映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

不都合な理想の夫婦

2022年09月30日 | 映画(は行)

虚飾と野望に満ちた男

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1986年。
ニューヨークで貿易商を営むイギリス人のローリー(ジュード・ロウ)。
アメリカ人の妻アリソン(キャリー・クーン)と娘、息子、4人で幸せに暮らしています。
そしてローリーは大金を稼ぐ夢を追って、家族とともにロンドンへ移住。
郊外に豪邸を借り、息子を名門校に編入させ、
妻には広い土地に馬小屋を建てようと言う・・・
まるで、アメリカンドリームの凱旋者のような豪華さ。
しかしその実ローリーはすでに預金も底を突いて、ほとんど無一文同様になっていたのです・・・。
新しい仕事もうまくいかず、次第に崩壊してゆく家族・・・。

ローリーがアメリカの暮らしに満足していれば、
一応の幸福は得られていたはずなのに。
ローリーは異常に虚飾と野望に満ちた男なのでした。

というのも、彼の成長途上の暮らしに問題があったようではあるのですが、
それだって受け止め方は人それぞれ。
一段と堅実な性格になってもおかしくはないのです。
けれど彼は自分を人より優位に見せたくて、
お金があるフリ、何でも知っているフリ、仕事ができるフリ・・・
そんなことばかり。

そんな夫のことを分かっているアリソンは、
自分が稼いだお金を夫に見つからないよう隠すようにしているのです。
彼女は乗馬教室を開いていたのですが、アメリカから輸送してきた愛馬は突然死。
思えばこの馬の死が、壊れ行く家庭を象徴していたのかも知れません。
ついにはアリソンは近所の農園の家畜の世話をして稼ぐことにします。
豪邸に住んで、外出の時には豪華な毛皮をまとっているというのに。

両親の言い争いを耳にした高校生の娘(実はアリソンの連れ子)は、
すっかりぐれて自宅に悪い仲間を引き入れて麻薬パーティを開いてみたりする。
小学生の息子(ローリーの実子)はこの古くてだだっ広い家が恐い(分かります!)といい、
学校ではいじめられる・・・。

この移住は何もかもが失敗なのです。
冒頭で描かれた、家族4人の幸せそうな風景は一体何だったのだろう・・・。

いやいやいや・・・、もっとこじんまりしたアパートで普通に暮らして、
普通に仕事していれば何のことはなかったはず。
愚かしい男の破滅が家族をも崩壊させてしまうというのは、なんとも理不尽で切ない。

しかし、一通りどん底気分を味わったあとの結末が案外いいのです。
彼らは当たり前のことにようやく気づいたのかも知れません・・・。

しかし、あんな屋敷には私は絶対住みたくありません。
夜なんかマジで恐いし、ハウスキーパーがいなければ、
一部屋の掃除だけでもものすごく時間がかかりそう・・・。
ムリ、ムリ・・・。

 

<Amazon prime videoにて>

「不都合な理想の夫婦」

2019年/イギリス/107分

監督:ショーン・ダーキン

出演:ジュード・ロウ、キャリー・クーン、チャーリー・ショットウェル、ウーナ・ローシュ

 

虚飾度★★★★★

男の哀れ度★★★★☆

満足度★★★.5

 


「探偵は友人ではない」川澄浩平 

2022年09月29日 | 本(ミステリ)

でも、友人と言いたい

 

 

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わたし、海砂真史(うみすなまふみ)の幼馴染み・鳥飼歩(とりかいあゆむ)は
なぜか中学校に通っておらず、頭は切れるが自由気儘な性格で、素直じゃない。
でも、奇妙な謎に遭遇して困ったわたしがお菓子を持って訪ねていくと、
話を聞くだけで解決してくれた。
彼は変人だけど、頼りになる名探偵なのだ。
歩の元に次々と新たな謎
――洋菓子店の暗号クイズや美術室での奇妙な出来事――
を持ち込む日々のなかで、ふと思う。
依頼人と探偵として繋がっているわたしたちは、友人とは言えない。
だけど、わたしは謎がなくても歩に会いたいし、友人以上に大切に思っているのに……。
札幌を舞台に贈る、青春ミステリ第2弾!

