映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ジャッキー・コーガン

2013年10月30日 | 映画(さ行)
アメリカンドリームは何処へ・・・?



* * * * * * * * * *

本作の原題は“Killing Them Softly”優しく殺す・・・、
これはブラピ演じる殺し屋ジャッキー・コーガンのモットー。
とくれば、もう少し肌触りの柔らかいストーリーかと思いきや、
非常にハードなストーリー。
正義などどこにもない、裏社会の物語です。



悪党たちの内輪の賭場を、
その胴元マーキーがチンピラを使って自ら襲撃して金を略奪。
そういう事件が先にあった。
そのことは、ほとぼりが冷めた頃に
マーキーが酔った勢いで皆に打ち明け、笑い話で終わった。
それに目をつけ、
同じことをして稼ごうとする男がチンピラ二人を雇い実行。
今度の事はマーキーはあずかり知らぬことなのだけれど、
皆の疑惑の目は彼に向かう。
こんな物騒な連中の中で疑惑を受けること=死なのだが・・・。



これらの内紛の後始末を引き受けるのが、殺し屋ジャッキー・コーガン。
彼には独特のスタイルがあり、
殺す相手に泣いてすがられたりするのが一番嫌い。
だからできるだけ相手に悟られないように殺す。
でなければ、誰か他の殺し屋をさらに雇う。
しかしこのたび呼び寄せた殺し屋は、
もとすご腕かもしれないけれど、酒と女びたりのどうにもならないやつだったりする。
ジャッキーのスマートさが強調されますなあ・・・。



セクシーでニヒルな殺し屋
ブラピはやはりカッコイイ。
けれど、このストーリー、
一体誰が悪党なのやら、そうでないのやら混沌としています。
結局一番のワルはジャッキーなのかも・・と思えてくる。
何も落ち度がないのに殺されてしまうマーキーの立場は・・・?


本作中に終始挿入されるのは、大統領選に挑むオバマ氏の演説シーン。
いたるところで映しだされるTVで、彼の理想社会が語られます。
その裏側で、このなんとも薄汚い抗争劇が進行している。



アメリカンドリームは何処へ・・・?
なかなか皮肉な現実を映し出しているのでした。
ラストでジャッキーがうそぶきます。
「アメリカは国家ではない。ビジネスだ。」

ジャッキー・コーガン [DVD]
ブラッド・ピット,レイ・リオッタ,リチャード・ジェンキンス,ジェームズ・ガンドルフィーニ,サム・シェパード
Happinet(SB)(D)


「ジャッキー・コーガン」
2012年/アメリカ/97分
監督:アンドリュー・ドミニク
出演:ブラッド・ピット、リチャード・ジェンキンス、ジェームズ・ガンドルフィーニ、レイ・リオッタ、サム・シェパード

無法度★★★★☆
ブラピの魅力度★★★★☆
満足度★★★☆☆

「銀の匙 9」 荒川弘

2013年10月29日 | コミックス
自信が強さにつながる

銀の匙 Silver Spoon 9 (少年サンデーコミックス)
荒川 弘
小学館


* * * * * * * * * *

2014年春、いよいよ実写版映画公開となる本作、
乗りに乗っています。
(ただし、私はコミックで十分なので、見ないと思う・・・)
さて本巻、八軒がやむない事情でついに札幌の実家へ帰ります。
そういえば、八軒はこの高校進学以来、一度も実家に帰っていなかったのですね。
時は初雪の舞い始める10月末か11月初めというところです。


ちょっとした物を取りに来ただけで、
できれば両親にも合わず、すぐ帰ってくるつもりだったのですが、
ちゃんと両親が居て、"ご対面"してしまいました。
そして八軒の意に反して、ともに昼食までとるはめになってしまいました。
相変わらず威圧的な父は、
せっかく八軒が珍しく自分の心境を語っているというのに

「勉強で脱落した人間が、人に勉強を教えるというのか?」

と、心ない言葉を投げつける。
でも、八軒は一応きちんと反論。
エゾノーでの経験やそれによって身につけた自信が、
彼を強くしているようです。

いいぞ、八軒!!


ところで八軒の家はやはり「西区八軒」なのかと思ったら、
彼は新札幌中学出身というので、厚別区のようですね。
(どうでもいいですけど・・・)


その後、八軒のお母さんは、
八軒が学校でどんなことをしているのか何も知らなかったということに気付き、
学校の様子を見に来ます。
自分の息子の成長ぶりを母はそこで認めることになる。
私は八軒と父親の確執について、母親が鈍感すぎるのでは・・・?
と、ちょっと思うのですが、
わざとなんでしょうかねえ・・・。
あえて知らないふりを決め込んで、
どちらの味方になることも避けているのか・・・?
しかし、あのお父さんとどのように知り合って結婚したのか、そこが知りたい・・・。


兎にも角にも、冬が来てクリスマス・・・。
軒のお正月は、どんなかな・・・?

