってくる。

森の奥に勝手に住み着いている得体の知れない老人たち。
おまけに、違法薬物の原料である植物を栽培している(これは本当)。
そして、マリーは勝手に精神病者の施設を抜け出したわけで・・・。

どうやらここが安住の地というわけにはいかないらしい・・・。

幸福なのかそうでないのか、よく分らない物語。
それはつまり、見る人それぞれの考え方ということになるのでしょう。

<Amazon prime videoにて>

「やすらぎの森」

2019年/カナダ/126分

監督・脚本:ルイーズ・アルシャンボー

原作:ジョスリーヌ・ソシエ

出演:アンドレ・ラシャペル、ジルベール・シコット、レミー・ジラール、ケネス・ウエルシュ、エブ・ランドリー

世捨て人度★★★★☆

満足度★★★.5


「文化の脱走兵」奈倉有里

2024年11月13日 | 本(エッセイ)

戦う勇気ではなく逃げる勇気

 

 

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本を片手に、戦う勇気ではなく逃げる勇気を。
言葉を愛する仲間たちに贈る、待望のエッセイ集。

「国でいちばんの脱走兵」になった100年前のロシアの詩人、
ゲーム内チャットで心通わせる戦火のなかの人々、
悪い人間たちを化かす狸のような祖父母たち──
あたたかい記憶と非暴力への希求を、文学がつないでゆく。

紫式部文学賞を受賞したロングセラー『夕暮れに夜明けの歌を』の著者による、
最新エッセイ集。

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奈倉有里さんのエッセイ集です。

著者はおそらく、今時なぜロシア文学なのか?と
人から問われることが多いのだろうと思います。

それは彼女自身が日々考えていることだろうと思うのですが、
人から問われたとしても、そう簡単に説明できることではないのだろうとお察しします。

本巻は、そのような著者の思いが凝縮された一冊だと思います。

著者がロシア留学中とその後の研究生活の中で
知り合った多くのロシアの人たちにも、思いを馳せています。
著者の知り合いと言えば多くは文筆にかかわる人たち。
そうした人々であればこそ、今の政権やこの度の戦争については反発がないはずはない。

けれどもそれを声高に言うことはまさに命にかかわることなのですね。
だから、心ならずもロシアから出て活動せざるを得ない人もいるということ・・・。

著者はロシアにとどまっている人、去った人を問わず、
なんとかそういう人たちの力になりたいと切に思っているわけですが、
それは同時に私たちの課題でもあります。

本を片手に、戦う勇気ではなく逃げる勇気を。
まさに、そのことです。
貴重な一冊。

それにしても、この戦争はいつまでつづくのでしょう・・・。

 

また、別件ではありますが、著者は新潟県柏崎の
とある古民家を購入して住むことにした、とあります。
新潟には彼女の祖父母の家があって、子どもの頃に夏休みをそこで過ごしたので、
大変馴染みのある場所ではあるのですね。

でももう一つ大きなポイントは、そこに原子力発電所があること。
彼女を知る人なら、原発については反対であろうことは想像できるのですが、
ではなぜわざわざそこに住もうとするのか。

「柏崎原発を人類の当事者として考えたい」と、彼女は言うのです。

返す言葉もありません。
自分にはさして影響のない場所から「原発なんていらない」というのは簡単ですが、
その場所に住む人々こそが、いろいろな意見を発する意味があるわけで。

奈倉有里さんはおとなしそうに見えて、実に、思い切った行動をする方なのです。
今後も注目して応援していきたいと思います。

「文化の脱走兵」奈倉有里 講談社

満足度★★★★☆


本心

2024年11月11日 | 映画(は行)

バーチャル母は、ホンモノなのか?