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札幌を舞台とする青春ミステリ2巻目。

中学生・海砂真史の身の回りでおこるちょっとした出来事の謎を、
彼女の幼なじみである鳥飼歩が解き明かしていきます。

この鳥飼少年、中学校には通っておらず、頭は切れるけれども全く素直じゃない。
そして無類の甘いのも好き。
早い話が変人。

真史は、何か謎を解いてもらいたい時に「依頼人」として歩を訪ねて行くのです。
そして探偵はみごとに期待に応えてくれる。
これはあくまでも依頼人と探偵の関係であって、
わたしたちは「友人」とは言えないのかな?・・・と、
真史は少し淋しい気がしてしまうのです。
そして、単に顔を見て話をしたいだけなのに、
あえてささやかな「謎」を持って行ったりして。
ちょっぴり甘酸っぱい香りがしてきましたね。

しかし歩の方はそんなことには無頓着のように見えたのですが・・・。

終盤、アメリカ帰りの歩が、仙台帰りの真史と
ちょうど同じ頃に千歳空港に着くので落ち合うというシーンがあります。
しかし実はここにはトリックがあって・・・。

なかなか「めんどくさい」歩の性格の発露の場ではありますが、
それがまた、なかなか良かったです。
青春ですなあ・・・。

 

前作同様本作の舞台は札幌で、
しかもかなり私の生活圏に近いところが出てくるので、
親近感沸きまくりなのです。

どうか皆様も、この二人を応援してくださいませ。
・・・と、勝手に身内のような気がしてしまって困る。

あ、ちょうど文庫も出たところです。

<図書館蔵書にて(単行本)>

「探偵は友人ではない」川澄浩平 東京創元社

満足度★★★★☆

 


逆光

2022年09月28日 | 映画(か行)

70年代の広島

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1970年代の広島、尾道。

22歳大学生の晃(須藤連)が夏休みに、
好意を寄せている先輩・吉岡(中崎敏)を連れて、尾道の実家に戻って来ます。
晃は吉岡を退屈させないよう、女の子を誘って遊びに出ます。
幼なじみの文江と、彼女の友人みーこ。
4人で気ままに過ごします。
そんな中で、どうも吉岡はみーこが気になるようで・・・。

 

文江はややぽっちゃり型で“美人”とはいえないタイプ。
晃と幼なじみながら、今は看護師として働いているしっかり者。
始め、晃が吉岡を連れて歩いているところにばったり出くわしたものの、
晃は知らないふりをしたことに若干傷ついています。
都会から来た友人に、こんな田舎くさい女友達がいるのを知られたくなかったのだろう・・・と、
彼女は晃の心中を正確に理解します。

晃は他に誘う女友達もいなくて、やむなく文江を誘い、
ついでにもう一人くらい誰かを連れてきてと、彼女に頼む。
そして4人でぷらぷらと遊び歩くうちに文江は気づいてしまうのです。
晃が吉岡を好きなことを。

ドラマのヒロインタイプではないものの、
この娘は、人の心の機微に気づく大人ですねえ・・・。
地元にしっかり根を張って、たくましくしなやかに生きている感じ。
それに引き換え、良い家に生まれ育った晃は、
実のところ全くガキのママのよう。

晃は無論、吉岡への気持ちを人には気取られないようにしているのだけれど、
その視線や態度などからダダ漏れ。
そしてどうやら吉岡もそれに気づいていて気づかぬフリをしているフシがある。
この微妙な均衡の破れ方がまたいい。

 

本作、登場人物は皆言葉少ななのですが、
そのあふれる感情は画面からどんどん流れ込んできます。

また、画面の色調とか、学生達の話の内容などから
70年代という時代性もすごく伝わります。
・・・でも、この主役にして監督の須藤蓮さんは1996年生まれの26歳。
一体どうしてこんな時代色を描き出せるのか、
全くもって驚異的というほかありません。

62分という短さの中に、様々な要素が凝縮されていて、見事でした。

 

<WOWOW視聴にて>

「逆光」

2021年/日本/62分

監督:須藤蓮

脚本:渡辺あや

出演:須藤蓮、中崎敏、富山えり子、木越明

 

時代表出度★★★★★

感情描写★★★★★

満足度★★★★★

 


GAGARINE ガガーリン

2022年09月26日 | 映画(か行)

孤独な少年の宇宙

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フランス、パリ郊外に実在するガガーリン公営住宅。
宇宙飛行士ガガーリンに由来する名を持つこの団地に、16歳ユーリは住んでいます。
自らも宇宙飛行士を夢見ながら、
今はかつて自分を置いて出て行ってしまった母の帰りを待っているのです。

さて、この団地もすっかり老朽化し、
パリ五輪2024年を目指して、取り壊し計画が持ち上がります。

ユーリは想い出がつまったこの団地を守るため、
親友フサームや好意を寄せるディアナとともに、
取り壊しを阻止しようと立ち上がりますが・・・。

この団地は1961年に、エレベーターなど、
当時としては画期的な現代的設備を備えた鉄筋コンクリートの建物。
ガガーリン本人も訪れたことがあるという、
まさに当時注目を浴びた低所得者用の団地なのでした。

しかし、60年を経て建物や設備がすっかり老朽化。
エレベーターは動かないものが多く、
廊下の照明なども、交換の手間や費用を惜しんで切れたまま放置されているのです。