「銀の匙 9」 荒川弘 小学館少年サンデーコミックス
満足度★★★★☆


白雪姫と鏡の女王

2013年10月28日 | 映画(さ行)
ジュリア・ロバーツが一番楽しんでいる感じ



* * * * * * * * * *

誰もが知る「白雪姫」のストーリーですが、
あの意地悪な継母、鏡の女王をジュリア・ロバーツが演じます。
まあとにかく、見ていて単純に楽しめる作品ですが、
ジュリア・ロバーツが一番楽しんでいる感じがします。
「こんな役、若い子にはできないでしょ、ホホホ」というような矜持とゆとり。
確かに、まだまだお美しいですし…。



お伽話ではありますが、巧みに世相への皮肉も込められています。
女王があまりにも浪費を繰り返すものだから、
もともと豊かで皆が楽しく生活していた街は、
貧しく悲惨な様子に変貌。
王室にお金がない! 
ようやくそのことに危機感を感じた女王は、
どこかのお金持ちの王子と結婚しようと決意します。
そこへ迷い込んだのが若き王子(アーミー・ハマー)ですが、
その王子と白雪姫(リリー・コリンズ)が舞踏会で出会い、恋に落ちてしまう。
嫉妬した女王は、惚れ薬を王子に飲ませて強引に自分のものに。

そして白雪姫は城を追われ、
森のなかで7人の小人に出会う・・・というわけです。

この7人の小人というのが、実は強盗団。
白雪姫は彼らとともに輸送途中の町の人々から徴収した税金を奪い、
町の人々に還すのです。



いまどきのお姫様は、ただ助けを待っているだけではダメ。
自ら行動し、戦う。
こうでなくてはダメなのですね。
インド出身のターセム・シン監督らしく、
ボリウッド風のダンスシーンなどとても楽しく拝見しました。
ハッピーエンドの盛り上がりに、これは本当にマッチします。

白雪姫と鏡の女王 スタンダード・エディション [DVD]
ジュリア・ロバーツ,リリー・コリンズ,アーミー・ハマー
Happinet(SB)(D)


「白雪姫と鏡の女王」
2012年/アメリカ/106分
監督:ターセム・シン
出演:ジュリア・ロバーツ、リリー・コリンズ、アーミー・ハマー、ネイサン・レイン、ショーン・ビーン

おとぎ話の現代化度 ★★★★☆
満足度★★★☆☆

人類資金

2013年10月26日 | 映画(さ行)
本を読んだほうがいい(多分)



* * * * * * * * * *

敗戦直前に旧日本軍が隠匿したとされる財宝“M資金”をめぐる人々の葛藤を描きます。


金融ブローカーを名乗る詐欺師・真舟(佐藤浩市)。
彼の詐欺の手口にはよく“M資金”が出てくるのです。
ある日、石(セキ)(森山未來)という男が現れ、
M資金を管理する財団「日本国債文化振興会」に来てほしいと、
強引に真舟を連れ出すのですが、
なんと、「10兆円のM資金を50億円の報酬で盗みだしてほしい」という依頼でした。
自分の組織のお金を盗み出す・・・?
つまりは、財団内部での抗争があるということなのですね。
石を使い真舟を呼び出した“M”(香取慎吾)は、
かつて“人類資金”として託されたはずのこの莫大な資金を、
その正しい目的のために使いたいと考えているのでした…。



ロシア、タイ、アメリカ、そして日本。
4カ国に渡るロケや、ニューヨーク国連本部での撮影もあり、
そのスケールの大きさを売りにしているようなのですが・・・。
うーん、正直ちょっと拍子抜けです。
私は実は福井晴敏さんの本が大好きなんです。
ワクワク・ハラハラ・ドキドキ、
子供の頃夢中で物語の本を読みふけった、その時のようなのめり方ができるんですよね。
でもそれなのに、
なぜか映画化となったものはち~っとも面白くない。
今まで何度かそういう失望を味わってきました。
でも本作は、本を読まず、いきなり映画作品に向かったのですが、
やっぱりあんまり興奮できない。
なぜ??? 
まあ、それが分かれば苦労しませんよね。
私には実写よりもアニメにしたほうがストーリーが生きる気がするのですが・・・。
たぶん、本作も本を読めばきっと面白いに違いありません。
うーん、本当はもっと色々なエピソードの枝葉があるのに
無理に2時間ちょっとに収めようとするからなのかもしれません・・・。



特に今作について言えるのは、
まずテーマがキレイ事すぎるような気が・・・。
これなら、ふつうに痛快コン・ストーリーにしたほうがいいなあ。
その後、アジアの小国の子どもたちのためにそのお金を使ってみました~、
みたいになったほうがオシャレ。


それから、“人類資金”という壮大なミッションを抱きながら、
実のところアジアの小さな一国にPDA(携帯情報端末)を配っただけっていうのが
なんだかセコすぎるような・・・。
(いや、これがほんの手始めということなのでしょうけれど・・・)
にしてもこれでは、人類滅亡の危機を救うと言いながら、
ご町内にたまたま現れた一人の宇宙人をやっつける
・・・みたいな、チープなTVの子供番組とあまり変わらない・・・。
だからなんというか、スケール感がちぐはぐに思えてしまったわけです。
まあ、でも、国連での演説シーンではちょっぴり泣けましたけどね(^_^;) 




でも印象に残ったのは、
「人類の7割がスマホを持つどころか、電話をかけたこともない」という話。
そうなのか、
実は地球上にある「エリジウム」に、私達は住んでいる、ということなのですよね。
そういうところは、もう少し自覚したほうがいいと思いました。



2013年/日本/140分
監督:阪本順治
原作:福井晴敏
脚本:阪本順治、福井晴敏
出演:佐藤浩市、香取慎吾、森山未來、観月ありさ、岸部一徳

スケールの大きさ★★★☆☆
満足度★★☆☆☆


MARUちゃん

2013年10月25日 | 工房『たんぽぽ』
「ことばはいらない」でお馴染みのMARUちゃんを作ってみました。





最近のブログを拝見すると、一茶くんはグンと成長しているようです。
ひろーいミシガンで暮らすMARUちゃんは幸せそう・・・





ちなみに、ハロウィンのリースの方は100均!!

