言の葉、紅初めて
文学閑話:楓、紅葉、sycamore×古今東西
The day is come when I again repose
Here, under this dark sycamore, and view
再び安らげる時が来た日
ここ、楓の木下闇に佇んで、そして見渡せば
William Wordsworth「Lines Compose a Few Miles above Tintern Abbey」の一節です。
詩に謳われる「sycamore」は=鈴懸の木・プラタナス、または楓の一種をさす単語になります。
秋の彩変わる情景を謳っているんですけど11月下旬、近場の森で楓の色変が始まりました。
黄葉の多い森なんですけどね、楓も何本かあって今は様々な色を見せています。
These plots of cottage-ground, these orchard-trufts,
Which at this season, with their unripe fruits,
Are clad in one green hue, and lose themselves
‘Mid groves and copses.
草葺小屋の地が描かすもの、果樹園に実れる房、
この季節にあって何れも、まだ熟さぬ木々の果実たちは、
緑ひとつの色調を纏い、そしてひと時に消えて移ろいゆく
木々と森の中深くから。
上と同じ「Lines Compose a Few Miles above Tintern Abbey」です。
色の変わってゆく季節を謳った英国詩ですが、今この時の森そのままだなと。
色づきだす季は昨日今日で全く色彩が変るんですよね、だから毎日通っても厭きない、笑
楓をもちて紅葉の長とす。是立花の賞翫極極の秘伝也。
一色物と定て外の木草をまぜずして、楓ばかりを以て一瓶を成就す。名付て真の一色と云ふ。
貞享5年1968年『立華時勢粧』にて富春軒仙渓が記した言葉です、
紅変する葉っぱではカエデが一番綺麗だ生け花の美的感覚にとっちゃ最高なんだよね、
他の花を添えずに一色だけ、楓だけで活けてもキッチリ立花として完成できる、だから本物の一色って云うんだよ。
って書いてあるんですけど、コレにあるよう華道で楓の紅葉は「真の一色」と尊重されています言われます。
前にも引用した時に書いたんですけど書籍タイトル『立華時勢粧』は「りっかまようすがた」と読みます。
立華=立花・花の生け方、時勢・まよう=時の経過ごと変化する・移ろう、粧=飾る姿、って感じの意味です。
なので「季節ごと飾ってみる花の生け方」という題名でいわゆる『華道テキストブック』ってタイトルになります。
安し惹きの 山下光る 毛美知葉の ちりのまがひは 今日に聞ある香も 阿倍継麻呂
安らぐよう私の脚を惹きとめる、あの山の許に輝く紅葉、
色づいた葉が散り乱れて塵のよう軽く煌めくのは今日と聞いたけど、その通りかもしれない。
君の肌も戀に紅染めて僕を惹きとめて、僕の心を乱して塵のよう軽く僕の心を翻されたのは、今日この香。
前にも載せた歌ですが『万葉集』第十五巻に掲載される、遣新羅使が対馬に泊まった時の歌だそうです。
新羅は現在の朝鮮半島北部にあった国で「遣新羅使」は新羅国へ国交に向かう外交官になります。
歌詞にある「毛美知葉」は「黄葉」色変した葉のこと全般で植物種別も黄色のみではありません。
歌中の「ちり」は「散り」と「塵」、「まがひ」は「乱い」と「紛い」の掛詞。
で「惹きの 山下光る 毛美知葉」は素直に訳すとR18指定になります、なのでココには書きません、笑
もし知りたいなって方がいらしたらメールメッセージでリクエスト下さい、個別にて回答させて頂きます。
その辺を懸けて相聞歌=恋歌に訳してあるんですけど、ホントは単なる情景描写の歌かもしれません、笑
週刊連載のSavant「至上の点1」加筆校正まで終わっています、馨と紀之@講義室です。
会話短篇「Short Scene Talk 居酒屋某夜6」も校了しています、英二と周太の擦違いです、笑
第71話「渡翳8」前半UPしてあります、このあと後半を加筆していきます。
それ終わったら不定期連載or『Aesculapius』どちらか掲載の予定です。
取り急ぎ、
智
文学閑話:楓、紅葉、sycamore×古今東西
The day is come when I again repose
Here, under this dark sycamore, and view
再び安らげる時が来た日
ここ、楓の木下闇に佇んで、そして見渡せば
William Wordsworth「Lines Compose a Few Miles above Tintern Abbey」の一節です。
詩に謳われる「sycamore」は=鈴懸の木・プラタナス、または楓の一種をさす単語になります。
秋の彩変わる情景を謳っているんですけど11月下旬、近場の森で楓の色変が始まりました。
黄葉の多い森なんですけどね、楓も何本かあって今は様々な色を見せています。
These plots of cottage-ground, these orchard-trufts,
Which at this season, with their unripe fruits,
Are clad in one green hue, and lose themselves
‘Mid groves and copses.