そんな中に住む少年ユーリは、母親が出ていったまま戻らず一人暮らし。
この団地を出て行かなければならないとなれば、一体どうすればいいのでしょう。

おそらく思い出がどうこうというよりも、
そうした事情の方が大きいのでは?と思うのですが、
彼はなんとかこの団地を長持ちさせようと、
母のアクセサリーと交換に電球や蛍光管をもらってきたり、
壁面の落書きの上にペンキ塗りをしたり・・・と悪戦苦闘。

他の住人はこの団地に思い入れはあるものの、
狭くてボロなこの団地から早く引っ越したいと思う人も多いのです。
というわけで、住民はそれぞれ退去を始め、
とうとうユーリだけが取り残されてしまう・・・。

そこから先がユーリと本作のすごいところ。

廃墟のアパートに取り残されたユーリは、まるで宇宙船で一人飛行する宇宙飛行士。
ある部屋では野菜を栽培し、孤独と寒さに耐えながら、サバイバル生活。
いつしかユーリは無重力の宙に浮遊している・・・。

外ではすでにアパート取り壊しのための爆薬を設置し始めているのですが・・・。
切なくもすばらしいイマジネーションの世界に魅了されます。

ちなみにこの団地は2019年にすでに解体済みのようです。
60年、そこに暮らした人々を包み込んだ団地への、素敵なレクイエムとなった作品ですね。

 

<WOWOW視聴にて>

「GAGARINE ガガーリン」

2020年/フランス/95分

監督:ファニー・リアタール、ジェレミー・トルイユ

出演:アルセニ・バティリ、ソナ・クードリ、ジャミル・マクレイブン、フィネガン・オールドフィールド

 

郷愁度★★★★☆

サバイバル度★★★★☆

満足度★★★★☆

 


ノイズ

2022年09月25日 | 映画(な行)

隠そうとすることで、また問題がやっかいに・・・

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筒井哲也さん同名コミックの映画化。

過疎化に苦しむ猪狩島。
島の青年・泉圭太(藤原竜也)が生産を始めた黒イチジクが高く評価され、
地方創生推進特別交付金5億円の支給もほぼ決まり、
島に希望の光が見え始めています。

そんなある日、村を訪れた何やら怪しい男、小御坂(渡辺大知)。
その不審な言動に違和感を持った圭太。
猟師の純(松山ケンイチ)。
島の新米巡査・真一郎(神木隆之介)。
この3人は島の幼なじみで親友同士なのです。

そして圭太の娘の姿が見当たらないことを機に、
圭太が誤って小御坂を殺してしまいます。
その場に居合わせたこの3人は、この殺人を隠すことを決意。

ところが実はこの小御坂は、元受刑者のサイコキラー。
彼の足取りを追って、警察が島に乗り込んできます・・・。

もともと殺そうと思って殺したわけではなく、あくまでもものの弾みの事故。
その時に、きちんと正しい通報措置を取っていれば・・・
というのは、あくまでも後に思うこと。
いま、イチジクを大々的に売り出そうとする島で、
問題は起こしたくないと、そういう気持ちが大きかった・・・。
その時にはこの男の正体を知っていなかったこともありますし。

ということで、このことを隠そうとするが故に、余計に事態は面倒になり、
彼らは追い詰められていくのです。
そんな中で島の老人(柄本明)と町長(余貴美子)までが命を落とすことに・・・。
そしてまた、捜査に当たる刑事(永瀬正敏)が優秀すぎる!!
この、絶体絶命感、ハラハラ感がハンパなく、見入ってしまいます。

閉鎖的な過疎の島という背景。
そして、鉄板の友情の絆で結ばれたはずの3人が、実は・・・。
という展開もまた、見所。

豪華キャストも納得の力作です。
北海道ではイチジクはできないので、あまりなじみが深くなくて、
とても食べたくなりました。

<Amazon prime videoにて>

「ノイズ」

2022年/日本/128分

監督:廣木隆一

原作:筒井哲也

出演:藤原竜也、松山ケンイチ、神木隆之介、黒木華、渡辺大知、
   酒向芳、柄本明、余貴美子、永瀬正敏

絶体絶命度★★★★★

ドキドキ度★★★★★

満足度★★★★☆

 


「スタッフロール」深緑野分

2022年09月24日 | 本(その他)

映画の特殊効果に情熱を捧げる女たち

 

 

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戦後ハリウッドの映画界でもがき、爪痕を残そうと奮闘した特殊造形師・マチルダ。

脚光を浴びながら、自身の才能を信じ切れず葛藤する、
現代ロンドンのCGクリエイター・ヴィヴィアン。

CGの嵐が吹き荒れるなか、映画に魅せられた2人の魂が、時を越えて共鳴する。
特殊効果の“魔法”によって、“夢”を生み出すことに人生を賭した2人の女性クリエイター。
その愛と真実の物語。

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今日の映画には欠かせないものとなっている「特殊効果」。
本作は、その映画における特殊効果に携わる女性たちの物語です。

 

