「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2006・03・28

2006-03-28 06:20:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、斎藤茂太さんの著書「いい言葉は、いい人生をつくる」(成美文庫)から。

 「最近の若い人には、思うようにいかないことに耐える力、専門的にいえばフラストレーション・トレランスの急激な低下が見られる。原因は、家庭で我慢することを教えなくなったからだと、私はにらんでいる。
 われわれの時代、子どもとは、ひたすら我慢を強いられる存在だった。何かがほしいといえば、正月になったらとか、成績がよかったらなどといわれ、その日まで欲望を抑えて待つことを教えられた。
 二番目、三番目に生まれた子など、上の子の使い古しの『お古』を使わされた。一度でいいから新品を使いたかったと、大人になっても述懐する人がいるほどだ。
 昔は貧乏でモノが不足していたからだろうか。私はそうではないと思う。昔の親は、辛抱させる、我慢させることがいかに大きな意味をもっているかを、体験上、熟知していたからだと思う。
 最近の子は、おもちゃ屋が引っ越してきたのかと思うほどの玩具に囲まれ、多くの場合、二人の両親と四人の祖父母からかわいがられ放題にかわいがられる。
 ほしいものは何でも手に入り、足らざることを知らぬまま育った子どもに、フラストレーション・トレランスが発達するわけがない。ちょっと気に染まないことがあれば簡単にキレたりしてしまうのだ。
 だが、子どものようにヌクヌクした環境で、一生を過ごせる人は、そうはいない。
 私がそうだ。東京でも指折りの大きな病院の跡取り息子として生まれ、世間的にいえば、何不自由ない身の上であるはずだった。だが、震災や戦争に見舞われ、人生は山あり、谷ありの波瀾万丈だった。お金の苦労もイヤというほどしてきた。
 だが、だからこそ、いま私は『自分の人生はおもしろかった』といえるのだと思う。何ひとつ波風がなかったら、人生は実に味けないものになってしまうだろう。
 もし、あなたがいまトラブルの渦中にあり、悩んでいるのだとしたら、トラブルは人生を発展させるためのチャンスなのだと考えるとよい。」

 この文章には「人生に失敗がないと、人生を失敗する」というタイトルがついており、タイトルのすぐあとに紹介されている言葉が今日のもう一つの「お気に入り」。

 「どんなにベッドが温かくても、そこから出なくちゃいけない。
               ――アメリカの歌手 グレース・スリィック」
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