昆布
2019-07-18 | 昆布
こんぶ(昆布)
こんぶは奈良時代から「続日本紀」などの文献に登場します。古くは「広布」、これを音読みして「こんぶ」になったと言われています。夏から秋に収穫され、乾燥させてから出荷されます。数年寝かせた方が味が良いとされており、旬は周年。ただし、三陸、東京湾をはじめ、生で出荷するところもあります。神奈川県横須賀の東京湾で営まれているまこんぶの養殖は、食用のほか水質改善にも貢献しています。こんぶはうまみ成分が多く、だしに使われることが多いですが、多種類の栄養素を含むため、こんぶ自体も食べるとよいでしょう。だしを取ったこんぶを千切りにして、酢、しょうゆ、みりん、酒と煮て佃煮にしたり、素揚げとして塩を振って食べるのもおすすめです。
いつもとちょっと違う驚きを!
昆布をきちんと使ってみよう
一年を通して、日常的に使用している「昆布」。
普段、何気なく使ってしまっていますが、昆布をきちんと使えているでしょうか?
身体にも良いと言われる昆布の認識を、新たにアップデートしてみてはいかがでしょうか。
基本の出汁の取り方など、復習がてらにぜひ、挑戦してみてください。
身体も喜ぶ、昆布のチカラ
昆布漁の様子
『喜ぶ』に通じるとして、縁起の良い食べ物とされている昆布。栄養学的にもとっても優れた食材です。
現代の食生活では、肉や加工品の摂取が多く、身体が酸性に傾きがちになります。
健康体と言われる弱アルカリ性を保つのにも、昆布はとても役立ちます。
☆昆布のチカラ1 「水溶性食物繊維」
昆布の独特のねばり成分、「アルギン酸」や「フコイダン」は海藻特有の水溶性食物繊維です。
乾燥重量の約10%がその含有量と言われています。
水溶性食物繊維は糖質や脂質の吸収を抑え、コレステロール値の上昇を抑えてくれる効果が期待できます。
また、フコイダンの腸から免疫力を高める作用も注目されています。
☆昆布のチカラ2 「ミネラル」
身体に流れる血液やリンパ液は、海水の成分と似ていると言われています。
海で育つ昆布には、他の食品に含まれるミネラルに比べて、体内への消化吸収率が高く、その約80%が体内に吸収されると言われています。
ミネラルの含有量は、一般的な牛乳と比べると、約23倍。
カルシウムは約7倍、鉄分は約39倍も含まれています。
☆昆布のチカラ3 「フコキサンチン」
海藻に含まれる褐色の色素成分「フコキサンチン」。
脂肪の蓄積を抑えたり、たまった体脂肪を燃やすたんぱく質「UCP-1」の活性を上げる、という作用があります。
主に内臓脂肪に届いて作用して、高めの血糖値を下げたり、筋肉で糖の利用を促したりする効果を期待できます。
☆昆布のチカラ4 「グルタミン酸」
グルタミン酸は、胃腸の働きを良くし過食を防ぐ働きがあります。
うまみ成分でもあるこのグルタミン酸が含まれていると、おいしいと感じられる塩分の濃度が低くなるので、美味しく減塩することができます。
知っていましたか?昆布の適材適所
これは何昆布か分かりますか?正解は…利尻昆布です
日本の昆布の約90%は北海道全域、その他は 東北(青森県、岩手県、宮城県)の三陸海岸沿いで採れています。
場所によりとれる昆布も様々。
それぞれに向いた使い方があるのをご存知でしたか?違いを知って、上手に活用しましょうね。
☆真昆布(まこんぶ)
・主な産地は、函館沿岸
・特徴は、厚みがあり幅が広い。昆布の高級品と言われています。上品な甘味をもち、清澄なだしがとれます。
・向いている用途は、主にだし昆布、佃煮、塩昆布など
☆羅臼昆布(らうすこんぶ)
・主な産地は、羅臼沿岸
・特徴は、茶褐色で「羅臼オニコンブ」の別称があります。香りがよくやわらかく黄色味を帯びた濃厚でこくのある高級だしがとれます。
・向いている用途は、主にだし昆布、おやつ昆布、佃煮など
☆利尻昆布(りしりこんぶ)
・主な産地は、利尻・礼文・稚内沿岸
・特徴は、真昆布に比べてやや固め。透明で風味の良い高級だしがとれ、会席料理などに使われています。
・向いている用途は、主にだし昆布、塩昆布、湯豆腐など
☆日高昆布(ひだかこんぶ)
・主な産地は、日高沿岸
・特徴は、「三石(みついし)昆布」とも呼ばれ、濃い緑に黒味を帯びている。柔らかく煮えやすい。だしにも使われる。
・向いている用途は佃煮昆布、昆布巻、おでん用、だし昆布など
☆長昆布(ながこんぶ)
・主な産地は、釧路・根室地方沿岸
・特徴は、6~15mと長く、生産量が最も多い。5・6月にとれた物を棹前(さおまえ)昆布という。
・向いている用途は、佃煮昆布、おでん用、昆布巻など
☆厚葉昆布(あつばこんぶ)
・主な産地は、釧路・根室地方沿岸
・特徴は葉に厚みがある。
・向いている用途は、昆布巻、佃煮昆布、酢昆布など
☆細布昆布、細目昆布(ほそめこんぶ)
・主な産地は、北海道の日本海側沿岸
・特徴は、幅が細く、1年目に採取される。切り口が最も白く、細目の葉形で粘りが強い。
・向いている用途は、とろろ昆布、納豆昆布、刻み昆布など
☆ガゴメ昆布(がごめこんぶ)
・主な産地は、函館沿岸
・特徴は表面に籠の編み目のような紋様がある。粘りが強く、とろろ成分が多い。
・向いている用途は、とろろ昆布、おぼろ昆布、松前漬けなど
昆布を使って料理の美味しさを底上げ!