手抜きですみません・・・

ランナウェイ/逃亡者

2013年10月24日 | 映画(ら行)
苦い思いで、振り返る。この国の歩みはこれでよかったのか・・・



* * * * * * * * * *

1969年。
あらら、この数字、どこかで見たと思えば、
「69」で、やっぱり学生運動が過激化した年というわけですね。


“ウェザーマン”と名乗る過激派グループがベトナム戦争反対を訴え、
連続爆破事件を起こす。
そんな中の一環で、銀行を襲撃し、警備員を殺害したグループがあった。
しかし、その事件後、グループは忽然と姿を消してしまう。
その30年後、元メンバーの一人が逮捕される。

新聞記者のベン(シャイア・ラブーフ)は、
このことをきっかけに当時の関係者をあたっていきますが、
やがてジム・グラント(ロバート・レッドフォード)という男にたどり着きます。
彼も又過激派メンバーの一人で、名を変え30年身を潜めていた。
しかし、正体を明かされたと察したジムは逃亡を開始。
FBIとベンの追跡を逃れ、ジムは何処へ行こうとしているのか・・・?



この作品、あの頃の空気を実際に体験した人でなければ
ピンとこないかもしれません。
私はまだ中学生で、何もよくわかってはいなかったと思うのですが、
学生たちの何かを変えたいという熱気、
そしてそれを苦り切った目で見る大人たち、
そういう時代の雰囲気をありありと思い出します。
ベトナム戦争反対。
単純にその通りと受け止め、大学生のお兄さんお姉さん方を応援していた私は、
この団塊世代が大人になり、社会の中心に座るときには、
世の中は変わっているのではないか・・・と期待したものでしたが、
世の中ちっとも変わりませんでした。
というよりむしろ、彼らが先に自滅していってしまったのですよね・・・。



本作の弁護士ジムは潜伏生活を30年続けたということで、
つまりはそんな苦い思いをずーっと引きずって生きてきていたわけです。
世間ではもうとうに忘れ去ってしまったというのに。
ジムばかりではありません。
この過激派グループが皆・・・。
もう、この思いを引きずることはやめにしたい。
そうでなければ、新たな道にも踏み出せない・・・
そういう思いが十分に汲み取れた感じです。



でも、今作でよかったのは、若い人たちを配したことですね。
自らの調査で彼らの心情を汲む新聞記者ベン。
彼らの娘たち。
世の中を変えていく新しいエネルギーの芽生えのようなものを感じます。
ロバート・レッドフォード監督の願いのようなもの。


ジムが昔の仲間の女性にあった時。
「老けたわね。」
「でも、君は変わらないね」
いや、やっぱり年齢は隠せないと思うのだけれど、
しれっとこういうセリフをはけるところが、やっぱりカッコイイのだわ―!!



それと、本作の原題は“The Company You Keep”なのですが、
「ランナウェイ」よりも、こちらのほうが、やはりしっくり来ます。

「ランナウェイ/逃亡者」
2012年/アメリカ/122分
監督:ロバート・レッドフォード
出演:ロバート・レッドフォード、シャイア・ラブーフ、ジュリー・クリスティ、テレンス・ハワード、スーザン・サランドン、リチャード・ジェンキンス、クリス・クーパー

時代の振り返り度 ★★★★★
満足度★★★★☆

69 sixty nine

2013年10月22日 | 映画(さ行)
無軌道な若さが心地よい



* * * * * * * * * *


「許されざる者」の李相日監督に、脚本が宮藤官九郎
・・・ということで10年ほど前の作品ですが、興味を持ちました。


原作は村上龍。
氏の自伝的作品だそうです。
1969年。
ベトナム反戦運動が高まり、大学紛争に揺れる69年。
そうそう、あのアポロ11号の月着陸も、この年の出来事。
長崎は佐世保の高校生ケン(妻夫木聡)は、
友人のアダマとイワセを誘い、
演劇、アート、ロックのフェスティバルを開催しようと計画します。
作品は、そんな彼らの、ノーテンキな日常をコミカルに描いていきます。
時には当時の大学の学園紛争を皮肉に見つめつつ、
高校のバリケード封鎖を試みたりします。
それというのも何の思想があるわけでもなく、
ただ単に憧れのレディ・ジェーンの気をひくためだったりする。
何をやりたいのかよくわからない。
けれども何かをしないと内側のエネルギーが爆発してしまいそうだ・・・
そんな無軌道な若さが心地よい。
ケンはどこかちゃらんぽらんだけれど、発想と決断力が優れていて、
実行力、リーダーシップもすばらしい。
う~ん、観ていて楽しい。
オバサンは当時の音楽や世相を懐かしみつつ浸ってしまったのでした。
さすがクドカンの世界です。



