今日の「お気に入り」。
「『人の世にあることはすべて自分の上にも起こり、
人の中にある思いはすべて私の中にもある』
と私は思っているから、なにごとにも、悲しみはしても驚かないのである。
なにものにもおおっぴらで、なにが起きても仕方なくそれを受け入れる、という姿勢は、いわゆる『快活な』とか『ネアカ』と言われる人の特徴である。それに対して、襲いかかる運命をすべて不当なものと感じ、その不運に襲われた自分を隠そうとする人が『ネクラ』と言われる人になる。私のほんとうの『地』はネクラなのだが、私は意識的に、後天的に、ネアカになる技術を覚えたのである。
〔出典:曽野綾子著『晩年の美学を求めて』朝日新聞出版〕」
(曽野綾子著「自分の始末」扶桑社刊 所収)