昭和111年は存在しない。昭和11年が1936年、100を加えると2036年だから、17年後の世界が舞台と言うことになる。ただし、「四大医療革命から半世紀」らしいので、体制スタートは1986年になる。パラレルワールドのものがたりだ。
作品紹介から連想するのは、伊藤計劃の「ハーモニー」である。高度な医療経済社会が築かれている未来。社会の構成員は公共のリソースとみなされ、社会のために健康・幸福であることを求められる。WatchMeというナノマシンが、健康を恒常的に体内監視するシステムが存在している。
ハーモニーではWatchMeのシステムから離れた世界が存在する。昭和111年の東京にも大気汚染と貧困の広がる環状16号線外アウトサイド、特権階級が住まう環状7号線内インサイドという場所がある。環状16号線は(おそらく)国道16号線である。本作も「太陽」や「エリジウム」で描き出されたユートピアとディストピアの対比、何をどうがんばろうとも、何も変わらないような絶対差をきっちり描き出している。MOVIXの作品紹介を読み、作品ウェブサイトを見ると、細かいことは違うようだが、そんな風に思えた。
公開2日目の11月30日見に出かけた。
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見おわって感じたこと。
SF作品として~正直な感想を書くと~統一感のようなものがないように思えた。
見る前に考えた「ハーモニー」のような、社会システムに強いられているとはいえ、明るい未来はそこにはなかった。1日19時間という長時間労働に支えられた経済発展、防塵マスクをして歩く人々。疲労に支配されている人々。そんな社会でS.H.E.L.L.体制から外れると、「ロスト化」して怪物になる。このあたりから少々雰囲気が変化した。僕はロスト化は社会システムからの離脱であり、普通の人間(120歳の寿命が保障されない人間)になることだと考えていた。全く違った。
ロスト化した元人間は、子どものことテレビで見た「デビルマン」のデーモンのように見えた。
絵があの映画に似すぎている。
本作はポリゴン・ピクチュアズによる。同社はアニメの「ゴジラ三部作」の製作会社である。ここまで主人公の顔、雰囲気が似過ぎているとよろしくない。
見に行く前に考えていた本作の世界観は「ハーモニー」でも「太陽」でも「エリジウム」でもなかった。
じゃあ何かというと、攻殻機動隊でもない。ラスト近くに登場するものは、まさに巨大怪獣だ。主人公の心の闇はエヴァのようにも見えた。全体的にいろいろな先行作品の何かが見え隠れしてしまう。そんな作品でした。