さて、この作品の前に「クロニクル」を見たので、
こちらのケンと父親の関係に注目してみました。
(ケンたちが間違って超能力を身につけたらどんな騒ぎになったか、
そんなことを想像するだけでも楽しいのですが、
この際関係ありません!!)
ご多分にもれずケンは、ちょっと父親(柴田恭兵)が苦手のようなのです。
父親は放任主義のようで、
息子のやることにはほとんど口を出さない。
けれども、どこか息子を信頼しているようなところがあって、
息子が学校のバリケード封鎖の首謀者として停学になっても、寛容なのです。
だから本作では少なくともケンにとって父親は、
目標でもなく嫌悪する必要もなく、何のプレッシャーでもない。
むしろ最期の拠り所というふうでもある。
いいですね。
理想の父親像。
もちろん日本の作品でも父と息子の相克が描かれているものも多いですが、
アメリカ作品に比べれば、全然少ないと思います。
なぜアメリカではあんなにも父親と息子の間に緊張が走るのか・・・。
今後も深めていきたいテーマだなあ・・・。

69 sixty nine [DVD]
村上龍,宮藤官九郎
東映


「69 sixty nine」
2004年/日本/113分
監督:李相日
脚本:宮藤官九郎
原作:村上龍
出演:妻夫木聡、安藤政信、金井勇太、太田莉菜、柴田恭兵

無軌道度★★★★☆
満足度★★★★☆


「思い通りの死に方」中村仁一 久坂部羊

2013年10月21日 | 本(解説)
あっさりと逝きたい・・・

思い通りの死に方 (幻冬舎新書)
中村仁一 久坂部羊
幻冬舎


* * * * * * * * * *

何歳まで生きたいですか?
大往生は万人の願望。
マスコミは90歳を超えても元気な「スーパー老人」をもてはやし、
死ぬまで健康であるべきだという圧力は強まる一方だが、
いま現実はどうなっているのか。
現役医師2人が、誰も本当のことを言わない高齢者の生き方・老い方・逝き方を赤裸々に語り合った。
アンチエイジングを謳い、高齢者を飯の種とする医療界はどこまで信用できるか?
そもそも医者の多くがなぜがんになるのか?
大往生は可能なのか?
等々、遅かれ早かれ誰もが直面する生死の真実。


* * * * * * * * * *

私は、映画「エンディングノート」を見た時に、
ガンで死にたいと思いました。
実はガンで死ぬのは理想的な死に方なのではないだろうか・・・と。
というのは、まず、およその余命がわかる。
そして、しばらくは普通に活動ができる。
つまり、色々やっておきたいことができる。
この際リビング・ニーズの保険にでも入っていればなおよろしい。
私なら、ガンと戦わず、抗癌剤治療もなしでやりたいことをやって、
静かに人生の幕を閉じるのだけどなあ・・・、などと。
この本は、まさしくその考えを肯定する本でありました。


ガンの末期はすごく痛むというイメージを私も持っていましたが、
実際はそうでないことが多いそうなのです。
それよりも辛いのは抗がん治療である、と。


長寿はたしかにすばらしいけれど、
ピンピンコロリ願望がもてはやされるということは、
そうでないことが多いということでもあるのです。
皆さん、自分のことは死ぬ寸前まで達者で意識明朗と思っているけれど、
そうでないことの方が多いですよね・・・。
本人の意志も確認できないような状態で、
ただ胃ろうなどで生きながらえているという状態は、
少なくとも私なら勘弁してほしいと思います。


しかし、一体どういう死に方をするのかは、全くの運命。
望んだとしてガンになれるわけでもないですし、
いつ認知症状が現れるかもしれない。
ただ、希望する最期のあり方を生前に宣言し書き記しておくなどして、
多少なりとも自分の望む死に方に近づける事はできるかもしれません。


さてしかし、本著では、
生殖期が終わったらもうがん治療などするな、と言っています。
生殖期・・・つまり女性なら更年期を過ぎたら・・・ということですか? 
自分で宣言しながら潔くないのですが、
たった今医師にガン宣告をされたら、やっぱり迷うと思います。
実際、がん治療のため手術で患部を切除し、
その後お元気で暮らしている方を何人も知っていますし・・・。
だから本当に難しいですね。
ムダな治療はするなといっても、
ムダかムダでないのか、どこで線引きすればいいのか。
私のように、悟ったようなことを言っているヤツが、
実は実際の場になったら人一倍命根性汚く、じたばたするのかもしれませんし。


