陸上競技に打ち込んできたが、アキレス腱のけがで夢をあきらめざるを得なくなった、高校2年生の橘あきら。
放心状態でファミレスにいた彼女は、店長の近藤正己から優しい言葉を掛けてもらう。それがきっかけで、その店でアルバイトを始める。バツイチ子持ちで、かつ28歳も年上だと知りながら、彼女は近藤に心惹(ひ)かれていく。日増しに大きくなる思いを抑え切れなくなったあきらは、ついに近藤に自分の気持ちを伝える。
封切り2日目、前日の遠足で多少疲れていたけど、そんなことはどうでもいい。いつものMovixさいたまに見に行きました。
今年小松菜奈さんの映画を見るのは2本目です。
+++++ +++++
相当あり得ない設定か。
絶対あり得ない設定か。
17歳の女子高生がバイト先の店長を好きになってしまう。好きになっていることに気づいてしまう。そして、自分の気持ちを隠しきれず、伝えてしまう。伝えられた方は、やっぱり困るよな。
小松さん演じる女子高生「橘あきら」は、可愛くて魅力的だと思う。そんな子に「好きです」と言われて、どきっとしない男はいない。でも、店長は一生懸命距離を置こうとする。法律論で見ても、社会通念で見ても、距離を置こうとするのは、当たり前である。いじらしいくらいがんばる。
橘あきら(小松菜奈さん)
大好きな陸上競技ができなくなった喪失感、それを消すために始めたアルバイト。でも、日々のバイト生活の中で、店長に惹かれている自分に気づく。
学校は何か目的を持つこともできず、部活動からは距離を置き、過ごしている。店長への思いはどんどん膨らんでいく。気持ちが揺れる。
店長・近藤正己(大泉洋さん)
さえない店長の彼が、大まじめに17歳の高校生からの思いに対応している。応えているのではなく、対峙している感じである。
+++++ +++++
小松菜奈さんの作品を見るのは、これで3本目。本作では「坂道のアポロン」とは、また違う女子高生を演じている。どの役を演じても、その役になれる。いい役者さんだなと思う。
年齢的に見て高校生役はこれが最後かな。映画を見終えて、そんなことを考えた。
大泉洋さんのお芝居をちゃんと見たことはない。彼の演じる店長は、大学時代文芸(小説家)の道を目指し、挫折。結婚生活もうまくいかず、ファミレスの店長をしながら、小さなアパートで本に囲まれ(本だけに囲まれ)て生活している。
あきらの真っ直ぐな思いは理解しつつも、「必死に」距離を保とうとしている。その切なさ、誠実さがよく出ていた。
あきらはあきらなりの感性、思いで突っ走る。店長は大人としての分別、優しさで対応する。あきらはケガによる挫折、立ち止まり。店長は友人(大学時代の仲間)のベストセラー作家・九条ちひろへのジェラシー・嫉妬により、生きることに難しさを感じ、前に進めない。そんな二人が出会い、次のステップに向けてのスタートを切るまでのものがたり。「雨」はその立ち止まりの期間を象徴している。
ラストで再スタートを切った二人が再会する。あきらが店長にあることを言うシーンがある。とても印象に残った。
+++++ +++++
二人を取り巻く人々。何だかみんないい人たち。
あきらの母親役の吉田羊さん、店長の友人・九条ちひろ役のTEAM NACS戸次重幸さん。ファミレスのベテラン店員役の濱田マリさん。芸達者で存在感のある人たちだ。
店長と九条の居酒屋での掛け合いは、楽しい。
陸上部の部長喜屋武はるか役の清野菜名(せいのなな)さん。この人は初めて見た女優さん。あきらをライバル視する倉田みずき役の山本舞香さん。
清野さんは、いい人を見つけた感じ。山本さんは、エンドロールを見るまで気がつきませんでした。スクリーンで見るのは暗殺教室以来だけど、まだ、高校生役ができるんだと思いました。
+++++ +++++
昨年見た、「先生! 、、、好きになってもいいですか?」とは違うけど、どうにか最終的にHappy Endingの作品。不思議な爽快感、もっと砕けたいい方をすると、さわやか感のある終わり方です。
生徒にすすめてみようかな。あと、テーマソング「フロントメモリー」、僕はかなりいい曲だと思います。