吸収合併の登記や資本金の額の減少の登記等の申請において,債権者保護手続のための公告及び催告を行ったところ異議を述べた債権者がなかった場合の登記実務の取扱いは,次のとおりである。
「異議を述べた債権者がない場合には,申請書にその旨を記載するか,代表者がその旨を証明した上申書を添付すれば足りる」(松井信憲「商業登記ハンドブック(第3版)553頁,「新版 商業登記法逐条解説」(日本加除出版)493頁)。
この点,遡ると,古くは,黒木学「資本減少の手続と諸問題(3・完)」(旬刊商事法務1976年11月15日号15頁)にも同旨の解説がみられる。
また,荒木一則「【実務相談室】株式会社から有限会社への組織変更の登記の申請書に添付すべき債権者保護手続に関する書面」(旬刊商事法務1993年4月25日号41頁)においても,
「ところで、異議申立期間内に債権者の異議の申立てがない場合については、特にその取扱いについて直接規定したものはありませんので、組織変更の登記の申請をする際の添付書面の要否が問題となります。この場合において、異議申立ての公告をしたことを証する書面のみが添付されたため、登記の申請があったときは、異議の申立てがなかったものと推測することはできなくはないでしょうが、その扱いをするのでは、債権者が異議を述べた場合にその後の手続を履践したことを証するため前記のような書面を添付させることが無意味になってしまいますから、何らかの形でそのことが明らかにされなければなりません。そこで、登記申請書に「異議を述べた債権者はない」旨を記載し、それを証する書面として、公告および催告をした結果、所定の期間内に異議を述べる債権者はなかった旨の会社代表者作成の上申書を請求書(※ママ)に添付するのが、相当であると考えます(なお、上申書ではなく会社が債権者から異議がないという承諾書を徴しているとして、これを登記申請書に添付してきた場合には、それでも差し支えないという扱いがされると考えられます)。」
と述べられている。
理由付けとしては,債権者が異議を述べた場合にその後の手続を履践したことを証する書面を添付させることとの平仄から,何らかの形で「異議を述べた債権者はない」ことが明らかにされなければならないということである。
旧来,司法書士が申請代理を行う場合においても,「申請書にその旨を記載する」のみで上申書を添付しない方法が通用していたらしく,また上申書が法定の添付書面ではないことを理由として,その方法に拘る方々が少なからずあるようであるが,望ましい在り方としては,上記「実務相談室」の解説のとおり,「登記申請書に「異議を述べた債権者はない」旨を記載し,それを証する書面として,公告および催告をした結果,所定の期間内に異議を述べる債権者はなかった旨の会社代表者作成の上申書を申請書に添付するのが,相当であると考えるべきであろう。
拙編著「会社合併の理論・実務と書式(第3版)」(民事法研究会)498頁においても,そのように解説している。
http://www.minjiho.com/shopdetail/000000000863/
確かに,上申書は,法定の添付書面ではないかもしれないが,司法書士としても,実体関係の把握(司法書士倫理第57条)として,「異議を述べた債権者がない」ことを確認する必要があり,そのために会社代表者作成の上申書の提出を受け,これを申請書に添付するのは,手堅い執務姿勢といえるであろう。
「異議を述べた債権者がない場合には,申請書にその旨を記載するか,代表者がその旨を証明した上申書を添付すれば足りる」(松井信憲「商業登記ハンドブック(第3版)553頁,「新版 商業登記法逐条解説」(日本加除出版)493頁)。
この点,遡ると,古くは,黒木学「資本減少の手続と諸問題(3・完)」(旬刊商事法務1976年11月15日号15頁)にも同旨の解説がみられる。
また,荒木一則「【実務相談室】株式会社から有限会社への組織変更の登記の申請書に添付すべき債権者保護手続に関する書面」(旬刊商事法務1993年4月25日号41頁)においても,
「ところで、異議申立期間内に債権者の異議の申立てがない場合については、特にその取扱いについて直接規定したものはありませんので、組織変更の登記の申請をする際の添付書面の要否が問題となります。この場合において、異議申立ての公告をしたことを証する書面のみが添付されたため、登記の申請があったときは、異議の申立てがなかったものと推測することはできなくはないでしょうが、その扱いをするのでは、債権者が異議を述べた場合にその後の手続を履践したことを証するため前記のような書面を添付させることが無意味になってしまいますから、何らかの形でそのことが明らかにされなければなりません。そこで、登記申請書に「異議を述べた債権者はない」旨を記載し、それを証する書面として、公告および催告をした結果、所定の期間内に異議を述べる債権者はなかった旨の会社代表者作成の上申書を請求書(※ママ)に添付するのが、相当であると考えます(なお、上申書ではなく会社が債権者から異議がないという承諾書を徴しているとして、これを登記申請書に添付してきた場合には、それでも差し支えないという扱いがされると考えられます)。」
と述べられている。
理由付けとしては,債権者が異議を述べた場合にその後の手続を履践したことを証する書面を添付させることとの平仄から,何らかの形で「異議を述べた債権者はない」ことが明らかにされなければならないということである。
旧来,司法書士が申請代理を行う場合においても,「申請書にその旨を記載する」のみで上申書を添付しない方法が通用していたらしく,また上申書が法定の添付書面ではないことを理由として,その方法に拘る方々が少なからずあるようであるが,望ましい在り方としては,上記「実務相談室」の解説のとおり,「登記申請書に「異議を述べた債権者はない」旨を記載し,それを証する書面として,公告および催告をした結果,所定の期間内に異議を述べる債権者はなかった旨の会社代表者作成の上申書を申請書に添付するのが,相当であると考えるべきであろう。
拙編著「会社合併の理論・実務と書式(第3版)」(民事法研究会)498頁においても,そのように解説している。
http://www.minjiho.com/shopdetail/000000000863/
確かに,上申書は,法定の添付書面ではないかもしれないが,司法書士としても,実体関係の把握(司法書士倫理第57条)として,「異議を述べた債権者がない」ことを確認する必要があり,そのために会社代表者作成の上申書の提出を受け,これを申請書に添付するのは,手堅い執務姿勢といえるであろう。