ともあれ、何が何でもただ『延命』することだけが優先という医療の常識のようなものに、
一石を投じる本ではあると思います。


「思い通りの死に方」中村仁一 久坂部羊 幻冬舎新書
満足度★★★★☆

フローズン・グラウンド

2013年10月20日 | 映画(は行)
下手なサイコスリラーも及ばない現実



* * * * * * * * * *

1983年にアラスカで発覚した“アンカレッジ女性連続殺人事件”を映画化したものです。
この犯人は、12年間に24人以上の女性を誘拐・監禁し、その後殺害したという・・・。
下手な推理小説やサスペンスドラマ顔負けですが、
虫も殺さないような顔をして、犯人が市民の中に紛れ込んでいる。
・・・というのがなんとも薄気味悪く、怖いです。
その殺人犯役が、ジョン・キューザックとくれば、
先に見た「ペーパーボーイ」を思い出します。
普通にいい人の役柄から脱出をはかっているかのようですね。
まあ、それもいいでしょう。



さて、本作は娼婦(と言っても高校生!)シンディ(バネッサ・ハジェンズ)が
ボブ・ハンセンという男に殺されそうになったところを逃げ出し、
警察に駆け込むところから始まります。
ところがそれがおおごとにならなかったのは、
ひとえに彼女が娼婦だったからに他なりません。
地元警察は単なる娼婦と客のトラブルということで処理してしまいます。
娼婦なんだから多少のトラブルは覚悟の上だろう、
娼婦なんだから仕方がない・・・
そういう差別感がアリアリと・・・。
う~ん、でもそれは自分の中にもちょっとあるかなあ。
しかし、ティーンエイジャーが娼婦。
まずそこが問題でしょうに!! 
親を呼ぶとかなんとか、それもないんですねえ。
荒んでいます・・・。



ところが、州警察の巡査部長ジャック・ハルコム(ニコラス・ケイジ)が
この事件と最近の連続殺人事件とのつながりに気付きます。
これは同一犯によるものなのではないか。
とすれば疑うべきはこの、ボブ・ハンセンだが・・・。



本作は犯人探しでもなく、
ハンセンのシロかクロの疑惑の物語でもありません。
犯人はハンセンに決まっている。
しかし、それを決定づける証拠がないのです。
物語ではハルコムが、ひたすらハンセンの犯人たる物証がないことに苛立っています。
そのストーリー中に、いくつかのハンセンの犯行時の映像が挿入されます。
全く、凍りつくのはアラスカの大地だけでなく、
こちらの背筋も・・・ということになりますね。
ハンセンにとって女は、ハンターの的になる鹿などの動物と変わらないのです。



でも、この被害者たちはバラバラのピースとして現れるし、
彼女たちの運命も私達は知っているわけですから、
さほど感情移入する暇もなく、やや、緊迫感に欠ける気がしました。
いつもは割とケレン味たっぷりのニコラス・ケイジですが、
今回は演技も控えめ、渋くてデキる男。

多くの被害者たちや家族の感情を考えれば、
あまりオーバーな演出は避けざるを得なかったのでしょうね。
実際の事件を扱ったからこその過激すぎない演出なのだと思います。

「フローズン・グラウンド」
2013年/アメリカ/105分
監督:スコット・ウォーカー
出演:ニコラス・ケイジ、ジョン・キューザック、バネッサ・ハジェンズ、マイケル・マグレディ、ディーン・ノリス
サイコキラー度★★★★★
緊迫度★★★☆☆
満足度★★★☆☆

アンナ・カレーニナ

2013年10月18日 | 映画(あ行)
地道が一番・・・だけどやはり憧れる情熱の愛



* * * * * * * * * *

ジョー・ライト監督にキーラ・ナイトレイとくれば、
私の大好きだった「プライドと偏見」。
さて本作は・・・。
実はもう少し本格的な歴史絵巻的作品かと思っていました。
(すみません、又例によって原作は読んでいないので・・・)
普通の作品とは少し手触りが異なっていまして、
本作は舞台の背景をそのまま映画に移行したような・・・
ちょっとユニークな演出がなされています。
その訳は…、また後で考えてみます。



19世紀末ロシア。
政府高官カレーニンの妻であり社交界の花であるアンナ・カレーニナ(キーラ・ナイトレイ)。
夫との間には子供が一人。
夫カレーニン(ジュード・ロウ)を愛してやまないとはいわないけれど、
まあ、貞淑な妻ではあったのです。
ある時、兄を訪ねてモスクワへ行き、
青年将校ヴロンスキー(アーロン・ジョンソン)と出会い恋に落ちます。

たちまち燃え上がり愛しあう二人。
(私なら見るからに軽薄そうな、こんな男は敬遠しますけど・・・)
アンナはすべてを捨て、愛に生きようと決心します。
当然のことですが、あまりにもあからさまな二人のことはたちまち噂になり、
夫の耳にも入ります。
火遊びならばまだよかった。
しかし、ヴロンスキーの子を孕むまでになっては…。



彼女は愛に負けるのではない。
社交界から爪弾きにされ生きる場を失ってしまう、
いわば世間に負けるのです。

ですが、良き夫であり善き妻であることを演じ、
良識ある善き人であることを“演じる”当時のこの社会。
暗黙のその了解を破ってしまった自由なアンナへ、
人々は余計に憎しみをぶつけたのかもしれません。
何かを演じなければならなかった家庭・社交界、
そういうことを現すために舞台背景的を用いたのではないでしょうか。
皮肉を込めて。
でもそれは現在の社会でも言えること。
そう思うと身の回りの何もかも、舞台背景の書割のようにも見えてきてしまいますね・・・。