昆布は煮立つ前に取り出しましょう
料理の基本となる出汁の取り方。
今一度、基本をおさらいをしておきましょう。
☆基本の「昆布出汁」
・だし昆布 10g~20g程度
※向いている昆布は、真昆布・羅臼昆布・利尻昆布・日高昆布
・水 1L
1
昆布の表面を、固くしぼったふきんなどでさっと拭きます。
※表面の白い粉はうま味成分です。水洗いするとうま味成分まで流れ出してしまいます。
2
分量の水に昆布を30分くらい漬けておく。
3
中火にかけます。
4
沸騰直前で昆布を取り出せば、完成♪
※鍋の底から小さな泡がフツフツしてきたくらいの沸騰直前で取り出します。
煮過ぎると昆布のねばり成分が溶け出し風味を損なうので注意しましょう。
☆汁物に欠かせない「一番出汁」
・だし昆布 10g~20g程度
※向いている昆布は、真昆布・羅臼昆布・利尻昆布・日高昆布
・かつお節 30g程度
・水 1L
1
昆布の表面を、固くしぼったふきんなどでさっと拭きます。
2
分量の水に昆布を30分くらい漬けておき、その後、中火にかけます。煮立つ直前に昆布を取り出します。
※または弱火で(お湯の温度を60℃程度に保ち)40分くらいかけて煮出す。
3
昆布を取り出しお湯が煮立ったら、かつお節を入れ、一煮立ちしたらすぐに火を止め、灰汁(あく)をすくって取り除きます。
4
かつお節は、かき混ぜず自然に沈むまで待ってから、ふきんやキッチンペーパーなどで漉します。
☆煮物や味噌汁など「二番出汁」
・一番だしを取った後の昆布とかつお節
・かつお節(追いがつお) 10g程度
・水 1L
1
一番だしを取った後の昆布とかつお節と水を鍋に入れ、強火にかけます。
2
一煮立ちしたら弱火にし、そのまま10分程度煮ます。
3
最後に、新しいかつお節を加え(追いがつお)、一煮立ちしたらすぐに火を止め、灰汁(あく)をすくって取り除きます。
4
かつお節はかき混ぜず、自然に沈むまで待ってから、ふきんやキッチンペーパーなどで漉します。
ほったらかしで作り置き!便利な「昆布水」
手間と時間がかかるようで、なんだかちょっと面倒くさいイメージの昆布出汁。
ほったらかしで作り置きできたら、いつでもすぐに使えて便利だと思いますよね。
「昆布水」ならば簡単に作ることができます。
ぜひ、挑戦してみてください。お吸い物や味噌汁の出汁として。
☆「昆布水」
・だし昆布 20g程度
・水 1.5L
※「だし昆布」と明記されているもの(真昆布・羅臼昆布・利尻昆布・日高昆布など)。
平たい昆布。
<作り方>
ポットなどにミネラルウォーターか水道水を注ぎ、昆布を3時間以上、(できれば1晩)漬ければ、出来上がり。
昆布はそのまま漬けても、細く切った昆布を漬けてもOK!
<保存期間について>
冷蔵庫で1週間くらいはもちますが、夏場などはできるだけ早目に使い切りましょう。
食材のトリビア情報
- 【海の中でだしが出ないのはなぜ?】
- 昆布のだしの主成分はグルタミン酸。昆布が海中で生きているときは、グルタミン酸は細胞膜に守られているため、細胞から外には出ません。
- しかし、海からあげて天日干しにされると昆布の細胞膜が壊れてしまうので、水に浸すと「だし」が出るのです。
知っておきたい基礎知識
旬な時期 | 7月~9月 |
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栄養素トピックス | こんぶに豊富に含まれる食物繊維は、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルに次ぐ第六の栄養素とも言われ、毎日の健康維持のために必要です。(※1)特に女性にはおすすめの栄養素です。 (※1)日本食品標準成分表2015年版(七訂)食物繊維 |
選び方 | 良く乾燥していて、濃い緑褐色で、ツヤのあるものが良質です。また、分厚く、全体に白い粉がついているものが美味しいとされています。 |
保存 | 使いやすい長さに切り、密閉容器に入れ、湿気が少なく乾燥したところに保存します。冷蔵庫であれば長期保存が可能です。 |
調理ポイント | 表面の白い粉はマンニットといい、旨みのもと。洗い流さず、汚れはふき取る程度にしましょう。だし用に使ったこんぶは、使いやすい大きさに切ってラップで包んで冷凍し、つくだ煮やみそ漬け、煮物に使うとよいでしょう。 |
品種や種類 | まこんぶ、りしりこんぶ、ながこんぶ等の種類があります。最も高級なのがりしりこんぶで、澄んでいて強い旨みと甘みのあるだしがとれるという特徴があります。まこんぶも高級こんぶのひとつ。ながこんぶは、炒めたり、煮たり、だしをとったりと広く活用され、こんぶ自体を食べる料理にも利用されています。 |