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工場で働く、石川朔也(池松壮亮)。
独身、母(田中裕子)と同居。
その日、母から「大切な話をしたい」と言われるのですが、帰りが遅くなってしまいます。

帰り道、豪雨で氾濫しそうな川べりにたたずむ母を目撃。
そして不意に母の姿が消えてしまいます。
母を助けようと川に飛び込んだ朔也は、昏睡状態となり、
それから一年後に目覚めます。
そして、母が“自由死”を選択して死亡したことを知ります。

たった一年の間に、変貌している世界。
朔也の勤務先の工場はロボット化のため閉鎖。
やむなく朔也は、“リアル・アバター”の仕事に就きます。
それは、カメラを搭載したゴーグルを装着し、
遠く離れた依頼人の指示通りに働く、というもの。
でもそれは、いつもまともな依頼者とは限らないのです・・・。

そしてまたそんな頃、朔也は仮想空間に任意の人間を作るという
VF(バーチャル・フィギュア)の存在を知り、母を作ってもらうことにします。
生前の母のあらゆるデータを制作者に提供することによって、
ゴーグルを装着すればまるで生きた本人そのものがその場にいるように見えて、
話をすることもできるのです。

 

その母のデータ提供に協力してくれたのが、母の親友だったという三好(三吉彩花)。
三好は住むところがないというので、朔也は同居を提案。
バーチャル母を含めて3人の暮らしが始まります・・・。

近未来が舞台ではありますが、もうそれは未来ではなく
現在であってもおかしくないくらいですね。

まずは自由死とは・・・。
自分の意志で命を絶つことが「権利」として認められる、というようなことかな? 
そうすると、遺族に給付金があって、税金でも優遇されるとか。
今の老齢化社会の対策ですかね? 
希望すれば安楽死も。
そんなことがあってよいのかという批判はもちろんあるでしょうけれど、
私はちょっと魅力を感じたりもします・・・。

 

しかし、問題はそこではなくて、デジタルが人の生活にどこまで食い込んで、
人間性を剥奪していくのか、あるいはそうではないのか、ということ。

朔也は、あの日母が何を自分に言おうとしていたのか、
そしてなぜ自由死を選んだのかということを聞きたくて、母のVFを作ったのでした。

これまでのデータの蓄積で作られた「母」。
それは本当に母そのものの思考をするのか?
しかし、母そのものとはいったい何なのか? 
VFの母は、自分が思っていた母とは違うようでもあるのだけれど・・・。

 

母の本心とは・・・? 
というテーマではあるのですが、本作は、
三好の本心、そして朔也自身の本心も曖昧になってくるという罠がありますね。

ぐるぐる、色々と考えてしまう作品なのでした。

地味に、豪華キャストが出演してます。
三吉彩花さんが、三好彩花役って・・・?

リアルアバターの仕事は、真っ先にブラックバイトの餌食になりそうですよね・・・。

<シネマフロンティアにて>

「本心」

監督・脚本:石井裕也

原作:平野啓一郎

出演:池松壮亮、三吉彩花、水上恒司、仲野太賀、田中泯、綾野剛、妻夫木聡、田中裕子

末恐ろしさ★★★★☆

満足度★★★★☆

 


変な家

2024年11月09日 | 映画(は行)

単に児童虐待の話ではなく・・・

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オカルト専門の動画クリエイター、雨宮(間宮祥太朗)。
マネージャーから、購入予定の一軒家の間取りに不可解な点があると相談を受けます。
雨宮は、オカルトネタ提供者であるミステリー愛好家の設計士、
栗原(佐藤二朗)に意見を聞きます。

見取り図から浮かび上がる奇妙な違和感。
そしてそこから導き出される恐ろしい仮説・・・。
そして、その家のすぐ近くで、死体遺棄事件が発生。
雨宮はさっそくこれら一連の出来事を動画投稿しますが、
やがてその家に心当たりがあるという女性・柚希(川栄李奈)から連絡が来ます。

奇妙な家の見取り図。

それは私も気づいたのですが、
窓もなくトイレ付きで二重のドアを通らなければ入れない子ども部屋・・・。
それはどう考えても“監禁”のための部屋としか思えません。

しかし、一階に意味不明の空白の場所があるというのは、
実際、意味が分らなかったのですが、
作中では想像たくましい栗原が驚きの仮説を展開していきます。

単にとある一家の児童虐待の話かと思いきや、
とある一族の恐ろしい因習・・・というオカルト話に進んでいくのでした。

柚希役の川栄李奈さんが、イメージの違う怪しげで不気味な雰囲気を醸し出しつつ登場。
どうなることかと思いましたが、
そこそこ雨宮と心通い合う間柄になっていくので一安心。

なんとなく予想していたストーリーとは違うものの、面白く見ました。

 