草葺小屋の地が描かすもの、果樹園に実れる房、
この季節にあって何れも、まだ熟さぬ木々の果実たちは、
緑ひとつの色調を纏い、そしてひと時に消えて移ろいゆく
木々と森の中深くから。
上と同じ「Lines Compose a Few Miles above Tintern Abbey」です。
色の変わってゆく季節を謳った英国詩ですが、今この時の森そのままだなと。
色づきだす季は昨日今日で全く色彩が変るんですよね、だから毎日通っても厭きない、笑
楓をもちて紅葉の長とす。是立花の賞翫極極の秘伝也。
一色物と定て外の木草をまぜずして、楓ばかりを以て一瓶を成就す。名付て真の一色と云ふ。
貞享5年1968年『立華時勢粧』にて富春軒仙渓が記した言葉です、
紅変する葉っぱではカエデが一番綺麗だ生け花の美的感覚にとっちゃ最高なんだよね、
他の花を添えずに一色だけ、楓だけで活けてもキッチリ立花として完成できる、だから本物の一色って云うんだよ。
って書いてあるんですけど、コレにあるよう華道で楓の紅葉は「真の一色」と尊重されています言われます。
前にも引用した時に書いたんですけど書籍タイトル『立華時勢粧』は「りっかまようすがた」と読みます。
立華=立花・花の生け方、時勢・まよう=時の経過ごと変化する・移ろう、粧=飾る姿、って感じの意味です。
なので「季節ごと飾ってみる花の生け方」という題名でいわゆる『華道テキストブック』ってタイトルになります。
安し惹きの 山下光る 毛美知葉の ちりのまがひは 今日に聞ある香も 阿倍継麻呂
あしひきの やましたひかる もみちばの ちりのまがひは けふにもあるかも
安らぐよう私の脚を惹きとめる、あの山の許に輝く紅葉、
色づいた葉が散り乱れて塵のよう軽く煌めくのは今日と聞いたけど、その通りかもしれない。
君の肌も戀に紅染めて僕を惹きとめて、僕の心を乱して塵のよう軽く僕の心を翻されたのは、今日この香。
前にも載せた歌ですが『万葉集』第十五巻に掲載される、遣新羅使が対馬に泊まった時の歌だそうです。
新羅は現在の朝鮮半島北部にあった国で「遣新羅使」は新羅国へ国交に向かう外交官になります。
歌詞にある「毛美知葉」は「黄葉」色変した葉のこと全般で植物種別も黄色のみではありません。
歌中の「ちり」は「散り」と「塵」、「まがひ」は「乱い」と「紛い」の掛詞。
で「惹きの 山下光る 毛美知葉」は素直に訳すとR18指定になります、なのでココには書きません、笑
もし知りたいなって方がいらしたらメールメッセージでリクエスト下さい、個別にて回答させて頂きます。
その辺を懸けて相聞歌=恋歌に訳してあるんですけど、ホントは単なる情景描写の歌かもしれません、笑
週刊連載のSavant「至上の点1」加筆校正まで終わっています、馨と紀之@講義室です。
会話短篇「Short Scene Talk 居酒屋某夜6」も校了しています、英二と周太の擦違いです、笑
第71話「渡翳8」前半UPしてあります、このあと後半を加筆していきます。
それ終わったら不定期連載or『Aesculapius』どちらか掲載の予定です。
取り急ぎ、
智