「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

商品としての言論 2014・04・12

2014-04-12 06:40:00 | Weblog


今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

新聞雑誌に印刷された言葉は、すべて有料である。代金が払われている。あれは売られた言葉のえんえんたる行列である。代金は雑誌なら原稿料、本なら印税として執筆者に払われる。
 それは一般にあとから送金される。戦前は、いつまでたっても送ってこない(または送れない)版元が多かったが、今は稀れになった。印刷された言葉に支払う習慣は、すでに確立したといっていい。
 ついでに、話をしただけで金をくれる習慣もできた。テレビ・ラジオはその場でくれる。新聞雑誌主宰の座談会も、その場でくれることが多い。
 客として料理屋に招き、丁重にもてなし、もう一人の客と歓談させ、さて宴はててのち、その場で金一封をさし出されて驚く場面を書いた文章がある。
                                                〔『朝日ソノラマ』昭和45年5月号〕」

(山本夏彦著「とかくこの世はダメとムダ」講談社刊 所収)

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