変態も突き詰めれば・・・
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なんとも、変態的ストーリーながら、いつしか引き込まれてしまうという不思議な力のある作品。
自らを「尾崎豊」(池松壮亮)、
「ブラピ(ブラッド・ピット)」(満島真之介)、
「坂本龍馬」(大倉孝二)と名乗る3人の男が
とある一室で共同生活をしています。
彼らは向かいのアパートに住む女性・ソン(キム・コッピ)を密かに「姫」と呼び、
後をつけ回し、盗聴器で様子をうかがい、のぞき見ることを生きる糧としている。
言ってみればストーカーもどきの変態集団。
彼らは彼女を知り尽くし、見守ることこそが自分たちの使命で、
自分たちは「兵士」だと思っているのです。
彼らが自分の名前を捨て、別の名前を名乗っているのも、
彼女が以前「好き」と言っていた人物になりきるため。
しかし決して彼女に自分たちの存在は知られないようにすること、
そしてまた彼女には実際には干渉しないことを信条としているのです。
それを彼らは10年も続けてきたのでした。
しかしその間、彼女は人生の坂を転げ落ちていく・・・。
今はろくでもないヒモ男(高杉真宙)のために、
ピンクサロン勤めで、借金を背負ってもいるのです。
そんなある日、とうとう彼女の部屋に借金取りが乗り込んできますが・・・。
この変態3人組の行為がホントにキモい・・・。
けれどここまで突き詰めると、逆に凄いという気になってきます。
彼らは見返りを全く求めていない訳ですしね・・・。
それは元々は愛だったはずなのですが、
しかし今は一体何なのか、すでにわからなくなっている。
ただの執着というべきなのかもしれません。
もしかすると彼らは自分の人生を考えることを放棄するために、
あえてこの行為にのめり込んでいるのでは・・・?とも思えるのです。
ガラの悪い借金取りの二人組(向井理・YOU)は、この3人の存在に気づき、
驚きあきれ、変態扱いするのですが、
次第に、彼らのある意味「純粋」さに打たれて行くのです。
恋なのか、愛なのか、執着か、単なる変態か・・・。
笑ってしまいながらも、何やら心底をぎゅっと掴まれる感じがしました。
池松壮亮さんの変態ぶりがもう、極まっています。
これは凄い!!
いかにもワルそうなチンピラの向井理さんも決まってる!!
表題は、尾崎豊さんの「僕が僕であるために」から来ているのですね。
変態行為かもしれないけれど、密かに自分を見守り応援する人々がいた・・・
そういう思いは、そのうち彼女にも受け入れられるかもしれません。
だといいね!
<Amazonプライムビデオにて>
「君が君で君だ」
2018年/日本/104分
監督・原作・脚本:松居大悟
出演:池松壮亮、キム・コッピ、満島真之介、大倉孝二、高杉真宙、向井理、YOU
変態度★★★★★
満足度★★★★☆