戦後間もないハリウッド。

「特殊造形師」のマチルダ。
映画に登場する怪物の造形や、俳優の特殊メイクに関わっています。
まだまだこうした仕事では女性は希少。
当時の映画のスタッフロールでは、
特殊メイクなどは請け負った会社名が出るくらいで、名前までは出てきません。
それでもマチルダは、いつかは自分の名前がそこに載って、
映画の中にほんの少しでも自分の爪痕を残すことができれば・・・と思っているのです。

ところが、そのころから登場し始めたのがCG。

出始めのコンピュータは、巨大でしかも処理に時間がかかり、
とても絵を動かすことができるなんて考えつかないような代物でしたが、
瞬く間に進化していきますね。
出始めのCGを見たマチルダは、こんなものには負けないと思うのですが、
もうしばらく後に、とあるCGによるアニメーションを見て、
大いにショックを受けるのです。

実際に手作業で作り上げる特殊効果に、未来はないと絶望し、
映画界から逃げ出してしまうマチルダ。

 

さてそこから30年ほどが過ぎた現代のロンドン。

今度はCGアニメーターのヴィヴィアンの物語になります。
今や、映画におけるCG使用は当たり前。
けれど、「CGなんか偽物じゃないか」という批判も多いのです。
ある程度周囲から才能を認められているヴィヴィアンなのですが、
そうした批判を受けて、今ひとつ自分の仕事に自信が持てないでいるのです。

そんな時、あの「マチルダ」が創り上げた怪物Xの登場する
往年の名作映画をリメイクする話が持ち上がり、
しかも今度はCGによるものとして、ヴィヴィアンのいる会社に依頼が来た・・・!

 

現実にはあり得ないものを、いかに現実であるかのように見せるか、
そうしたことに情熱をかけて取り組んでいる人々にスポットを当てた力作ですね。

最近私自身は、CGを使った派手な作品を見なくなってきているのですが、
でも一番初めに「ジュラシックパーク」をみた時の感動は忘れられません。

そしてスタッフロールも、今はイヤになるくらい長くて膨大な人名が流れていきますが、
でもこれこそが一人一人の頑張りの証しということなんですね。

 

映画好きにとっては、実に興味深い作品でした。

 

<図書館蔵書にて>

「スタッフロール」深緑野分 文藝春秋

満足度★★★★☆


川っぺりムコリッタ

2022年09月23日 | 映画(か行)

気がついたらそこにある、ささやかな幸せ

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北陸の小さな町に一人の男・山田(松山ケンイチ)がやって来ます。
彼は小さな塩から工場で働くことになり、
社長から紹介された古い安アパート「ハイツムコリッタ」で暮らし始めます。
(名前だけ聞くと豪華ですが、平屋で、つまりは長屋みたいな家。)

すると隣の部屋の島田(ムロツヨシ)が、「風呂を貸してほしい」と、訪ねてきます。
なるべく人と関わらず、静かに暮らしたいと思っていた山田ですが、
少しずつ島田や、その他、近所の住人達とも気心が知れて、親しくなっていきます。

 

ということで、特に大きな事件が起こるわけではありません。
毎日毎日単調なイカをさばく仕事をし、
決まった時間に帰宅して、お風呂に入ってご飯を食べて・・・
そんな日々が続くのです。

さてしかし、実は山田は元受刑者。
刑期を終え、出所してこの町にやって来たのです。
だからこそ、こんな地味な生活にも不満をもつでもなく淡々と生きているようでもある。

そんな彼の元に、彼の父親の死の知らせが入ります。
孤独死して、しばらくして異臭で近所の人が気づいたという。
しかも父親とはいえ、山田が小さな時に別れたきりで、
その後の消息も全く知らなかった。
こんな男の遺骨を引き取る必要があるのか・・・? 
考えてしまう山田。

そんな山田の背中を押すのが島田です。

自らをミニマリストという彼。
山田の部屋に風呂を借りに来て、いつの間にかご飯まで食べに通っている、
つまりはただのケチな貧乏人のようでもありますが、
小さな菜園で作る野菜を惜しみもなく分けてくれる。
お骨はちゃんと引き取らなきゃダメだとのお節介も。
ちょっと変人だけど、まっとうでいい人なのです。
なんともユニークな人物です。

 

ところで、題名やアパート名となっている「ムコリッタ」は、仏教の時間の単位の一つ。
一日の30分の一、すなわち48分が1ムコリッタになります。
仏教用語ではささやかな幸せの意味を持ちます。

そしてこの町に流れる川。
川は彼岸と此岸があって、生と死を隔てる境界の意味も持っていますね。

山田の父が亡くなったこと。
おなじ住民の溝口(吉岡秀隆)が墓石のセールスをしていたり、
大家の南(満島ひかり)の夫が若くして亡くなっていたり・・・と、
死はとても身近にあるのです。
そしてまた、彼らの生活はギリギリで、食べることに困ることもあったりする。
すなわちとても「死」に近い場所であったりする。

