<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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あるデザイン雑誌のグラビアに代官山にオープンした蔦屋書店が紹介されていて、

「あのTSUTAYAが蔦屋書店。ちょっと見てみたいな」

ということで、行ってきたした代官山。

大阪人の私としては「東京にあるものはたいてい大阪にもあるもんや」と思っていた。
当然、TDLやスカイツリーはないけれでも、それも無理すればUSJや通天閣で代用することも可能であろう。
しかし、代官山の雰囲気と比較するところがないのが、ちょっと悔しいと思っている。

ブティックやデザインショップ、家具屋、レストランが並び、ちょっと路地へ入ると高級住宅街。
外国の大使館があったりして洗練された雰囲気が漂っている。
というのが代官山だが、大阪で同様のところといえば南堀江や新町といったところだが、ここらあたりには高級住宅街は無いし、大阪だから領事館はあっても大使館はない。
最も大きな相違はなんといっても地形だろう。

大阪と東京の地形はまったく異なっており、その地形が双方の町の雰囲気形成に大きな違いを生み出していると私は常々考えている。
大阪は太古より東西に連なる上町台地は挟んで西に大阪湾、東に河内湖という水辺を持っていて、それが仁徳天皇の時代頃から埋め立てが始まり今の「フラット」な大阪ができあがった。
一方東京は徳川家康が江戸を開拓するまでは、山、大地、川、森、などでできた、いわゆる武蔵野で「アップダウン」のある地形である。

このため、大阪は何を作っても上町台地、今の大阪城や天王寺公園のあるあたりを除き、ほとんどが平地。
坂もなければ谷もない、という地形で正直面白みにかける。
その点東京はアップダウンが結構きつい。
下町の本所や深川あたりを除いて都心部は山あり谷ありで、例えば渋谷駅から周囲に伸びる道は道玄坂をはじめすべて坂道である。
このような傾斜のついたところには建築デザイン的に結構綺麗な建物が形成さて、フラットな街よりも綺麗に見える。
神戸しかり、長崎しかり、サンフランシスコしかり、リスボンしかり。
なのだ。
そこへ行くと大阪は、バンコクしかり、サイゴンしかり、ヤンゴンしかり、の違いがある。

代官山も地名のとおり山の傾斜を利用した街並みが形成され、しかも一種独特の「外国に来てしまった」というようなコンセプトの街のため、非常に洗練されて、
「ああ、これは大阪にはないわな」
ということになる。
大阪でも帝塚山あたりを開発したらこうなるのだと思うのだが、そうなると東京の真似しゴンボになってしまうため大阪人の気質が許さない。
一般に大阪で開発された文化技術は関西弁やコテコテ要素をろ過して東京に導入されるのが普通だが、東京で開発されたものが大阪に来て成功することはまず、ない。

ということで、蔦屋書店。
TSUTAYAとは大きく異るコンセプトで、CCCの勇気ある出店は大いに讃えなければならないと思った。
店舗自体は2階建て。
敷地内に3棟ほどの同じデザインの建物が並んでいて、それぞれの2階を渡り廊下でつないでいる。
1階は総ガラス張り。
代官山駅方面から歩くと、まず、蔦屋書店の1階にガラス張りの窓の向こうにダークブラウンの木製書架があり、まるで図書館のような蔦屋書店が目に飛び込んでくる。
しかも、並んでいる書籍が洋書なのだ。
それもかなりの冊数が置かれており、

「おお、ここはTSUTAYAではなくて丸善か」

と、思えるくらいにTSUTAYAではない。

尤も、今時洋書を書店で買う人がいるんだろうか、と私は思ったりする。洋書はアマゾンのほうが断然安くて種類が豊富。納期も分かりやすくて使いやすい。
そんな時代に、大きな規模の洋書コーナーもまた勇気ある店づくりだと思った。

もちろん一般書籍もたくさん置かれているのだが、雰囲気は図書館で書店という感覚を失ってしまいそうだ。
スタバも入店しており、書店とコラボ。
難波のジュンク堂書店のように書籍を手に取り、カフェを楽しむコンセプトを採用している。
もちろん雰囲気はこちらのほうが優れているが、正直混みすぎ。

レンタルCDやDVDは2階に。
しかし2階の最も注目すべきところは3棟ならんだ真ん中の建物にあるレストランで、ここはかなりの高級志向で書店のカフェとしては他の大きく引き離しているものがある。
まるでインターコンチネンタルホテルやリッツ・カールトンのラウンジ思わせる豪華さだ。
とりあえずここでコーヒーでも、と思って案内されたソファに座ってみたが、ゆったりしていて昼寝ができそうである。
ただ、雰囲気が超豪華なため昼寝をするには若干緊張感が高すぎるとおもわれる。

周囲を見渡せば、設計事務所やデザイナー、編集者と思われるファッションセンスのいい方々が「東京弁」あるいは「標準語」で話をしている。
ここで大阪弁、なかでもアクのきつい泉州弁や河内弁で話すと、なんとなく店のコンセプトを潰してしまいそうで、私なんかは無理にして大阪弁を話したい衝動にかられるぐらいの雰囲気なのだ。

「精算はテーブルでお済ましください」

と各テーブルに案内が置かれている。
ここのメニューはiPadで検索するようになっていて、家具も高級、雰囲気も高級、にも関わらず「精算は....」とお客様を田舎者扱いのような感じである。

とはいえ、なかなかお目にかかれないコンセプト店舗。
蔦屋書店。
結局、コーヒーとケーキのセットを食べただけで何も買わずに出たのであったが、インテリアであれ品揃えであれ、かなり見応えのあるところなのであった。


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