映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

僕らの世界が交わるまで

2025年02月22日 | 映画(は行)

結局は似たもの親子

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DV被害にあった人々のためのシェルターを運営する母・エヴリン(ジュリアン・ムーア)。
そしてネットのライブ配信で人気を集める高校生の息子・ジギー(フィン・ウルフハード)。
これは、このわかり合えない2人の物語。

母、エヴリンはその仕事から分かるとおり、
社会問題に常に目を向けていて、そんな中で自分のできる限りのことをしたいと思う、
言ってみればまっすぐな強い信念を持ち、これまで歩んできた女性。

しかし、最近息子とわかり合えないところで、
シェルターに母と住む高校生男子が妙に気になってしまいます。
彼は母親思いの真面目な子。
エヴリンは彼のために進学先の大学のことまで心配をはじめます。

一方、息子ジギーは自分のフォロワーのことで頭がいっぱいのZ世代。
しかし最近、同じ高校の女の子のことが妙に気になっています。
彼女は頭が良くて、社会問題に興味を持ち、よくその種の集会にも参加し、
友人たちとディスカッションをしています。
そんな話題にはまったくついて行けないジギー・・・。

互いにぜんぜん似ていないと思う母と息子は、
それぞれ無い物ねだりの相手にひかれて暴走し空回り・・・。
そんなところは実はそっくりなのでした。

 

世代間の断絶のストーリーも、
こんな風にちょっぴりユーモアを交えて描かれるとちょっと楽しい。

この家にはちゃんと夫というか父親もいるのですが、
いつもいがみ合う2人のことに口出ししてとばっちりを受けたくないのか、
傍観を決め込んでいるようです。
しかしたった一度怒ったのは、彼の「授賞式」の日に、妻も息子も来てくれなかったこと。
そうやって怒るというよりもすねているお父さん、ちょっとカワイイ。
そして「怒ってるね・・・」と、ここだけは意見が一致した母と息子もステキです。

そして結局2人それぞれの奮闘は、撃沈ということになってしまいますが、
そのことから始まる何かもあるようで・・・。

ステキな物語でした。
・・・と、監督・脚本がジェシー・アイゼンバーグということに今さら気づいて驚き!

 

<Amazonプライムビデオにて>

「僕らの世界が交わるまで」

2022年/アメリカ/88分

監督・脚本:ジェシー・アイゼンバーグ

出演:ジュリアン・ムーア、フィン・ウルフハード、アリーシャ・ボー、
   ジェイ・O・サンダース、ビリー・ブリック

親子の断絶度★★★★☆

満足度★★★★☆


トキワ荘の青春

2025年02月21日 | 映画(た行)

俳優界の「トキワ荘」的作品

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本作、1996年作品ですが、2021年デジタルリマスター版とされたものを拝見しました。

 

手塚治虫をはじめとした日本を代表する漫画家たちが若き日々を過ごし、
東京都豊島区に実在した伝説的アパート「トキワ荘」の日常を描きます。

昭和30年代。
トキワ荘に住む手塚治虫のもとへ、各漫画雑誌の編集者たちが日々通い詰めています。
その向かいの部屋に住む漫画家・寺田ヒロオ(本木雅弘)は、
出版社へ持ち込みを続けています。

やがて、手塚治虫はトキワ荘を去りますが、
入れ替わりにやって来たのが「藤子不二雄」の2人。
引き続き、石ノ森章太郎、赤塚不二夫ら、若き漫画家の卵たちが入居。
寺田を中心に「新漫画党」を結成します。

この頃の漫画を懐かしく思う世代は、多分私あたりが最後なのでは?
今名前をあげたのはその後ますます活躍して、今も名高い方々ですが、
他にもつのだじろうさん、水野英子さんなども出てきて、これは本当に懐かしい。
石ノ森章太郎さんはいまだに私の中では「石森章太郎」さんです。

 

4畳半一間、トイレや台所は共用。
お風呂は銭湯へ。
作中、家賃は3000円と言っていたな。
昭和ですねえ・・・。

さて、夢を追う若い人たちが集まったトキワ荘ですが、
でも誰もが頂点まで上り詰めることができるわけではありません。
挫折し、去って行く者もいるわけで・・・。
そこで寺田ヒロオさんが本作の主人公になっているところに意味があります。

寺田ヒロオさんの漫画はあまりにも優しくきちんとしていて、
子どもたちの人気を集められなかった・・・。
ナンセンスなギャグや、派手で刺激的なストーリーとは無縁・・・。
良心的さが故に、時代の波に乗れなかったというべきなのか。