そんな場所の彼らの生活の中でも、
ほんのささやかな幸せがあってもいいし、求めてもいい。

例えば、おかずは塩からだけだとしてもおいしくご飯が食べられて、
一言二言でも言葉を交わす相手がいて・・・
そんなささやかな幸せでも人は十分生きる力にすることができるのではないか・・・。

私たちは多くを望みすぎているのかも知れません。

荻上直子さん作品にもれなく、食事がとってもおいしそうなのですよね。
全然豪華なものではないのに。
ただのキュウリすらも、味噌をつけて丸かじりがなんともおいしそう。
塩辛をのせたご飯が無性に食べたくなります。

 

<シネマフロンティアにて>

「川っぺりムコリッタ」

2021年/日本/120分

監督・原作・脚本:荻上直子

出演:松山ケンイチ、ムロツヨシ、満島ひかり、江口のりこ、柄本佑、吉岡秀隆

ささやかな生活度★★★★★

満足度★★★★★

 


百花

2022年09月22日 | 映画(は行)

母との絆とは、記憶とは・・・

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川村元気さん原作で、この度の監督も務めています。

 

レコード会社に勤務する葛西泉(菅田将暉)。
母・百合子(原田美枝子)は一人暮らしでピアノ教室を営んでいますが、
泉はときおり母の様子を見に寄る程度。

そんなある日、百合子が認知症を発症。
次第に症状は進み、一人暮らしも難しくなり施設に入居。
だんだん息子である泉のこともわからないくらいになっていきます。

そんな頃に、泉は百合子の部屋で1冊のノートを見つけます。
そこには、泉が決して忘れることのできない出来事の真相が・・・。

 

泉は結婚していて、妻・香織(長澤まさみ)は、妊娠中。
その香織は以前から泉とその母の関係性に、なにかヘンものを感じていたといいます。

泉は妻にもこれまで話したことがなかったのですが、
泉には生まれたときから父親はいなくて、
小学生の時に、一年ほど母親がいなくなっていたことがあったというのです。
どうも好きな男と生活していたらしい・・・、
それが母親のノートで明らかになったのです。
そんな母親の生臭い事実を知ってしまったら、さすがにショックですよね。

けれど、自分のことも、そんな過去の色恋沙汰も、
今の母の記憶からはすっかり抜け落ちているらしい。
泉は何もかも無意味なようで、気落ちしてしまうのです。
母にとって自分とはいったい何だったのだろう・・・。

もうすぐ子供が生まれて親になろうとしている自分ですが、
そのことにすら自信を持てないでいるのです。

さて、ある時ほとんど記憶も薄れかけている母が
「半分の花火」が見たい、というのです。
ネットで調べて、それが実在することを知り、
泉は母をその花火大会に連れて行きます。

これは、諏訪湖の湖上花火というものらしいです。
それは確かに美しい。
でも、本当に母が見たかったのはそれではなかった、
という所に本作の感動が待ち受けているわけです。

 

本作、1シーン1カットという手法で撮られています。
特に、母・百合子の記憶の混濁や意識の迷走を描くときに、
この手法が実に効果的に思えました。
私たちもひととき、百合子の不思議な「認知」の世界に
共にいるような感覚を受けます。

いろいろなことを忘れないようにと、母が書き残した何枚ものメモ用紙を泉が見つける。
どんなにか心細く不安だったでしょう、
そういう母の心境を思い計るのも、切ない、切ない・・・。

<シネマフロンティアにて>

「百花」

2022年/日本/104分

監督・原作:川村元気

出演:菅田将暉、原田美枝子、長澤まさみ、北村有起哉、岡山天音、永瀬正敏

 

記憶混迷度★★★★☆

満足度★★★★☆

 


「東京の謎」門井慶喜

2022年09月20日 | 本(解説)

東京の歴史をたどって

 

 

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『家康、江戸を建てる』『東京、はじまる』など、
江戸・東京に深い造詣をみせる筆者が、
東京の21の地域について過去と現在とを結び、東京の「謎」を解き明かす。
回ごとに東京と町を築き上げてきた巨人たちとの交差が描き出されます。

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本作は、先に同著者の「地中の星」を読んで興味を持ちました。
それは地下鉄を日本で初めて造った人物の物語。
本作は同様に、過去、東京で様々な人が様々なことに取り組んで、
今の東京の姿に繋がっているということを解き明かす本であります。
学者ではなく、小説家・門井慶喜氏の語り口が、先人への愛に満ちていて良いのです。

 

内容を詳しくは書きませんが、
「東京」に関係することが時代を追って述べられていて、
一番始めは

「なぜ源頼朝は橋のない隅田川を渡ったのか」

今注目を浴びている頼朝がトップで登場。
ほら、もうすでに読んでみたくなるでしょう?