けれども、ここにもう一つ、裏のストーリーがあります。
地方地主のリョーヴィン。
彼はキティという娘を愛していて、求婚したのですが、
その時キティはあのヴロンスキーに夢中で、あっさり断られてしまいます。
でもその直後に、ヴロンスキーはアンナに夢中となりキティのことなど忘れ去ってしまう。
リョーヴィンは大変質素な生活をしており、
農民とともに汗を流し草刈りをしたりします。
このリョーヴィンの家のみが、舞台背景ではなく、大自然を背景に映し出されます。
しばらくしてリョーヴィンは再度キティに求婚しますが・・・・。
これが意外な拾い物といいますか、
そもそも彼女を愛したことに誤りはなかったと申しましょうか・・・・
アンナのたどった道と対比して、なんと地道で力にあふれているのでしょう…。
私はむしろ、こちらのサイドストーリーの方に感動してしまいました。


人はやはり地に足をつけて生きるべきだ・・・・。
燃え上がる恋よりも、結局は穏やかに包み込むような愛が心にしみる…。
とはいえ、女であれば、やはり燃え上がる情熱の艶やかさ、
そういうものに憧れてしまう部分もありますねえ・・・



あの舞踏会のダンスのシーンはとても印象的でした。
アンナとヴロンスキーの気持ちが通じ合う情熱的なダンス。
・・・やっぱり憧れてしまう・・・かな?

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「アンナ・カレーニナ」
2012年/イギリス/129分
監督:ジョー・ライト
出演:キーラ・ナイトレイ、ジュード・ロウ、アーロン・ジョンソン、ケリー・マクドナルド、マシュー・マクファデン

斬新な演出度★★★★☆
満足度★★★☆☆

「つむじ風食堂と僕」 吉田篤弘

2013年10月17日 | 本(その他)
好きなことを仕事にできれば一番いいけれど・・・


* * * * * * * * * *

少し大人びた少年リツ君12歳。
つむじ風食堂のテーブルで、町の大人たちがリツ君に「仕事」の話をする。
リツ君は何を思い、何を考えるか…。

人気シリーズ「月舟町三部作」番外篇。


* * * * * * * * * *

ちくまプリマー新書。
私には馴染みのなかったシリーズですが、

ちくまプリマー新書は、「プリマー=入門書」という名にふさわしく、
特に若い人たちに最初に手に取ってもらいたい新書として創刊されました。
クラフト・エヴィング商會が手がける装幀も目に美しく
今では幅広い読者層に親しまれています。


・・・ということで、
普通新書のシリーズは同じ出版社のものは皆デザインが同じですが、
このシリーズは全て異なっていて、表紙だけ並べても見応えがある。
しかもこのクラフト・エヴィング商會のデザイン!! 
本巻がちょうど通算200巻目とのこと。
本巻の自作の表紙もオシャレでステキです。


さらに、本作は<月舟町>三部作の番外編とのこと。
え?三部作だったの?
いつの間に?
と思ったら、「つむじ風食堂の夜」、
「それからはスープのことばかり考えて暮らした」で2つ。
はい、それはわかります。
そしてもう一つはこれから発刊されるということで
「レインコートを着た犬」。
うーん、是非読まなくては、という気にさせられます!


さて、本作の主人公は12歳の少年リツくん。
ちょっと大人びたリツくんが、つむじ風食堂に来ている人々から
「仕事」についての話を聞きます。
少年少女のためのリクルートブックでもありますね。
いろいろな職業の人が出てきます。
文房具屋さん、肉屋さん、電気屋さん、
魚屋さん、新聞記者、ダンサー、宅配便の配達員・・・
皆自分の仕事が好きで、気に入っているようす。
けれども、
「好きな事が仕事になってるなんて、ごく限られた一部のヤツだよ。
やりたくもない仕事をしているヤツもいるということを忘れないように」とか、
「12歳だからまだ早い。今は遊びなさい」と、ちゃんと言う人も。


でもなんだかこうして不思議に様々なことを"分担"する人がいるから、
世の中は成り立っているのだ、
ということをリツくんは感じていくわけです。
私ははどちらかと言うと好きでもない仕事をやっているクチかなあ・・・。
でも、たしかにこれも"分担"のうちの一つなのでしょう。
12歳のリツくんの可能性はまだまだ無限。
いいなあ・・・。
若さが羨ましく思えてしまいました。

つむじ風食堂と僕 (ちくまプリマー新書)
吉田 篤弘
筑摩書房



「つむじ風食堂と僕」吉田篤弘 ちくまプリマー新書
満足度★★★☆☆

クロニクル

2013年10月16日 | 映画(か行)
悩み多きアンドリューの青春



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地面にぽっかりあいた謎の洞窟に入り込み、
正体不明の物体に触れたことで超能力を身につけてしまう
3人の高校生の物語です。
「青春SFアクション」という触れ込みですが、まさにその通り、
“SF”よりも“青春”が先に来る、
悩み多きアンドリューの物語・・・。



アンドリューは内気で友達もいない高校生。
何故か旧式のビデオカメラを持ちだして、自分の日常を撮影し始めます。
その映像がそのまま用いられているという、
ドキュメンタリー風の映画作品となっています。



