樹影の夏を、
secret talk77 安穏act.14 ―dead of night
白い花さざめく梢、風やわらかい。
ゆれる木洩日に草花ひらく、涼やかな香が頬ふれる。
そんな玄関への道さそう静謐、そっと英二は息ついた。
「…、」
呼吸そっと薫る、ほろ苦い馥郁やわらかに涼む。
緑あふれる静寂が沁みる、きらめく花しずかに午後を揺らめく。
ひそやかな香ふかく息つける、ただ穏やかな空気に頭上を仰いだ。
「すごい木だな、湯原が生まれた時からあった?」
はるかな頭上、おおらかな天蓋が青い。
のびやかな大樹のもと静かな声が言った。
「…古い家だから、」
ぼそり、短い返事。
けれど冷たくはない声に笑いかけた。
「こういう木がある家っていいな、」
すなおな感想の唇そっと青葉が匂う。
残暑の午後、けれど涼やかな静謐が英二を見あげた。
「…宮田のい…」
黒目がちの瞳が問いかけて、その唇が止まる。
何を訊いてくれるのだろう?見つめて、けれど長い睫そっと逸れた。
「…あしもと気を付けて、飛び石がゆるんでる、」
逸らされた視線しずかに歩きだす、その横顔に木洩日が青い。
言いかけ置き去りのままで、訊きたくて飛石を踏んだ。
「なあ湯原?俺のい、ってなに?」
飛石ゆるんでいない、それなら言葉の続きは?
知りたくて並んだ隣、小柄なスーツ姿は言った。
「なにって…いちばん好きな木はなにかなって」
「俺の好きな木?」
訊き返して隣、クセっ毛やさしい黒髪ゆれる。
穏やかに艶めく髪の波、つむじに光の輪やわらかい。
―髪さわりたくなるな、って俺ほんと…どうしよ、
君の髪ふれたい、今。
こんなこと想ったことなかった、けれど今それだけ廻る。
だから不安になる、今夜ここで、君の家で、君との夜どうなるのだろう?
※校正中
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英二23歳side story追伸@第6話 木洩日
secret talk77 安穏act.14 ―dead of night
白い花さざめく梢、風やわらかい。
ゆれる木洩日に草花ひらく、涼やかな香が頬ふれる。
そんな玄関への道さそう静謐、そっと英二は息ついた。
「…、」
呼吸そっと薫る、ほろ苦い馥郁やわらかに涼む。
緑あふれる静寂が沁みる、きらめく花しずかに午後を揺らめく。
ひそやかな香ふかく息つける、ただ穏やかな空気に頭上を仰いだ。
「すごい木だな、湯原が生まれた時からあった?」
はるかな頭上、おおらかな天蓋が青い。
のびやかな大樹のもと静かな声が言った。
「…古い家だから、」
ぼそり、短い返事。
けれど冷たくはない声に笑いかけた。
「こういう木がある家っていいな、」
すなおな感想の唇そっと青葉が匂う。
残暑の午後、けれど涼やかな静謐が英二を見あげた。
「…宮田のい…」
黒目がちの瞳が問いかけて、その唇が止まる。
何を訊いてくれるのだろう?見つめて、けれど長い睫そっと逸れた。
「…あしもと気を付けて、飛び石がゆるんでる、」
逸らされた視線しずかに歩きだす、その横顔に木洩日が青い。
言いかけ置き去りのままで、訊きたくて飛石を踏んだ。
「なあ湯原?俺のい、ってなに?」
飛石ゆるんでいない、それなら言葉の続きは?
知りたくて並んだ隣、小柄なスーツ姿は言った。
「なにって…いちばん好きな木はなにかなって」
「俺の好きな木?」
訊き返して隣、クセっ毛やさしい黒髪ゆれる。
穏やかに艶めく髪の波、つむじに光の輪やわらかい。
―髪さわりたくなるな、って俺ほんと…どうしよ、
君の髪ふれたい、今。
こんなこと想ったことなかった、けれど今それだけ廻る。
だから不安になる、今夜ここで、君の家で、君との夜どうなるのだろう?
※校正中
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