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「多古タコの湾ウラに船泊トドめをして藤の花を望みて懐オモヒを述べる(十二日、布勢の水海に遊覧アソび、多古タコの湾ウラに船泊トドめ、藤の花を望見ミて、各ヒトビト懐オモヒを述べてよめる歌四首)」
「藤波の影なる海の底清み沈シヅく石をも玉とそ吾アが見る(歌四首 1/4 #19.4199 守大伴宿禰家持。)」
「藤波が映る影なる海の底沈む石さえ珠に見えます(守大伴宿禰家持)」
「多古の浦の底さへにほふ藤波を挿頭カザして行かむ見ぬ人のため(歌四首 2/4 #19.4200 次官スケ内藏ウチノク忌寸ノイミキ繩麻呂ナハマロ)」
「多古の浦の底に映れる藤波を挿頭カザにせんか見ぬ人のため(次官スケ内藏ウチノク忌寸ノイミキ繩麻呂ナハマロ)」
「いささかに思ひて来コしを多古の浦に咲ける藤見て一夜経ぬべし(歌四首 3/4 #19.4201 判官マツリゴトヒト久米朝臣廣繩。)」
「それほどと思わず来ました多古の浦に咲ける藤見て夜を明かすべし(判官マツリゴトヒト久米朝臣廣繩)」
「藤波を借廬カリホに作り浦廻ミする人とは知らに海人とか見らむ(歌四首 4/4 #19.4202 久米朝臣繼麻呂ツグマロ)」
「藤波を借宿として浦廻ミする人とは知らず海人とか見るか(久米朝臣繼麻呂ツグマロ)」