なんとなく人が良さそうな栗原が実は・・・?などと言う展開も予想したのだけれど、
そうはならなかった・・・。

 

<Amazon prime videoにて>

「変な家」

2024年/日本/110分

監督:石川淳一

原作:雨穴

脚本:丑尾健太郎

出演:間宮祥太朗、佐藤二朗、川栄李奈、長田成哉、瀧本美織、斉藤由貴、高嶋政伸、石坂浩二

スリル度★★★☆☆

不気味度★★★★☆

満足度★★★.5


グラディエーター

2024年11月08日 | 映画(か行)

コロシアムで繰り広げる死闘

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アカデミー賞作品賞など5部門受賞に輝いた、2000年の大作。

私はその時に見ていたのですが、この度その続編が公開になるということで、
復習のため、本作を見た次第。
・・・というか、あれからすでに24年も経っているというのが信じがたいですが・・・。

古代ローマ皇帝アウレリウス(リチャード・ハリス)は、
信頼を寄せる将軍マキシマス(ラッセル・クロウ)に
次期皇帝の座を譲ろうと考えていました。
それを知った皇帝の息子・コモドゥス(ホアキン・フェニックス)は、
父を殺して王座を奪い、マキシマスを反逆者として死刑を宣告します。

マキシマスは辛くも逃れて故郷へ向かいますが、
妻と幼い息子はコモドゥスの手下に殺されていました。

絶望の中、奴隷に身を落としたマキシマス。
やがて、剣闘士(グラディエイター)として名を上げ、
闘技場で死闘を繰り返しながら、コモドゥスへの復讐の機会を狙います。

 

マキシマスは故郷の麦畑で、麦の穂先を手のひらに感じながら歩くのが好きだったのでしょう。
そのシーンが、24年前に見たときからずっと心に残っていました。

妻と息子のいる故郷。
麦畑がつづく豊かな地。
マキシマスは本来そのような平穏な暮らしが好きなのでした。
しかし、たぐいまれなる戦闘能力と多くの兵を率いる指揮官としての能力にも長けていて、
多くの者からの信頼も得ている。
アウレリウスが実の息子よりも彼を次期皇帝にしようとしたのにも肯けます。

しかるに、コモドゥスというのがどうしようもなく野心家であり、嫉妬深く、残虐・・・。
とにかく、ものすごーく嫌なヤツ。
それをガッツリ演じるホアキン・フェニックスはさすがであります。

 

コロシアムでの戦闘シーンの迫力。
繰り広げられる死闘。

とにかく圧倒されてしまう作品でした。

さてさて、たいていこういう場合の続編は、期待外れになることが多いのですが、
どうなりますやら。
少なくとも24年も経ってから続編を作る意義はあってほしいものです。

 

<Amazon prime videoにて>

「グラディエーター」

2000年/アメリカ/155分

監督:リドリー・スコット

出演:ラッセル・クロウ、ホアキン・フェニックス、コニー・ニールセン、
   オリバー・リード、ジャイモン・フンスー、リチャード・ハリス

強さ★★★★★

迫力度★★★★☆

満足度★★★★☆


「大鞠家殺人事件」芦辺拓

2024年11月06日 | 本(ミステリ)

正調お屋敷一家一族連続殺人本格探偵小説

 

 

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大阪の商人文化の中心地として栄華を極めた船場――
戦下の昭和18年、婦人化粧品販売で富を築いた
大鞠家の長男に嫁ぐことになった陸軍軍人の娘、中久世美禰子。
だが夫は軍医として出征することになり、
一癖も二癖もある大鞠家の人々のなかに彼女は単身残される。
戦局が悪化の一途をたどる中、大鞠家ではある晩“流血の大惨事”が発生する。
危機的状況の中、誰が、なぜ、どうやってこのような奇怪な殺人を?
正統派本格推理の歴史に新たな頁を加える傑作長編ミステリ!