 

ところで、ほぼ30年前の本作の、出演俳優が興味深い。
当時でもすでに活躍して人気があった、きたろうさん、時任三郎さん、桃井かおりさん。
他に、古田新太さん、生瀬勝久さん、阿部サダヲさん・・・。
その若き日の姿を拝むことができます。
(当時どれだけの知名度を得ていたのか、よく分かりませんけれど・・・)

そしてまた、今の私は存じない方々・・・。
すなわち、本作は俳優界の「トキワ荘」であるのかも。
その後力を付けて売れっ子になっていく人たち。
夢かなわず、去って行った人たち・・・。

そんなことでも、見る価値のある作品だと思います。

 

「トキワ荘の青春」

1996年/日本/110分

監督:市川準

出演:本木雅弘、大森嘉之、古田新太、生瀬勝久、阿部サダヲ、さとうこうじ

青春度★★★★☆

昭和度★★★★★

満足度★★★★☆


劇場版 トリリオンゲーム

2025年02月19日 | 映画(た行)

ロードマップの続き

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2023年テレビドラマ「トリリオンゲーム」の劇場版。

世界NO.1企業の時価総額と同等の資産一兆ドルを稼いで、
この世のすべてを手に入れようとする男の物語です。

主な人物関係は、テレビ版の時と同じ。
テレビ版の続き、オリジナルストーリーとなっています。

様々な事業に挑戦し、予測不能な作戦で成功を重ねてきた
天王寺陽(ハル)(目黒蓮)と、平学(ガク)(佐野勇斗)。
トリリオンゲーム社を日本トップクラスの大企業に成長させました。
そして、破天荒なハルの次なる目標は、日本初のリゾート開発。
瀬戸内海のとある島に壮大なカジノ施設を作ろうというのです。

さてカジノ施設となると、まあ私もそうだけれど実際のところあまり歓迎したくはない・・・。
まあその善し悪しはともかくとして、設置に住民の反対がありそうなことは予見されます。
やんわりとではありますが、
ハルがそういうことを乗り越えていくあたりも描かれていたのは良かった。

 

今回のラスボスとなる世界のカジノ王、ウルフ・リー(石橋凌)は
「信じられるのは金だけだ」と言います。
けれど、ハルには信じられるものがもう一つある。
そこが、彼の強さの秘訣で、本作のキモなのであります。

ハルが、持てるものすべてを賭けた最後の大勝負がなんといっても一番の見所でしょう。
本当に、ドキドキさせられます。
シシド・カフカさんもスゴイ存在感を放っていましたね。
役の上でも、最大のキーパーソン。
シリーズを通した中でも異彩を放っています。
ステキです。

 

相変わらずぐだぐだで、サッパリ進展しないのは、ハルとキリカ(今田美桜)。
予告編にあったキス寸前のシーンの結末は・・・やはり、です。

そしてまた、ガクと凛々(福本莉子)の方も相変わらず
・・・と、思いきや・・・?!

言うまでもなく、目黒蓮さんのアクションシーンはカッコイイ!! 
ただただ、見とれます。

この度めでたくtimeleszの新メンバーとなった原嘉孝さんも出ています(少しだけれど)。

目黒くんと佐野くんも、本作公開前の番宣でコンビで登場することが多く、
一層絆を深めることができたのではないかな? 
私はむしろそういうことで胸を熱くしてしまいました。

テレビドラマのラストで、ハルが2年間姿をくらましていたということになっていたのですが、
その2年間、何をしていたかということが最後に明かされます。
決してカジノの研究をしていたわけではありません。
むしろ、カジノはハルの次なる目標のための手段。
ハルの「夢ノート」も、壮大な夢であふれていそうです。

 

総じてドキドキハラハラ、スケールも大きい・・・ということで、
TVドラマを見ていなかった方も十分楽しめると思います。

 

<シネマフロンティアにて>

「劇場版トリリオンゲーム」

2025年/日本/118分

監督:村尾嘉昭

原作:稲垣理一郎、池上遼一

出演:目黒蓮、佐野勇斗、今田美桜、福本莉子、シシド・カフカ、
   田辺誠一、石橋凌、吉川晃司、原嘉孝

ドキドキハラハラ度★★★★★

満足度★★★★★

※めめ様にただただ見惚れていた私は、映画の善し悪しの判断基準がバグっておりますので、
そこのところお含み置きください・・・。


「変な絵」雨穴

2025年02月17日 | 本(ミステリ)

ミリオンセラーですか・・・

 

 

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シリーズ累計120万部突破のミリオンセラー小説『変な絵』が待望の文庫化!
49ページに及ぶ物語の前日譚『続・変な絵』と『ナゾ解きゲーム』も特別収録!