「なぜ浅草は東京の奈良なのか」

「なぜ勝海舟はあっさり江戸城を明け渡したのか」

「なぜヱビスビールは目黒だったのか」

「なぜ東京駅は大正時代まで反対されたのか」

「なぜ新宿に紀伊國屋書店があるのか」

「なぜ羽田には空港があるのか」

「なぜ寅さんは葛飾柴又に帰ってきたのか」

「なぜピカチュウは町田で生まれたのか」

などなど、瞬く間に時代は進みますが、興味の尽きない話ばかり。
今度、ブラタモリでも紹介してほしいような内容です。

時の流れ、人々の流れ・・・
いろいろなことが積み重なり変化して今があるのだなあ・・・。

北海道の歴史はほとんど明治時代以降のことなので、
今もある町で1000年もの昔の痕跡をたどることができたりするのは
うらやましいです・・・。

 

「東京の謎 この街をつくった先駆者たち」門井慶喜 文春新書

満足度★★★★☆ 


種まく旅人 華蓮(ハス)のかがやき

2022年09月19日 | 映画(た行)

農家の嫁じゃなくて

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第一次産業に従事する人々を描く「種まく旅人」シリーズ、第4作。
今回の舞台は石川県金沢市。
加賀れんこんを題材にしています。

大阪の信金に勤める山田良一(平岡祐太)。
故郷金沢でれんこん農家を営む実家の母から、父が脳梗塞で倒れたとの知らせが来ます。
帰郷した良一は、実家の畑を引き継ぐか売却するかの選択を迫られます。
もともとれんこん農家がイヤで都会に出た良一。
そしてまた近く結婚予定の恋人もいて、決断のつかない良一・・・。

そんなところにやってくるのが、農林水産省官僚、神野恵子(栗山千明)。
れんこん農家の視察でこの地に赴任しているのですが、思わぬお節介で・・・。

以前にテレビで見たことがあります。
れんこんの収穫風景。
泥沼の中から、れんこんを堀り上げるのは見るからに重労働そうです・・・。
だから良一が農家を引き継ぎたくないと思ったのも無理のないこと。
そして都会育ちの恋人に、今さら農家の嫁になってくれなんて言えない、というのもよくわかる。

この「農家の嫁」という言葉がよろしくない。
いかにも古くからの因習を引きずっています。
農作業を散々手伝ったあげくに、それでも家事・育児と働くことが当然と思われる。
本作は、こういうことも題材としているのです。

神野は思う。
農家の嫁ではなくて、女性の職業選択の一つとして農業を考えられないか、と。
一つの例として、人を雇い入れて一つの組織としての農業を進めているところも出てきます。
こういうところなら女性も入りやすいし、休暇などもとれる。

多人数の労働力を入れるということは、
かなり大規模な農場でなければならないとは思いますが・・・。
でもそうなれば多角経営という手もあるし、
私はやはりこれからの農業はそうしたあり方が良いのでは・・・などと思ったりします。

ともあれ、ハスの美しい花が開いたときの喜び。
収穫したレンコンの真っ白な切り口。
こうしたもので、苦労が報われるといいますか、
農業の喜びを私たちも知ることができますね。

農業のことは全然わかっていない私には、貴重なシリーズです。
今後も続いてほしいです。

<WOWOW視聴にて>

「種まく旅人 華蓮(ハス)のかがやき」

2020年/日本/108分

監督:井上昌典

出演:栗山千明、平岡祐太、大久保麻梨子、木村祐一

 

農家の喜び度★★★★☆

女性と農業を考える度★★★★☆

満足度★★★.5

 


あと1センチの恋

2022年09月18日 | 映画(あ行)

届きそうで届かない

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幼なじみの男女の12年間にわたるすれ違いの恋を描きます。

イギリスの田舎町。
6歳の頃からずっと一緒に過ごしたロージー(リリー・コリンズ)とアレックス(サム・フランクリン)。
互いのことを他の誰よりもよくわかっています。
高校卒業後は、一緒に故郷を離れアメリカの大学に進学する約束をしていました。

ところが、アレックスが他の女の子に興味を持って
パーティに誘ったことに動揺したロージーは、
張り合うように他の男子と付き合い、なんと妊娠してしまった・・・。
ロージーは進学を諦め、シングルマザーとなることに。
このいきさつについては、アレックスには内緒です。

そして単身アメリカに渡ったアレックスにはまた新たな出会いがあり・・・。

 

互いの気持ちを素直に伝えられないまま、別の人生を歩む二人。
ありがちのストーリーではありますが、乙女心を刺激するキュンキュンに満ちています。

とりあえずは、別の男の子供を身ごもって出産してしまうという、
予想からの大きな逸脱には驚かされました。
ロージーは恋愛以前の問題で、彼女自身の「ホテルの経営をしたい」という夢も途絶えてしまうのです。

