「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

夜静かにして群動息(や)み 2006・03・04

2006-03-04 07:20:00 | Weblog



   今日の「お気に入り」は、盛唐の詩人王維(699?-761)の「夜静かにして群動息(や)み」で始まる詩

 を一篇。原詩、読み下し文、現代語訳ともに、中野孝次さん(1925-2004)の著書「わたしの唐詩選」(文春文庫)からの引用です。

  春夜竹亭贈    春夜 竹亭にて

  錢少府歸藍田   銭少府の藍田(らんでん)に帰るに贈る  王維

   夜靜群動息  夜静かにして群動息(や)み
   時聞隔林犬  時に林を隔てて犬声を聞く
   却憶山中時  却って憶う 山中の時
   人家澗西遠  人家 澗西(かんせい)に遠かりしを
   羨君明發去  羨む 君が明発に去り
   采蕨輕軒冕  蕨(わらび)を采(と)って軒冕(けんべん)を軽んずるを

 (現代語訳)
  夜になってさまざまないきものたちの動きが息(や)み、静かになった。今はときおり林の向うで犬の鳴くのが聞えるだけだ。
  こう静かな夜にはかえって終南山にいたときを思いだす。あそこでは人家は澗(たに)の西の方遠く、山々はすべて静まりかえ
  っていた。そのことを思うと、あなたが明日の朝発って南山に行き、役人勤めであくせくするのをやめて蕨をとって生きるよ
  うな暮しをなさるのが羨しい。
コメント
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