思うに、人とまっすぐに向き合うことが苦手なアンドリューは、
カメラのレンズを通してようやく相手をじっくり見ることができるのかもしれません。
そんな彼が、たまたま一緒にいたマットとスティーブとともに超能力を身につけます。
女の子のスカートをめくったり、
スーパーの買い物客を脅かしたり、
まずは他愛無いいたずら。
彼らは次第にその力を強力に成長させ、
ついには空をも飛ぶようになるのですが、
そんな中で3人は友情を育てていくのです。



空をとぶシーンはスーパーマンのよう。
なるほど、スーパーマンの能力とは実はこういう能力なのかもしれない、
などと思ったりして。
でも、これはヒーローものではありません。
ある時、後ろから煽ってきた車にイラつき、
アンドリューが力を使って事故に合わせてしまいます。
力の使い方を誤っては大変なことになる・・・。
意外に友人二人はやんちゃではあるけれど、まともな精神の持ち主。
人に危害を加えてはならないと、誓い合うのですが・・・。



問題は、アンドリューなのです。
彼の心は非情に不安定。
その要因は彼の父親との確執にあります。
やっぱり、来ましたね! 
アメリカ映画の永遠のテーマの一つ“父親との確執”。
これが又、実際ダメな父親で、
全くアンドリューを理解しようとしない。
しかし、「父親も又人間で、未熟なところも多くあるのだ」という大人の対応を
アンドリューがまだできない。
父が父なら、子供も子供。
未熟なアンドリューが、こんな力を身につけてしまったというのがまちがいだったわけ。
せっかくアンドリューを受け入れてくれる友人も超能力も、
彼の救いにはならないのでした・・・。



超能力で地球の敵と戦う、などというものよりも
ずっと身近に感じられるストーリーです。
それは、心の問題を大きく取り上げたものだから。
またそれは、ビデオカメラで撮影したという、この設定のおかげでもあるでしょう。
もう、SFヒーローアクションはあまり見る気がしない私にも楽しめました。



ところで冒頭の方は画面が揺れて、気持ちが悪くなりかけました。
しかし途中から、アンドリューがカメラを空中に浮かせて撮影するという技術を身につけたお陰で、
非情に安定した画面となります。
助かりました!!

「クロニクル」
2013年/アメリカ/84分
監督:ジョシュ・トランク
出演:デイン・デハーン、アレックス・ラッセル、マイケル・B・ジョーダン、マイケル・ケリー、アシュレイ・ヒンショウ

「メグル」 乾ルカ

2013年10月14日 | 本(その他)
あなたは行くべきよ。断らないでね。

メグル (創元推理文庫)
乾 ルカ
東京創元社


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「あなたは行くべきよ。断らないでね」
無表情ながら美しく、奇妙な迫力を持つH大学学生部の女性職員から、
突然に声をかけられた学生たち。
店舗商品の入れ替え作業や庭の手入れなど、
簡単に思える仕事を、彼女が名指しで紹介してくるのはなぜだろう―。
アルバイト先に足を運んだ学生たちに何がもたらされるのか、
厄介事なのか、それとも奇蹟なのか?
美しい余韻を残す連作集。


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著者は北海道出身の方、
ということで、舞台は北海道、H大。
まあ、私などはそれだけで親近感を抱いてしまうわけですが・・・。
ストーリーは、学生部の女性職員が、
時々ふらりと訪れる学生にほとんど強引にアルバイトを押し付けます。
「あなたは行くべきよ。断らないでね」が決め台詞。
断りきれなかった学生がそのバイト先に赴き、
思いがけない体験をするというストーリーです。


はじめの「ヒカレル」では学生が壮絶な恐ろしい体験をします。
つまりはスピリチュアルな物語ではあるのですが、
だからといって全てがそうという訳でもありません。
次の「モドル」は失くしものが見つかる話しだし、
「タベル」も不思議なバイトだけれど、現実から逸脱するものではありません。


謎なのはこの大学職員悠木さんが、
どうしてこんなにもその学生にピッタリマッチしたバイトを充てることができるのか、ということですね。
学生がその時抱えていた問題が、
バイトでの体験により解決していくというおまけ付きなのです。
どうも悠木さんは、以前自身が引き受けたバイトの壮絶な体験によって、
シックスセンスとでも呼ぶべき不思議な力が身についたのかもしれません。
美人ではあるけれど、雰囲気が暗くて近寄りがたいところがある・・・、
謎めいていて、これも又良し。
また、なかには彼女が「お薦めしない」バイトなどもあり、
その行方に興味が惹かれます。


悠木さんに導かれたバイトで起こる奇跡。
ステキな物語でした。

「メグル」乾ルカ 創元推理文庫
満足度★★★☆☆

エリジウム

2013年10月13日 | 映画(あ行)
ゴキブリ並みにタフな“地球人”



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「第9地区」のニール・ブロムカンプ監督による作品。
・・・なるほど、今度は地球全体が第9地区みたいになっていました。