娘が5歳くらいになってから彼女は仕事を始めますが、それはホテルの下働き。
でも、実はこれはホテルについて学ぶ、良い実地研修でもあるわけ。
彼女がホテルにこだわるのは、彼女のお父さんがホテルで働いているから。
(ドアマンなのですが) 
その父に夢を励まされ、見守られるロージー。
何があっても彼女の意思を尊重し、支えてくれる家族。
ありがたいですね・・・。

アレックスとの間柄は、まさにあと1センチ。
もう少しで届きそうで、届かない。
互いに別の相手と結婚したりもした。
けれど、それは長くは続きません。
それはそうですよね、心の底に、本当に大切な人の存在があるのだから・・・。

 

女性好みのストーリーではありますが、そこにはロージーの確実な人生の歩みもあって、
好感の持てる作品になったと思います。

 

<WOWOW視聴にて>

「あと1センチの恋」

2014年/ドイツ・イギリス/103分

監督:クリスチャン・ディッター

原作:セシリア・アハーン

出演:リリー・コリンズ、サム・フランクリン、クリスチャン・クック、
   タムシン・エガートン、スキ・ウォーターハウス

 


「緋の河」桜木紫乃

2022年09月17日 | 本(その他)

自分らしさを突き詰めて

 

 

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昭和の釧路に生まれた秀男は、色白小柄で人形のように愛らしく、
物心つく頃には姉の真似をして自分を「アチシ」と呼んだ。

厳格な父に殴られ、長兄には蔑まれ、周りの子どもに「女になりかけ」とからかわれても、
男らしくなどできず、心の支えは優しい母マツと姉の章子、
そして初恋相手の同級生男子・文次の存在だった。

男の体に違和感がある自分が、自分らしく生きるため、
そして「女の偽物」ではなくいっそ「この世にないもの」になるため、
秀男は高校を中退し家を飛び出していく。

札幌のゲイバーで出会った先輩マヤに教えを仰ぎ、東京、大阪、やがて芸能界へ。
舞台で美しくショーダンスをするのに邪魔な睾丸をとり、
さらには「フランスで陰茎をとる」とマスコミに表明し……。

逆境に負けず、前人未踏の道をいつだって前向きに突き進む秀男に心が奮い立つ、
波瀾万丈な人生エンターテインメント!

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本作の主人公・秀男はカルーセル麻紀さんをモデルとしています。
私は、カルーセル麻紀さんはほとんど名前を知るだけくらいで、
釧路出身というのも本作で始めって知ったくらいです。
今でこそLGBTの立場の方のことについては理解が広まってはいますが、
昭和期の釧路、女言葉を使う少年がど
れだけの非難の視線を浴びたかというのは想像に難くありません。

北海道で釧路とくれば、桜木紫乃さん。
なので、彼女がカルーセル麻紀さんに注目したのも当然ではあります。

 

それにしてもなんて劇的な人生。
もちろん小説なので、秀男=カルーセル麻紀ではないのでしょうけれど、
その人生遍歴はほとんどそのままを追っているようです。

作中最も強く感じるのは、秀男の「自分らしく」あろうとする思いの強さ。
男らしさとか女らしさとかとは関係ない。
あくまでも自分が一番自分らしく在ることができる自分になろうと思う。
美しい「ショー」のためには、ジャマなものなど取ってしまう。
こうした思い切りの良さ、思いを実現する力こそが、魅力となって光を放ちます。

 

 

本作の続編として「孤蝶の城」がすでに刊行されていて、
読みたいですが、多分しばらく先になりそう・・・。

 

「緋の河」桜木紫乃 新潮文庫

満足度★★★.5

 


君が落とした青空

2022年09月16日 | 映画(か行)

同じ日を繰り返して

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高校生の実結(福本莉子)と修弥(松田元太)は付き合い始めてまもなく2年になります。
二人は月に一度、何があっても映画を一緒に見に行くと約束をしています。

ところがその日、修弥に急用が入り、映画はキャンセルに。
その後、「もう一度話したい」と連絡してきた修弥と会うために、
実結は待ち合わせ場所に向かいます。
ところがその時、実結の目前で修弥は交通事故に遭ってしまうのです。

パニック状態の実結が目を覚ますと・・・、
それは事故当日の朝。

実結はこの事故を回避して修弥を救い出そうと、何度も同じ日を繰り返すことに・・・。

ということで、タイムリープものではありますが、
さほどそういうSFチックな感じはしません。
実結がどんな工夫を凝らして事故を回避するかということがメインではなくて、
同じ日を繰り返すうちに、実結に人の本当の心が見えてくる・・・
そういう心のドラマがメインのように思えます。

実結は最近、修弥との付き合いに疑問を感じ始めていたのです。
「修弥が同じクラスの女子と付き合っているらしい」というウワサが流れ、
自分は修弥と月に一度映画を見に行くだけの関係。
これで本当に付き合っているといえるのだろうか。
そのように思うとなんだか自信がなくなってしまうのです。
何やら鬱々としてしまう実結。

