今日の「お気に入り」は、和漢朗詠集から。
「生ある者は必ず滅す 釈尊いまだ栴檀の煙(けぶり)を免かれたまはず
楽しみ尽きて哀しみ来(きた)る 天人もなほ五衰の日に逢へり 江(がう)」
〔現代語訳〕この世に生をうけたものであるかぎりかならず死ぬ時がやってきます。
釈尊でさえも涅槃に入り、その金棺が栴檀の煙の中で火葬にせられることを免れることはできませんでした。
歓楽が尽きるとそのあとにはかならず哀しみがやってきます。
天上の快楽(けらく)を享けた天人ですら、やがて命終(みょうじゅう)の時がきて、五衰の相をあらわすときがくるのです。
(注)江(ごう)は大江朝綱(おおえのあさつな)のこと
(川口久雄 全訳注「和漢朗詠集」 講談社学術文庫 所収)
