・昨日、山月記の授業を拝見しておりました。ちょっと難しいのかもしれないと思いつつ、教室後方で拝見しておりました。真剣についていっている。たいしたものであります。
・これはなかなか思い出深い作品であります。なぜか。若い時代のうぬぼれと、自尊。これに振り回される青年の物語だからであります。
・こういう時期は誰にでもあって、どんなに達観したようなことを言ってみても、他人を見下し、おのれこそ傑出した人間であるという自尊は誰でもあるからでありましょう。
・周囲の人間が有象模造に見えるという青年期の、たわいもない精神をあらわして、なかなか面白い。
・しかし、主人公については、いつもわたくしのつまらない慈悲心が起きてしまう。かわいそうでなりません。そこまで自己の才能にこだわるのかと感じるからであります。
・それは他者比較のもとでの思考スタイルしか取りえない、狭い主人公の存在があるからです。
・自我に囚われ過ぎている。オレが、オレがのオンパレード。
・他者との関係性で生きているといっても、他者との比較しか考えの中に無いようでは、これは哀れの一言であります。
・作者中島敦は、どうもこの作品を書いたことによって、ある意味では失敗したのではないかと、大人になってからは思うようになりました。
・つるんでしか生きられないような人には失愛恐怖のようなものがあります。しかし、山月記の主人公のような孤高を愛するという姿勢は、まさに真逆の関係で、失愛恐怖と一致しているのではないかと思うからです。
・いいとか悪いとか言う意味では無く、自分の立ち位置がわからない場合、この作品は、鏡となり得る作品でありましょう。自己を戒めるという点において。
・また来週!