そんな彼女が、同じ日を何度も繰り返し、いろいろな人の気持ちを学んでいく。
確かに、彼女は成長してゆくのです。

さて、最後に彼女は修弥を救うことができるのか・・・というあたりで
終盤もう一ひねりあるところがなかなか良い。

 

まあそれにしてもあまりにもピュアで、オバサンはこそばゆいゾ。

 

<WOWOW視聴にて>

「君が落とした青空」

2022年/日本/93分

監督:Yuki Saito

原作:櫻いいよ

出演:福本莉子、松田元太、板垣瑞生、横田真悠、莉子

 

ラブストーリー度★★★☆☆
ピュア度★★★★☆

満足度★★★☆☆

 


スティルウォーター

2022年09月14日 | 映画(さ行)

真実は必ずしも人を幸福にしない

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米、オクラホマ州スティルウォーターに住むビル(マット・デイモン)。
彼には娘・アリソン(アビゲイル・ブレスリン)がいるのですが、
留学先の仏・マルセイユで殺人の罪により服役中。
もう5年になります。

アリソンはほとんどビルの母である祖母に育てられ、仕事で不在がちのビルとは疎遠。
けれどビルはこの5年間は頻繁にアリソンとの面会のためマルセイユを訪れています。
そして、娘が言う「自分は無実である」ということを信じてもいるのです。
そんなある日、実の犯人らしき人物の情報を耳にしたビル。
けれど弁護士は取り合ってくれず、探偵を雇うお金もない。
そこで、ビルは自身でその男の行方を探そうとしますが・・・。

 

ビルは、マルセイユで知り合い親しくなった母子の家に世話になることにします。
シングルマザーのヴィルジニーとその娘マヤ。
実のところフランス語が全く話せないビルは、人々に聞き込みを行うのも困難。
けれどずいぶんヴィルジニーには助けられます。
そしてマヤもビルを気に入り、互いにフランス語と英語を教え合うようになります。
ビルは、自分が娘をかわいがることができなかった後悔を取り戻すかのように、
マヤとの絆を深めてゆく。

ビルとこの母子との交流がとても丁寧に描かれていて、
本作は実は恋愛ものか家族ものだったのか・・・?
と思い始めた頃に、いきなりサスペンスに変貌!!
ビルの過激な思い込みが恐い展開を見せ始めるのです。

しかし・・・。
真実は別のところにあった。

題名の「スティルウォーター」は、ビルとアリソンのホームタウンの名前。
本作はほとんどマルセイユが舞台です。
けれど、この名前に意味があった、
というのがなかなか心憎い。

大人は子供に嘘をつかせるようなことをしてはいけない。
そして、真実は必ずしも人を幸福にはしない。

いろいろなことを訴えかけてくる作品でした。

 

<Amazon prime videoにて>

「スティルウォーター」

2021年/アメリカ/139分

監督:トム・マッカーシー

出演:マット・デイモン、アビゲイル・ブレスリン、カミーユ・コッタン、リル・シャウバウ

 

サスペンス度★★★★★

父と娘の相克度★★★★☆

満足度★★★★☆

 


「クジラアタマの王様」伊坂幸太郎

2022年09月13日 | 本(その他)

現実とゲーム世界の間で

 

 

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記憶の片隅に残る、しかし、覚えていない「夢」。
自分は何かと戦っている?
――製菓会社の広報部署で働く岸は、商品への異物混入問い合わせを
先輩から引き継いだことを皮切りに様々なトラブルに見舞われる。
悪意、非難、罵倒。
感情をぶつけられ、疲れ果てる岸だったが、とある議員の登場で状況が変わる。
そして、そこには思いもよらぬ「繋がり」があり……。
伊坂マジック、鮮やかなる新境地。(解説・川原礫)

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ちょっと不思議なストーリーです。

製菓会社で働く岸。
まあ、一応普通の会社員という現実。
けれど彼はときおり不思議な夢を見る。
まるでRPGのように、自分は勇者か兵士のような姿になっていて魔物と闘うのです。
ときおりは他の者とチームを組んで。

ところが、現実世界でも彼はこのチームの仲間と出会う。

そして、夢の中で魔物に打ち勝ったときには、
現実世界で立ち塞がった危機をうまく乗り越えることができて、
魔物に負けたときには現実世界でもイヤなことが起こる・・・、
彼らはそうした相関関係らしきものに気づき始めるのですが・・・。

 

この、夢のような「あちらの世界」のことが、
本作ではイラストで表わされているのです。
それはコミックでも挿絵でもなくて、「小説」を絵で描いたもの。
ここに文字はありません。
ユニークです。
スリルもたっぷり。

ところで「クジラアタマ」って何、と思いますよね。
答えは秘密。
ご自身で確かめましょう・・・。

「クジラアタマの王様」伊坂幸太郎 新潮文庫

満足度★★★☆☆