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芦辺拓さん作品、私は久しぶりかもです。

著者は本作をこう説明しています。
「正調お屋敷一家一族連続殺人本格探偵小説」
そう、いかにもなそういうミステリをたまに読みたくなってしまう、
もと本格ミステリファンなのでありました。

 

本作の舞台は昭和18年、大阪の船場という商人文化の中心地にある大店に
中久世美禰子が嫁いで来るあたりから。

でも冒頭に、不可思議な1人の青年の消失事件が語られています。
実はこのことが後々の事件の大きなもととなっているのですが・・・。

 

一家の主の不可解な縊死事件。

そして長女の流血事件。

主の妻の奇怪な溺死事件。

そして、自称名探偵の哀れな殺人事件・・・。

そうなんですよ、本作に、「名探偵」が登場するのですが、
まったく頼りにならないあげくに、殺されてしまうという。

 

しかも昭和20年の大阪大空襲で、屋敷も何もかもすっかり焼けてしまい、
証拠もあとかたなく失われてしまうのです。

しかし本当の「名探偵」役は最後の最後に登場します。
残された関係者の語るピースをきっちりとハメ合わせていく、名探偵が。

 

本格ミステリをたっぷりと楽しませてもらいました。

 

「大鞠家殺人事件」芦辺拓 東京創元社

満足度★★★★☆


十一人の賊軍

2024年11月04日 | 映画(さ行)

生き残るために

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戊辰戦争時を舞台とするストーリー。
私、かねてからの会津贔屓ですので、賊軍の話、大歓迎と思って見始めましたが、
これはそういうものとはまた別の話。

1868年、旧幕府軍と新政府軍(官軍)が争いを繰り広げていたわけですが、
越後の新発田(しばた)藩は、どちらにつくべきか、決断がつかずにいたのです。

奥羽越列藩同盟に加わっていた長岡藩は、
当然新発田藩も加わるもはずとして圧力をかけてきますが、
冷静に状況を見れば官軍の方が有利。
そのため、官軍と通じようとしているところへ、
長岡藩士がこちらの決断を確かめに来る・・・。

切羽詰まった溝口内匠(阿部サダヲ)は、ある計画を立てます。

さて一方、妻を寝取られた怒りから新発田藩士を殺害し、
死罪を言い渡された政(山田孝之)やその他の罪人たちは、
新発田藩士・入江(野村周平)や鷲尾(仲野太賀)から、こんな話を持ちかけられます。

これからやってくる官軍から砦を守り抜けば、無罪放免とする、と。

どうせこのままなら死罪で終わり。
それならば、なんとかやってみよう、と決意する罪人たち。

官軍につくか、それとも旧幕府軍か・・・という話、
少し前にも見たなあ・・・と思い起こせば、
それは長岡藩の内情を描く「峠 最後のサムライ」という作品でした。
役所広司さん演ずる藩士が状況は官軍に有利だけれど、
奥羽越列藩同盟の義理の方を重んじ、立派に戦って死んでいく・・・と、
武士の滅びの美を描いたものでしたが、
その時にいみじくも私は
「どんなにみっともなくても、生き残る人間くささも嫌いじゃない」
と書き記していました・・・。

で、本作はまさに、何が何でも生き残ってやろうともがく者たちの物語なのです。

彼ら咎人たちは、つまり新発田藩家老にとって使い捨てのコマにしか過ぎません。
そうした真実を知った彼らは、もう官軍も賊軍も、正義も、何も関係ない。
とにかく生き抜こうともがくのです。

死罪を申し受けた罪人は政ら11人。
でもうち一人は女性で、実際に戦闘に加わるわけではありません。
では本当の11人目は誰なのか? 
そこがミソであります。

武士ではない罪人たち(武士も含まれてはいますが)の戦いぶりは
決してカッコ良くはないのですが、何しろ迫力があります。
血みどろ、汗みどろ・・・。
一人、また一人と倒れていきます・・・。
壮絶。

とにかく息を潜めて見入るのみ・・・。

 

話は変わりますが、この日は久しぶりにサツゲキにて鑑賞。
でも、どうしてこの頃ここに足が遠のいていたのか分った気がしました。
あまりにも空いているので、居心地が悪いのです・・・。
だいじょうぶなのか、サツゲキさん・・・。

 

<サツゲキにて>

「十一人の賊軍」

2024年/日本/155分

監督:白石和彌

原案:笠原和夫

脚本:池上純哉

出演:山田孝之、仲野太賀、尾上右近、岡山天音、一ノ瀬颯、野村周平、玉木宏、阿部サダヲ

 

