大阪市立天王寺動物園に行ったことのある人なら一度は歩いたことがあるだろう。
JR天王寺駅から天王寺公園を抜けて大阪市立美術館に出ると、眼下に動物園、その先に阪神高速道路松原線を挟んで通天閣や新世界の町並みが望まれる。
この市立美術館正面には広い石の階段があり動物園の入り口方向に通じている。
よく記念写真を写すところだ。
この階段の部分。
見晴らしのいい高台と下の平地部分との境目の「崖」がいわゆる「上町断層」。
大阪で最も注意を払う必要のある活断層だ。
阪神大震災以来、関西人も地震に敏感になっていて近場の活断層がどこにあるのか、大阪湾を津波が襲った時は何処まで逃げればいいのかなどを真剣に考えるようになった。
私の住むエリアは泉州地区のどちらかというと海に近いほうだ。
ここは古墳時代に天皇家や有力豪族の墳墓が数多く作られたことから安定した岩盤で海からすぐになだらかな斜面になっていて災害にも強い地形になっている。
とはいえ活断層は自宅から1kmほどのところにひとつあり、これが動くと少しやっかいなので警戒することも大切だ。
上町断層は大阪を南北に走る地域最大の断層。
北は難波宮跡や大阪城あたりから東横堀川の東側・いわゆる大阪のビジネス街船場地域の東に沿って南下し、大坂の陣で有名な真田山、先述の天王寺公園、高級住宅街の帝塚山、などを経て堺市まで至るやっかいな存在だ。
付近には大阪城や日本一の高層ビル・あべのアルカスなどがあり実際に地震が起こった時の事態が憂慮されている。
しかし、世の中知らないのか知っているのか。
この活断層の上に住宅があった。
一昨日、大阪西成区の崖っぷちにある住宅が突如崩落。
大きなニュースになっている。
たまたま家のきしむ音に驚いて住人は避難していたから怪我人はでなかった。
しかし住めなくなった家が何軒かできてしまった。
場所をテレビで見ていて「もしかしたら」と思いグーグル・アースで検索してみたところ、間違いなくここの「崖」は天王寺公園と動物園の間にある崖の繋がり。
いわゆる上町断層で、普通こういう場所に家を建てることはない。
あの市立美術館前の階段から南に2kmも離れていない場所だった。
もしかすると知らずに建てたか、売った会社は知っていても黙っていたか。
そして、その活断層のゆるい斜面に下で老人ホームを建設していた会社も、それを知らなかったのか。
断層の横で大きな振動を立てて工事をしたら、もしかすると、と思わなかったのか。
こんなことぐらい今なら中学生でもわかるかもしれない地学の項目だ。
なんでも無い場所が実はとんでもない場所であることはもしかすると少なくない事実なのかもしれない。