2016/03/11
「携帯を持つ手悴むこの朝は『ゴモラの町』に化したあの地は
(五年前3月11日14時46分)」
「ビル脇の土落ち込める船坂は高みに船が登りしところ()」
「錆び取って机で使いしこのハサミ雄勝庁舎のとなりで拾う()」
「櫂さんは俳人なれど短歌にて震災詠みし句では難しと
(長谷川櫂は俳句では表現が難しくて短歌を選び、『震災歌集』を詠んだ。)」
「俳人の照井翠の詠う句は実体験で深く届けり
(県立釜石高校の教諭で震災時やく1ヶ月避難所である体育館で過ごす)」
「三月を喪ひつづく砂時計 (照井翠)」
「春の海髪一本もみつからぬ (照井翠)」
「春の星こんなに人が死んだのか(第五句集『竜宮』より)」
「寒昴たれも誰かのただひとり (第五句集『竜宮』より)」
「夏草や壺の口まで埋むる骨 (『竜宮』以降)」
「万緑の底で三年死んでゐる (『竜宮』以降)」
「寄するもの容るるが湾よ春の雪(『竜宮』以降)」
「失敗をテーマにしたる畑村氏みちびき出したること忘れるな
(1.あり得ることは起こる。あり得ないと思うことも起こる。
,2.見たくないものは見えない。見たいものが見える。
,3.可能な限りの想定と十分な準備をする。
,4.形を作っただけでは機能しない。
,5.変化に柔軟に対応する。
,6.危険の存在を認め、議論できる文化を作る。
,7.自分の目で見て考え、判断・行動する。
)」
「自立語で活用をして述語にと『なり』と『たり』との形容動詞()」
「『なり』と『たり』連用形の活用は二種類あるを忘れぬように()」
「落鮎や定かならざる日の在り処(片山由美子/未然形)」
「やまるせ来るいたちのやうにしなやかに(佐藤鬼房/連用形)」
「僅か焚く枯菊思ひあまたなり(古賀まり子/終止形)」
「おぼろなる仏の水を蘭にやる(大木あまり/連体形)」
「年の瀬のうららかなれば何もせず(細見綾子/已然形)」
「エレベーター開き馥郁と雪の街(奥坂まや/連用形)」
「ボウダたる汗のうちなる独り言(中村草田男/連体形)」
「『ク活用』『シク活用』の違いとは形容対象がモノと感情
(ク活用:あるものの性質や状態を形容
,シク活用:そのときの状況に対する感情を形容
)」
「海の禽さびしからずや初日の出(阿波野青畝/未然形:打消しの助動詞『ず』が接続しているので未然形、牧水の『白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ』が下敷き)」
「美しく火葬のおわる午前かな(宇田喜代子/連用形:美しく-終わるとなるので連用形)」
「夕空の美しかりし葛湯かな(上田五千石/連用形:『美し』+過去の助動詞『き』で連体形『し』が接続。過去の助動詞は連用形に接続するので、『カリ活用』して連用形『美しかり』になる)」
「秋茄子ややさしくなりし母かなし(星野立子/終止形:『かなし』と言い切っている)」
「老友てふをかしき言葉若菜摘(田中裕明/連体形:をかしき-言葉と名詞に接続)」
「桃の花老の眼にこそ精しけれ(永田耕衣/已然形:『こそ+精し』と強調の助詞『こそ』が『精し』について已然形の『精しけれ』に変化)」
2016/03/11
「人を待ち人に待たれる春の日の野のキランソウ深いむらさき(鳥海明子)」
「おもしろき名の付きおりしキランソウ『地獄の釜の蓋』というのは
(花言葉:あなたを待っています)」
「花を見て『地獄の釜』にいきつかぬあえて言うなら葉の形かな()」
「花言葉待っていますと言われても地獄の釜じゃ遠慮しませり
(キランソウ、地獄の釜の蓋、金瘤小草)」
「桃笑う時期とは言えど春愁をふと覚えたる時期でもあると(『春愁』)」
「目を覆うことが起これる五年前春愁などと構えておれぬ()」
「離合する狭間の時期に無慈悲にも老若男女地獄の釜へ()」