「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

晩年惟好静 2006・03・06

2006-03-06 09:40:00 | Weblog


  今日の「お気に入り」は、盛唐の詩人王維(699?-761)の「張少府に酬ゆ」という詩一篇。

  原詩、読み下し文、現代語訳ともに、中野孝次さん(1925-2004)の著書「わたしの唐詩選」(文春文庫)からの引用です。


  晩年惟好靜   晩年は惟(た)だ静を好み
  萬事不關心   万事 心に関せず
  自顧無長策   自ら顧みて長策なく
  空知返舊林   空しく旧林に返るを知る
  松風吹解帯   松風 解帯を吹き
  山月照弾琴   山月 弾琴を照らす
  君問窮通理   君は窮通の理を問う
  漁歌入浦深   漁歌 浦に入って深し


(現代語訳)

 もはや世事には関心なく、また人に訊ねられたところでこれという策があるわけではない。今はこの山中に住んで、

 もうきちんとした宮仕えの服装でなく、気楽な恰好で松林をわたる風に吹かれ、琴を弾くうちに時の経つのを忘れて

 山にもう月が上っているのを知る。書を読み琴を弾じ、詩を詠み酒を飲んでたのしむ。こういう暮しが今のわたしに

 は気に入っている。君はわたしに経綸のすべてを問うがわたしには答えようがない。漁師の舟が戻ってきたらしく、

 浦の奥で彼らのうたう歌がきこえる。

 
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