「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

新聞は一国の言語を売った 2014・04・25

2014-04-25 07:10:00 | Weblog


今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

戦前の新聞はルビつきだった漢字に一々ルビを振るのは、時間的に経済的に負担だったから、新聞社はなが年これを廃止したがっていた子供が近眼になるのはこのせいだと廃止したが、戦後子供の近眼はふえるばかりで、ルビのせいでないことがわかった
 けれどもこのルビのおかげで新聞は難しい漢字が使えたのである。読者もこれをたよりに読めたのである。ルビは小なりとはいえ文化的に重大な意味があったのである。これを廃したから読めなくなったのである。新聞は読めるようにするより、漢字を少くする方に味方した。国のすることなら何でも反対する新聞が、当用漢字には一議に及ばず賛成したのはこのためである。
 何度も言って恐縮だが、これだけは言わしてもらう。新聞は区々たる己が利益のために、一国の言語を売ったのである一国の言語を売ったのである
 
                                  〔Ⅱ『読まない情報が減るんだとさ』昭56・8・6〕」

(山本夏彦著「ひとことで言う‐山本夏彦箴言集」新潮社刊 所収)

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