2154年。
ほんの一握りの富裕層は宇宙空間に浮かぶ「エリジウム」で快適に暮らし、
大多数の貧困層が荒廃した地球に暮らすという、とんでもない格差社会。
その地球で暮らすマックス(マット・デイモン)は、
工場の事故で放射線を浴びてしまい、余命5日と宣告されます。
彼はどんな病気も治すことのできる装置のあるエリジウムへ、潜入を試みますが・・・。


荒れ果て、薄汚れ、争いや犯罪の絶えない地球。
その頭上にポッカリと白く輝くエリジウムが浮かんでいます。
マックスは幼い頃それを見上げ、いつかあそこへいってみたいと夢に見るのです。


しか~し、貧乏人はいつまでたっても貧乏人だ。
この格差は決して絵空事ではなく、現実そのままですよね。
まあ、それをいっては始まらないけれど・・・。





今作のオフィシャルサイトがなかなか面白いです。
エリジウムを開発した“アーマダイン社”のPRが乗っていまして、
その社史によれば、
エリジウムの建設開始が2037年。
医療ポッド1000のデビューが2052年。
(ちなみに作品上に出てくるのは、その後継機で医療ポッド3000。)
エリジウムへの第一期移民があったのが2097年
・・・という具合です。
アーマダイン社の目玉は、この医療ポッドとヒューマノイドロボット。
マックスが働いていたのはこのロボットの組み立てラインの工場だったようですが・・・。
と、考えてみると、
もしかしてこの地球上のどこか別のところで
医療ポッドも製作されているのではあるまいか。
とすれば、そこを狙ったほうが早かったのでは?
などと思ったりして・・・。



さてさて、でも私は、地球上よりもエリジウムに住んでいる人たちのほうが心配です。
こんな世界で暮らしていたら、
人々はあっという間に生きる意欲をなくし退廃していくのではないかしらん・・・。
しかも、たぶん恐ろしい高齢社会ですよ・・・。
でも医療ポッドで若返ることができるのでしょうか? 
となればますます、終わりのない生に、夢も希望もなくすような気がしてならない・・・。
村上龍「歌うクジラ」を思い出します。
ほっておけば必ず、エリジウムは絶滅します!!



一方、地球上の人々はゴキブリ並みにたくましい。
マックスがまた・・・。
普通肉体にあんな装置を差し込むだけで絶命しそうだけれど・・・。
ここで生き抜くためには、タフでなければならいのでしょう、たぶん。
誰もがエリジウムの市民権を得る。
そんなことになったらどのような混乱が押し寄せるのか、私はそちらも心配です。



なんにしても、このストーリー自体よりも
色々な想像力が掻き立てられることで、私には面白い作品となりました。

「エリジウム」
2013年/アメリカ/109分
監督:ニール・ブロムカンプ
出演:マット・デイモン、ジョディ・フォスター、シャルト・コプリー、アリシー・ブラガ、ディエゴ・ルナ

格差度★★★★★
主人公のタフ度★★★★☆
満足度★★★☆☆

フリージア

2013年10月12日 | 西島秀俊
血みどろセンチメンタル



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これは松本次郎作コミックの映画化なんですね。
犯罪被害者が加害者を処刑することができる“敵討ち法”が成立した近未来日本が舞台。
お~!! 西島作品でこういうのは珍しい。・・・SF?
SFというか・・・敵討というから、時代劇かあるいは西部劇。
そんな雰囲気を覚悟したほうが面食らわないかもしれない。
もちろん、被害者側の本人が敵討をしても構わないのだけれど、
“執行代理人”を立てることも法で認められている。
そして加害者側も“警護人”を雇うことができる。
お金がない時は安い「国選」の“警護人”となるけど、
これはちょっと頼りない・・・。
警護人が敗れれば確実に自分が殺されるわけで・・・。
うむ、この設定は色々なドラマができそうだよね、確かに。



さて、本作の主人公となるのは“執行代理人”のヒロシ(玉山鉄二)だ。
彼は15年ほど前、少年兵だった頃にうけたトラウマで
感情も感覚も持たないという、特殊なヤツ。
表情を変えることなく、黙々とターゲットを処刑する。
そんな彼のある時のターゲットが、トシオ(西島秀俊)なんだね。
実は彼はヒロシと同じく以前少年兵で、
しかもヒロシの上官だったんだね。
二人はその時、軍による冷却爆弾の実験に加担してしまい、
多くの子どもたちを死なせてしまった。
そのことで心に深いキズを負っていたワケ。
この二人がはからずも、対決する運命となってしまう・・・。
何やら、血みどろでありながら、センチメンタルなのだなあ・・・
不思議な味わいのある作品でした。


陰りのある男、西島秀俊、カッコイイ~。
陰りがありすぎなくらいだったけど・・・。
西島さんはもちろんかっこよかったけど、
玉山鉄二さんもステキだったねえ。
本作は、西島氏つながりでなければ決して見ないジャンルだったと思うけれど、
まあ、たまにはこういうのも良かったです!

フリージア [DVD]
玉山鉄二,西島秀俊,つぐみ
バンダイビジュアル


「フリージア」
2006年/日本/103分
監督:熊切和嘉
原作:松本次郎
出演:玉山鉄二、西島秀俊、つぐみ、三浦誠己、柄本佑

近未来度★★★★☆
西島秀俊の魅力度★★★★★
満足度★★★☆☆