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「歌わないキビタキ 山庭の自然史」梨木香歩

2024年09月03日 | 本(エッセイ)

自然の営みと人のこと

 

 

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『西の魔女が死んだ』の著者による大好評の
サンデー毎日連載を中心に収録した書籍化第二弾。
山小屋暮らしや動植物との出会い、壮大な生命の連なりと営みに、
心ふるえるエッセイ集。

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梨木香歩さんのエッセイ集。


自然の営みに非常に関心の深い方なので、
本巻は著者の山小屋での生活などを絡めながら、自然の動植物のことにも触れています。

私も近所の山の公園を散歩して、ほとんど他の人は関心を示さないような
野草やキノコなどを観察するのが大好きなので、
梨木香歩さんの興味関心とは重なるところが多くて、
親しみの持てる内容となっています。

ご自身の病や、お母様の介護の話もあり、しかも調度コロナ禍の真っ最中の出来事。
ご本人にとってはなかなか大変な時期だったと思われますが、
そんな中で淡々と繰り返し流れ行く自然の営みが、
癒やしになっていたのではとご推察します。

 

中で、こんな話がありました。
著者はリスというのはすべてクルミをうまく真っ二つに割って食べると思っていたようなのですが、
そうではなくて、オニグルミのある地域のリスはそれができるけれども、
オニグルミがないところのリスはからを割ることができなくて、食べないというのです。

確かに、クルミがなければ割り方を学習することもなく、
結果、できないということになりますね。
でも、すべてのリスは本能的にそういうことができるはず、
と私も思い込んでいました。

ちなみにうちのご近所のエゾリスは立派にクルミを割って食べます。
かじっているのを見たことがありますし、
キレイに間二つに割れた殻が落ちているのを散見しますので・・・。
こうしたことも、リスにとっては「文化」なのかも知れません。

 

もう一つ。
著者が大阪行きの飛行機から見た地上にはっきりと「前方後円墳」が見えるのに、
感嘆してしまう、ということ。
でも、他の乗客は特別驚いているようではない。
確かに当たり前のことではあるけれど、
本当に地図と同じ形のものであることに感動し、嬉しくなってしまう・・・
という気持ち、私にも分ります。
実は私も、空の上からその前方後円墳を見たことがあって、
本当に地図と同じ形であることに驚き、
そしてこれを見たことがちょっと得をしたような気分になったことがあります・・・。
他の乗客の方々は、もう何度も見たことがあったのか
それとも、そもそも窓の外など見ていないのか、静かなものでしたが・・・。

 

同じく、著者が初めて北海道に来たときに、
函館上空から五稜郭がくっきりと地図と同じ形に見えて、感動したのだとか。
それが、河合隼雄さんと同行していた時、というのでピンと来たのですが、
それは多分、著者が「児童文学ファンタジー大賞」の授賞式出席のために
小樽に赴いたときのことではないでしょうか。
梨木香歩さんの「裏庭」が1995年第1回ファンタジー大賞を受賞しています。

なにかと、共通点の見えることが多くて、
勝手ながらご縁を感じてしまった次第。

<図書館蔵書にて>

「歌わないキビタキ 山庭の自然史」梨木香歩 毎日新聞出版

満足度★★★★☆



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