映画と本の『たんぽぽ館』

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不都合な理想の夫婦

2022年09月30日 | 映画(は行)

虚飾と野望に満ちた男

* * * * * * * * * * * *

1986年。
ニューヨークで貿易商を営むイギリス人のローリー(ジュード・ロウ)。
アメリカ人の妻アリソン(キャリー・クーン)と娘、息子、4人で幸せに暮らしています。
そしてローリーは大金を稼ぐ夢を追って、家族とともにロンドンへ移住。
郊外に豪邸を借り、息子を名門校に編入させ、
妻には広い土地に馬小屋を建てようと言う・・・
まるで、アメリカンドリームの凱旋者のような豪華さ。
しかしその実ローリーはすでに預金も底を突いて、ほとんど無一文同様になっていたのです・・・。
新しい仕事もうまくいかず、次第に崩壊してゆく家族・・・。

ローリーがアメリカの暮らしに満足していれば、
一応の幸福は得られていたはずなのに。
ローリーは異常に虚飾と野望に満ちた男なのでした。

というのも、彼の成長途上の暮らしに問題があったようではあるのですが、
それだって受け止め方は人それぞれ。
一段と堅実な性格になってもおかしくはないのです。
けれど彼は自分を人より優位に見せたくて、
お金があるフリ、何でも知っているフリ、仕事ができるフリ・・・
そんなことばかり。

そんな夫のことを分かっているアリソンは、
自分が稼いだお金を夫に見つからないよう隠すようにしているのです。
彼女は乗馬教室を開いていたのですが、アメリカから輸送してきた愛馬は突然死。
思えばこの馬の死が、壊れ行く家庭を象徴していたのかも知れません。
ついにはアリソンは近所の農園の家畜の世話をして稼ぐことにします。
豪邸に住んで、外出の時には豪華な毛皮をまとっているというのに。

両親の言い争いを耳にした高校生の娘(実はアリソンの連れ子)は、
すっかりぐれて自宅に悪い仲間を引き入れて麻薬パーティを開いてみたりする。
小学生の息子(ローリーの実子)はこの古くてだだっ広い家が恐い(分かります!)といい、
学校ではいじめられる・・・。

この移住は何もかもが失敗なのです。
冒頭で描かれた、家族4人の幸せそうな風景は一体何だったのだろう・・・。

いやいやいや・・・、もっとこじんまりしたアパートで普通に暮らして、
普通に仕事していれば何のことはなかったはず。
愚かしい男の破滅が家族をも崩壊させてしまうというのは、なんとも理不尽で切ない。

しかし、一通りどん底気分を味わったあとの結末が案外いいのです。
彼らは当たり前のことにようやく気づいたのかも知れません・・・。

しかし、あんな屋敷には私は絶対住みたくありません。
夜なんかマジで恐いし、ハウスキーパーがいなければ、
一部屋の掃除だけでもものすごく時間がかかりそう・・・。
ムリ、ムリ・・・。

 

<Amazon prime videoにて>

「不都合な理想の夫婦」

2019年/イギリス/107分

監督:ショーン・ダーキン

出演:ジュード・ロウ、キャリー・クーン、チャーリー・ショットウェル、ウーナ・ローシュ

 

虚飾度★★★★★

男の哀れ度★★★★☆

満足度★★★.5

 



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