「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

時おり鳥がなき 2006・03・05

2006-03-05 07:20:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、ヘルマン・ヘッセの「時おり鳥がなき」という詩です。

 時おり 鳥が鳴き
 風が小枝を渡り
 犬が遠い農家で吠えると
 私は黙って じつと耳をすます
 すると私の魂は戻つてゆくのだ

 忘れられた千年の昔
 鳥や 吹く風が
 私と似て 私の兄弟であつた時まで

 私の魂は一本の樹に
 一匹の獣 ただよふ雲となり
 その変つた見なれない姿で 帰つてきては
 私に問ひかける ああ それに
 どう答へたらいいのだらう?

        富士川英郎訳

 作家の中野孝次さん(1925-2004)が、その著書「わたしの唐詩選」(文春文庫)の中で紹介されている訳詩です。




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