エボラ出血熱が最初にみつかったのは1970年代。
だから1980年代から世界中に蔓延したエイズよりも以前に発見されている歴史の古い感染症だ。
なぜエイズのように今日まで世界中に蔓延しなかったかというと、感染した人は数日以内にほぼ必ず死亡するので、移動して他の地域に広げることができなかったからだという。
それほど恐ろしいエボラ出血熱が西アフリカを中心に世界中に広まろうとしている。
雑誌や新聞は私達読者の不安を煽って部数を延ばすことに抜け目はないが、実際のところ日本までやってくるのだろうか。
先週の羽田空港での日系カナダ人が「エボラの疑いあり」で緊張が走ったのは多くの知る所。
検査の結果は陰性だったので、事なきを得たわけだが、もし陽性だったら今週末の連休のニュースは「エボラウィルス日本上陸!」で大騒ぎになっていただろう。
エボラ出血熱の恐ろしさはその感染力と発病してから死亡に至るまでの短時間にある。
わずか数個のウィルスにふれるだけで感染し、一度発症すると3日程度で死に至る。
死に方は残酷で、内蔵や眼球、鼻や喉なのどの粘膜から出血し、発熱、嘔吐、下血などを繰り返し半数以上の人が亡くなるという。
実に恐ろしい病気だ。
先進国ではあまり重要な病気ではなかったことから治療方法は見つかっておらず、効能のある薬も未だテスト研究中でもある。
未知の感染症であるだけに、実に気味悪ことこの上ない。
だから患者だけではなく、その患者の看護に従事する医療関係者も非常に危険な環境で戦わなければならないのだ。
カナダ政府は先週からエボラ出血熱蔓延地域の国民に対してのビザ発給を一時停止。
米国はエボラ患者の治療にあたった医療関係者を最低3週間の外出禁止令を発令した。
しごく尤もなことだと思った。
訳の分からない伝染病は隔離するというのが最も安全な管理方法である。
余談ながら月へ行ったアポロの宇宙飛行士たちもある一定期間隔離されていたことは有名な話だ。
なぜなら月には何がいるのかわからなかったからだが、いまだから笑えるだけで宇宙という神秘の世界では人類の英知などたかが知れているので防御のための有効な方法だったに違いない。
このアメリカの方法にアメリカ国内で異議が出た。
医療従事者を自宅待機させるのは人権に反するのではないか、という毎度おなじみにの人権音頭だ。
問題になっている人は女性看護師で、
「検査で陰性結果が出たから外出してもいいじゃない」
と行政に半期を翻しボーイフレンドと買い物に出かけてしまったという。
警察は何か不測の事態があってはいけないと彼女をチェイス。
しかし裁判所も自宅軟禁は人権に反すると彼女の自由を認めてしまった。
考えてみると彼女の医療従事者としての倫理はどうなっているのだろう。
エボラを未知の病と考えた場合、自分を経由して他人に感染したらとはプロとして考えなかったのだろうか。
ナイチンゲールの精神はないのだろうか。
裁判所も彼女の人権を言う前に、その他大勢の周辺住民の生命は無視していいのだろうか。
アメリカはただ一人の人権が蹂躙されても行けない国である。
と、いう人もいるが、果たして建前だけで国が成り立つのか、当のアメリカ人が一番良く知ってると思う。
沢山の疑問が交錯するプロの看護師の行動なのであった。
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