萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

卯月十一日、矢車菊―delicacy

2018-04-11 11:00:20 | 創作短篇:日花物語
窓からの憧憬、
4月11日の誕生花


卯月十一日、矢車菊―delicacy

ゆらり、ほら?窓ゆれる。

「いた、」

見あげる窓に笑って木洩陽きらめく。
瞳まばゆく細めた目もと温かい、麗らかな陽ざしガラスはじく。
透る光の先ただ見つめたくて、細めた視界にダークブラウン揺れた。

「あ、」

かたん、

窓枠ゆっくり古木が軋む、ガラスの反射そっと開く。
ダークブラウンの艶きらり波うって、白い顔ふわり覗いた。

「…、」

繊細な唇ちいさく笑う、でも聞こえない。
何を言ってくれたのだろう?ただ嬉しくて笑いかけた。

「おーい、おはよっ、」

右手いっぱい伸ばし振って、指さき陽に透ける。
透ける朱色きらきら青い空、ひらかれた窓ゆれるダークブラウン微笑んだ。

「はーい、おはよう?」
「うんっ、」

うれしくて笑いかけて、窓ちいさな笑顔おだやかに傾げる。
その頬やわらかに薄紅きれいで、あかるい朝に笑いかけた。

「今朝は元気そうだねーっ、ガッコ行けそう?」

今日はいい天気、体調もいい?
期待と笑いかけて、けれど繊細な唇そっと言った。

「行きたいけど…ごめんね、」

二階の窓ちいさな声が透ける。
声のまま透けそうな瞳が自分を見つめて、そんな年上の少女に笑った。

「僕もねー今日はガッコ行かないんだーっ、だからオジャマしていい?」

きっと忘れているだろうな?
楽しくて笑った空、朝陽うららかな窓そっと明るんだ。

「行かないって…どうして?」

ほら忘れているんだ?
こんな忘れんぼに可笑しくて笑った。

「今日、ガッコの創立記念日だよー卒業して忘れちゃったー?」

先に卒業してしまったひと、だから忘れたのだろうか?
なんだか愉快で見あげる窓、白い繊細な笑顔ほころんだ。

「忘れちゃってた私…たった1年前なのに、おかしいね?」

笑ってくれる繊細な唇、でも透けるような瞳が寂しい。
それでも華奢な首すじ薄紅きれいで、逢いたくて左手を掲げた。

「おみやげ作ったんだよーそっち行っていい?」

笑いかけて左の手、青い花冠きらめく。
どうか喜んでくれる?掲げた花にソプラノ透った。

「きれい、どうしたの?作ってくれたの?」

訊いてくれる瞳きらきら明るむ、喜んでくれている?
まだ着けない高い窓あおいで笑った。

「ばーちゃんに教わって作ったんだーうまくないけどがんばったからっ」

よくみたら不格好、でも花は青色きらめく。
そうして青空まばゆい窓、青い花に笑顔は咲いて?


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矢車菊:ヤグルマギク、花言葉「繊細、優美、上品、優雅」

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