促音便
「促音は『つまる音』なり表記では『っ』『ッ』と現代語では(歴史的仮名遣いでは『つ』『ツ』と大きな字で書く)」
「促音の原理は母音iが消えつまりたりtteになる
(勝ち+て=勝って:タ行四段
,思ひ+て=思って:ハ行四段
,吊り+て=吊って:ラ行四段
,あり+て=あって:ラ行変格
)」
「上二段活用動詞の場合には音韻的に結合強し
(下り+て=下りて:上二段はiが結合が強く脱落しない
,折り+て=折って:ラ行四段はiが結合が弱く脱落する
)」
「水流の厚きを打ムツカシイジつて梅雨燕()」
「幼児の持つておもたき桐一葉(川崎天宏)」
「雲海に向かつて吹けり法螺の貝(野村泊月)」
「飛び散つてカトの墨痕淋漓たり(野見山朱鳥)」
「羽あつて梢のてつぺんでの早起き(阿部完市)」
「撥音便『撥』とは撥ねることなりきいくつかの音『ん』で表す()」
「i飛んでteが有声化deになりて鼻にかかりてndeになれる
(飛び+て=飛んで:バ行四段
,摘み+て=摘んで:マ行四段
,死に+て=死んで:ナ行変格
)」
「背に点字浮かんでをりし蟇(大石結鬼)」
「飛び火野に弾んでをりし袋角(稲畑廣太郎)」
「酒飲んで椅子からころげ落ちて秋(小澤實)」
「人死んで昨日のままに爪浮かぶ(橋本多映)」
「ウ音便助詞『て』の上の動詞には連用形の活用をする
(ハ行四段活用動詞の連用形
,ウ音便法則を適用
,○ただようて:×ただよふて
,○おほうて :×おほふて
,○まうて :×まふて
,○むきあうて:×むきあふて)」
「四段の連用形の活用の語尾『ひ・び・み』『う』に変化する
(hi-u:歌ひて-歌うて
,bi-u:呼びて-呼うで
,mi-u:頼みて-頼うで
)」
「山ざくら貴船にひとの漂うて(中田剛)」
「或る日小鳥空を覆うって渡りけり(数藤五城)」
「鶴舞うて天上の刻ゆるやかに(井沢正江)」
「震災忌向あうて蕎麦啜りけり(久保田万太郎)」
「ウ音便『び・み』の変化は俳句では例句もなくて引用できぬ(平家物語に例がある)」
「ウ音便ハ行四段活用の動詞は『ひ』が圧倒的と()」
「四段の連用形の活用の語尾『き・ぎ・し』が『い』に変化する
(ki-i:書きて-書いて
,gi-i:繋ぎて-繋いて
,si-i:放して-放いて
)」
「草笛の子が近づいて遠くにも(稲畑汀子)」
「天涯に風吹いてをりをみなへし(有馬朗人)」
「ひゝらぎが咲いても兵は帰り来ず(福島小雪)」
「寒の月白炎曳いて山をいづ(飯田蛇笏)」
「リラ嗅いで青空がすぐうしろかな(宮津昭彦)」
「蘆刈りの天を仰いで梳る(高野素十)」
「竹皮を脱いで光をこぼしけり(眞鍋呉夫)」
「俳句では『放し』の音便変化した例句がなけれ狂言にあり(狂言『千鳥』の科白から『放してくだされ:放いてくだされ』)」
「聞きなれぬ『音便』なるは枝道も原則覚え実践をせよ()」
「梨食うてすつぱき芯に至りけり(辻桃子/食って、食うて、食ふて、食ひて)」
「長き間に音の変化を受けたのち発音・表記が落ちつきしとこ
(イ音便:書きて-書いて
,ウ音便:食ひて-食うて
,撥音便:読みて-読んで
,促音便:立ちて-立つて
,)」