オカルトサークルに所属する佐々木は、後輩の栗原からとあるブログの存在を教えられる。
そこには、『あなたが犯した罪』という不穏なメッセージとともに、
投稿者の妻”ユキ”が描いた「絵」が掲載されていた――。

9枚の奇妙な絵に秘められた衝撃の真実とは!? 
その謎が解けたとき、すべての事件が一つに繋がる!
今、最も注目を集めるミステリー作家、雨穴が描く、戦慄の国民的スケッチ・ミステリー!

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ミリオンセラー小説「変な絵」の文庫版。

雨穴さんの「変な家」は、映画は見たけれど本は読んでおらず、
正直YouTubeをぼちぼち見たことがあるだけですが、
まあ、気になって一度読んでみようかな、と。

 

私は勝手に本作は短編集なのかと思いながら読んでいたのですが・・・
なんと全体で一つのストーリーで、3世代にわたる因縁の・・・という感じです。

でも言ってはなんだけど、普段あまり本を読まない人たちが多分この本を買ったのでしょうね。
文章は下手ではないけれど、文学ではないな・・・。
陰湿過ぎる内容も、私の好みではなかったです・・・。

まあ、あくまでも好みの問題ですけれど。
あまり書くべきことがありません・・・。

「変な絵」雨穴 双葉文庫

満足度★★☆☆☆


フィガロに恋して

2025年02月15日 | 映画(は行)

オペラ歌手への夢

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私、日頃オペラを聴くような趣味はないものの、
ときおり映画などで聞くオペラはいいものだなあ・・・と思います。

 

ミリーは、ロンドンの金融会社で実力を認められ、昇進を打診されるまでになりました。
しかしミリーは、元々オペラ歌手になりたいという夢を持っていて、
この度仕事をあっさり辞めて、夢を実現するために動き出そうと決心したのです。

そもそもオペラ歌手になるためには、ほとんどの人は若い頃から音楽学校で学ぶものですが、
ミリーはもういい年ですし、オペラを好きなことは間違いがないけれど、全くのドシロウト。
そんな彼女を受け入れて指導してくれそうな人を彼女は探し、やっと見つけたのです。
オペラ教師メーガンはスコットランドの片田舎に住んでいて、
ミリーは指導を受けるためにそちらに赴き、長期滞在することに。
(実はメーガンはお金ほしさで教師を引き受けたのですが・・・)

メーガンの元には、もうひとりオペラの指導を受けるマックスがいて、
ふたりは、オペラ歌手への登竜門である
ザ・シンガー・オブ・レナウンのコンテスト出場を目指し、練習に励みます。

 

ミリーにはロンドンで同居する恋人がいたのですが、
一応彼の応援を得て、スコットランドにやって来ます。
彼はオペラには興味もなく、ミリーの夢を果たそうとする思いも道楽のようなもの・・・
と捉えているようです。

そんな中、ミリーとマックスは次第に心を寄せて行くに違いない・・・というのが物語の常道ですので、
まあ、やはりそのようになっていきますね。

 

このスコットランドの田舎の風景がなんともステキです。
村でたった一軒の旅館も兼ねるパブ。
そこに滞在するミリーは、少しずつパブに訪れる村人たちと親しくなって、
応援されるようになっていきます。
まあ、ほとんど変わったことの起こらない退屈な村で、
このような客人は好奇心のマトですよね。

マックスは、オペラの力量も技術も人並み以上なのだけれど
「情感」がないなどと評されていて、
だからほら、ミリーを恋するというところでその叙情性を身につけていくわけです。

しかしその恋は一朝一夕ではならず・・・。
長期熟成で行くところがまた気に入りました。

ステキなストーリーでした。

 

<Amazonプライムビデオにて>

「フィガロに恋して」

2020年/オーストラリア・アメリカ・イギリス/104分

監督:ベン・リューイン

出演:ダニエル・マクドナルド、ヒュー・スキナー、シャザド・ラティフ、
   ビッキー・ペッパーダイン、レベッカ・ベンソン、ジョアンナ・ラムレイ

音楽性★★★★☆

ラブストーリー度★★★☆☆

満足度★★★★☆