血まみれ度★★★★☆

迫力度★★★★☆

満足度★★★★★

 


悲しみの皮

2024年11月02日 | 映画(か行)

人の欲望に際限はない

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夢かうつつか、ちょっと不思議な雰囲気のあるストーリー。

 

1832年、22歳のラファエル。
ギャンブルですべてを失い、自殺寸前。
そんな時に、骨董屋の店主から奇妙なものを勧められます。

それは「悲しみの皮」といって、願ったことは何でもかなえられるけれど、
その都度皮は縮んでいって、それと同時に、
その者の人生も縮んでいく、つまり寿命が短くなるということ・・・。

ラファエルは半信半疑ながらもそれを受け取り、願いを口にします。
すると、瞬く間に富と名誉を手に入れたラファエル。
「悲しみの皮」は確かに縮んでいるけれど、まだまだ余力はありそうです。
そして、ラファエルが次に願ったのは・・・。

 

人の欲望はどこまでも果てしがない、という話ではありますが、
ラストは勧善懲悪的な感じではなくてちょっと美しいものでした・・・。
お約束通り、ラファエルは短命に終わってしまうわけではありますが。

 

私が疑問に思ったのは、とある女性に自分を愛してほしいと願い、
実際に女性に愛されるようになったとして、
それは自然なことではなくて、魔法の力でねじ曲げられたものだと、
悩むことはないのだろうか?ということ。
幾分かでもそのような疑惑を抱くことがあっても良さそうな気がしますが、
本作中のラファエルはまったくそんなことは思わず、浮かれていました。
ま、脳天気である方が幸せではありますね。

 

とりあえず莫大な財産と名声を手に入れたら、
もう思い残すことなどなさそうにも思えますが、
まことに、人の欲望に際限はない。

 

<Amazon prime videoにて>

「悲しみの皮」

2010年/フランス/96分

監督:アラン・ベルリネール

原作:オノレ・ド・バルザック

出演:トーマス・クーマン、アナベル・エトマン、ジュリアン・オノレ、ミレーヌ・ジャンパノイ

欲望度★★★★★

教訓度★★★★☆

満足度★★★☆☆


宮本から君へ

2024年11月01日 | 映画(ま行)

熱血バカ

* * * * * * * * * * * *

新井英樹さんの人気コミックの実写映画化。

 

正義感が強く熱血まっしぐらなれど、生きることに超不器用な宮本浩(池松壮亮)。
そんな彼が、会社の先輩の仕事仲間である中野靖子(蒼井優)と恋仲になります。
ある日、靖子の部屋に招かれますが、
そこへやって来たのが靖子のモトカレ・裕二(井浦新)。
裕二は靖子が宮本と仲良くなっているのに怒り、靖子に手を上げてしまいます。
しかし、宮本は「この女は俺が守る!」と宣言。
そのことで靖子と宮本は心から結ばれたのでした。

そんなある時、宮本は仕事の取引先との飲み会に靖子を伴います。
その取引相手は完璧に体育会系的な面々。
言うことがすべてセクハラ、パワハラっぽいのですが、
靖子は軽くいなして見せます。
そしてその中の1人の息子タクマと親しくなり、
その後、靖子の部屋に宮本とタクマがやって来ます。
そして宮本は酔い潰れてグッスリ寝入ってしまい・・・。

なんともイヤな事件が起きます。

「俺が守る!」と宣言しておきながら、何もできなかった宮本。
傷つき打ちひしがれてしまう靖子。

タクマは恐ろしくガタイがよくて、
まともに向き合ってもとても宮本に分がありそうに思えません。
けれど宮本には火がついてしまう。
思い込んだら命がけ。
熱血バカ。

池松壮亮さんのこういう役って、めずらしいのではないでしょうか。
でも、こんなバカみたいにまっすぐなヤツ、嫌いじゃないですね。
ホントに、バカな人・・・と思いつつ、振り切れない女心も分るなあ・・・。

WOWOW視聴にて

「宮本から君へ」

2019年/日本/129分

監督:真利子哲也

原作:新井英樹

出演:池松壮亮、蒼井優、井浦新、一ノ瀬ワタル、柄本時生、ピエール瀧

 

暴力度★★★★★

単純バカ度★★★★☆

満足度★★★.5