書店で桂望実の名前を見つけた時、即買いを決めたのが「run!run!run!」。
桂望実といえば「Lady,GO!」「県庁の星」などといった痛快な物語が特徴だと思っていたが、「run!run!run!」はかなり違ったドラマだった。
正直、この作家の初めて読んだ作品がこの小説だったら、たぶん他の作品に目を通すことはなかったかも知れない。
そんな気分にさせる異色の小説だった。
まず、主人公の極端な利己主義に不快感を感じてしまう。
果たしてこのような人物がいるのだろうか、とさえ感じてしまうのだ。
その主人公の極端な個性が、ある意味、この年齢の少年あるいは青年であれば持ち得る自信に基づくものなのかも知れない。
しかし、協調性のまったくないその姿は「付き合いたくないヤツ」そのままで、そんな人物が主人公のドラマに興味が湧く筈が無い。
諦めずに私に最後まで読ませたのは、やはり桂望実だからで、その期待は裏切るところまでいかなかった。
結果的には、主人公のその後が主人公自身によって語られることでこの物語は終了するわけだが、それまでの長丁場はいささか厳しいものがあったことは確かだ。
この小説の欠点は、他の桂望実の作品ほどには人物が生き生きと描かれておらず、物足りなさが残ってしまうところにあるのだと思う。
グイグイ読み進んでいけるところは他の作品と共通しているが、いつもならその読ませる力は冒頭からググッと来るのだが、中盤を過ぎないとそのパワーが現れてこないのも辛いところだ。
「run!run!run!」
ちょっと違った物語なのであった。
~「run!run!run!」桂望実著 文春文庫~
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