映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

エイリアン ロムルス

2024年09月10日 | 映画(あ行)

来るぞ、来るぞ・・・

* * * * * * * * * * * *

リドリー・スコット監督1979年「エイリアン」のその後を舞台として、
20年後の出来事を描きます。

 

親の代に移住した惑星で、過酷な採掘作業につく若者たち。
このままでは先の人生の希望も何もありません。
ある時、6人の若者たちが廃船となった宇宙ステーション「ロムルス」を発見。
その船と装置を入手して、憧れの惑星ユヴァーガを目指そうと相談がまとまります。

そして、いよいよロムルスに到着して船内の探索を始めますが、
しかしそこでは恐怖の生命体・エイリアンが待ち受けていたのでした・・・。

エイリアンの血液はすべての物質を溶かすほど強力な酸性で、
うかつに攻撃を仕掛けて血を流そうものなら、船体に穴があいて、
宇宙に放り出されることになる・・・。
ということでろくに闘う手段もなく、逃げ場のない宇宙空間で
次々に襲い来るエイリアンに1人また1人と犠牲になっていく・・・。

男女を含めた6名の若者たちなのですが、
やはりといいますが一作目「エイリアン」からのお約束のように、
結局は1人の女性・レインがエイリアンと闘うことになるのです。
いまだに忘れられない、あのリプリーのりりしさ・・・。

さて、「エイリアン」が象徴するものとして、次のような解釈があるのです。
(内田樹氏の受け売り)

 

エイリアン=女性を妊娠させ自己複製を作らせようとする男性の欲望の形象化したもの。
そしてつまり、女性から見れば、
男性のエゴイスティックな自己複製欲望に屈服することの嫌悪と恐怖を表している。

 

このような視点から見ると本作はどうなのか、といえば・・・。
うーん、まあやはり、「エイリアン」の成り立ちとして
フェミニズム的思想を含んではいるのでしょうけれど、それほど強くは感じません。

むしろ作中の、人生の行き場を失い閉塞感にあえぐ若者たち、というところが
現代の若者たちの状況を反映しているといえそうです。
男女がどうこうということではなくて、自由を求めてあえぐ若者たちを、
さらに阻む有象無象のものたち・・・。

そういえばこの中に妊娠している女性がいて、
そのなりゆきにとてもいや~な予感がしてしまうのですが・・・、
まあやはり、でした。

詳しくは言えませんが、これらのことはつまり、
人類の進歩につながるはずの科学技術が、結局は不幸へとつながっていくということなのかも。

そしてまた、「エイリアン」ではこれも定番となっている「アンドロイド」の存在。

本作にも当初からアンディという一体のアンドロイドが登場します。
それはレインの弟ということになっているのですが、
実際は拾われてきたアンドロイド。
どこかIC回路に破損があるらしく、本来はずば抜けた知能と力があるはずが、
まったくか弱い存在となってしまっています。
しかし、ロムルスに身体が破損しているアンドロイドが一体あり、
その回路をアンディにはめ込むことで、アンディは生まれ変わります。
・・・が、しかしそれは元のアンドロイドが持っていた
恐ろしい「使命」をアンディが受け継ぐことでもあった・・・。

 

感情がないアンドロイドは、当初設定された己の使命が第一。
彼らは人々が思っているように人の幸福のためにあるものではない。
AIというものの本質をそこに見るようで、ちょっと恐いですね。

 

結局人類が追い求めてきた科学技術の進歩が、今は逆に若者に閉塞感を生み、
人類に不幸をもたらし始めている・・・
そんなことを言っているのかも知れません。

 

 

・・・とまあ、色々書いてはみましたが、作品としてはお化け屋敷探検みたいなもので、
とても「エイリアン」作品当初と同じ衝撃を感じるものではありません。
いつまでもエイリアン作品を作り続ける必要があるのかな?と思ってしまいます。

 

<TOHOシネマズ札幌にて>

「エイリアン ロムルス」

2024年/アメリカ/119分

監督:フェデ・アルバレス

出演:ケイリー・スピーニー、デビッド・ジョンソン、アーチー・ルノー、イザベラ・メルヒド

 

お化け屋敷度★★★★★

満足度★★★☆☆