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萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

夏を呼ぶ、雨・時鳥―万葉集×William Wordsworth

2013-05-20 21:32:18 | 文学閑話韻文系
慈雨、きらめくのは



夏を呼ぶ、雨・時鳥―万葉集×William Wordsworth

雨ふる一日だった神奈川です。
昨夜から降り続くまま夕刻、静かな細い雨がやわらかでした。
そんな雨に誘われちゃって帰り道、つい森へ寄った景色をココに載せた感じです。笑

大野らに 小雨被り敷く木の許に 時と依り来ね 我が念ふ人  柿本人麻呂

広大な野原に小雨ふる、
雨の雫鏤めきらめく木の下に、時が来たら籠りに来てよ?
細やかな雨の紗と木蔭に護られて逢瀬を過ごそうよ、ね、私が慕う君、

こんな感じの意味かなって歌です。
イメージに上↑柑橘の雫まとう写真を貼ってみました。
柑橘=立花、立ち佇んで待つ花木って言葉遊びになるし、常緑樹の木下闇はお籠りにちょうど良いなと。笑



かくばかり 雨の雫に霍公鳥 宇の花山に なほ香鳴くらむ  詠み人知らず

こんなに雨が降っている、
それでも雨の雫を透かして霍公鳥の声は聞えてくる。
虚空のもと卯の花咲く山で、香るよう時を呼び鳴くのだろうか?

霍公鳥は「ホトトギス」と読みます。
夏を呼ぶ鳥と言われて「時鳥」「不如帰」また「子規」とも表記します。
ご存知の方も多いでしょうが俳人の正岡子規はホトトギスに自身を擬えてこの雅号を付けました。
ホトトギスは血を吐いても啼いて夏を呼ぶと言われる鳥で、子規は肺病で吐血したことからこの名したそうです。

時鳥が鳴いている山の「宇の花」は「卯の花」です、初夏に咲く白い草花です。
写真はちょっと違う花木ですけど、花の形はコンナ感じなので載せてみました。

卯の花の咲き散る岳ゆ霍公鳥 鳴きてさ渡る 君は聞きつや  詠み人知らず

真白い卯の花こぼれ咲く小高い丘、時鳥が夏を呼ぶよう啼いてゆく。
君はこの声を聴いたろうか、僕が君を恋慕い呼んでること解かってくれている?
もう間近い夏、夏には君に逢いたい、
真白い花散り零れる紗幕へ君を攫って、それから、

時鳥は時告げる鳥だから、恋愛に結ばれる時を告げる鳥って解釈です。
ほんとはコレ、掲載されてる『万葉集』では雑歌に分類されてるんですけどね、
だけど「君」なんて単語があったのでコンナ感じに相聞歌で意訳してみました、笑



Now, while the birds thus sing a joyous song,
And while the young lanmbs bound
As to the tabour’s sound,
To me alone there came a thought of grief:
A timely utterance gave that thought relief,
And I again am strong:
The cataracts blow their trumpets from the steep;
No more shall grief of mine the season wrong;
I hear the Echoes through the mountains throng,
The Winds come to me from the fields of sleep,
And all the earth is gay;

今この時、鳥たちは歓びの歌を謳い
子羊は弾むよう跳び歩く 
小太鼓の響きに合せるように、
私は孤独なまま哀しみに沈んでいたが、
時を得た歌の詞が愁いをほどいて
そして私には、強い心が蘇った 
峻厳な崖ふる滝は、歓びの旋律と響き
この歓びの季節はもう、私の深い哀しみに痛むことはない
連なる山が木霊を廻らす歌が聴こえる、
微睡む野から風は私のもとへ来る、
そして世界の全てが、陽気に笑う

William Wordsworth「Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood」III

鳥の声、滝の水音、山々と涼やかな風。
音声と初夏のイメージが似ているなと想って載せてみました。
それから「all the earth is gay」なんてね、恋の始まりで弾む心みたいだから。笑



昨夜UP短編連載「Lettre de la memoire、暁光の斎 act.8」加筆終っています、あとで校正ちょっとする予定です。
今朝UPした「杜の変若水―side K2,another sky 明日香の風に」は加筆ほぼ終わり&校正少しだけします。

取り急ぎ、



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