2016/03/30
【打消推量の助動詞『じ』『まじ』】
【助動詞の『じ』】
「助動詞の『じ』の意味として二通り打消し推量・打消し意志と
(打消し推量:…ナイダロウ、…マイ/二人称、三人称の時
,打消し意志:…スルツモリハナイ、…マイ/一人称の時
)」
「馬方は知らじ時雨の大井川(芭蕉)」
「鶏頭の芽を踏まじ鶏頭の芽を踏まじ(岸本尚毅)」
「助動詞の『じ』の活用は『』のみで接続するは未然形なり
(活用:○・○・じ・じ・じ・○
,接続:未然形
)」
【『じ』の例句】
「神棚の灯は怠らじ蚕時(蕪村/終止形)」
「冬に負けじ割りてはくらふ獄の飯(秋元不死男/)」
【助動詞の『まじ』】
「助動詞の『まじ』の意味には四通り推・意・適・可の打消である
(打消し推量:キット…ナイダロウ、…ナイニチガイナイ、…ハズガナイ、…マイ
/例句:春鴉野に悪声は嘆くまじ[河野南畦]
,打消し意志:ケッシテ…ナイツモリデアル、…スルキハナイ、…マイ
/例句:原爆許すまじ蟹かつかつと瓦礫あゆむ[金子兜太]
,不適当な事態:…テハナラナイ、…ナイホウガヨイ
/例句:踏むまじき沙羅の落花のひとつふたつ[日野草城]
,不可能の推量:…デキソウニナイ
)」
「助動詞の『まじ』の活用二つあり形容詞的とカリ活用とあり
(形容詞型:○・まじく・まじ・まじき・まじけれ・○
,カリ活用:○・まじかり・○・まじかる・○・○
)」
「接続は要注意して使うべし通常終止でラ行は連体()」
「この『まじ』の接続するに著名なる俳人さえも間違うという
(『負くまじく』が正解:歌留多とる皆美しく負けまじく[高浜虚子]
,『老ゆまじく』が正解:白地着ていましばらくを老いまじく[中尾寿美子]
)」
【『まじ』の例句】
「美しく残れる雪を踏むまじく(高浜虚子/連用形)」
「優曇華やしづかなる代は復と来まじ(中村草田男/終止形)」
「あせるまじ冬木を切れば芯の紅(香西照雄)」
「鴬や雨やむまじき旅ごろも(水原秋桜子/連体形)」
2016/03/30
【推量・当然の助動詞『べし』】
「『べし』の意味『西瓜止めて』と記憶せよ全部で六つなんとかなるさ
(ス:推量=キット…ダロウ
,イ:意志=…シヨウ、…スルツモリダ
,カ:可能=…デキル、…デキソウダ
,ト:当然=…ハズダ、トウゼン…スベキダ
,メ:命令=…セヨ
,テ:適当・勧誘=…ノガヨイ、…ノガテキトウデアル
)」
「大夕焼消えなば夫の帰るべし(石橋秀野/推量)」
「行々子殿に一筆申すべく(波多野爽波/意志)」
「初富士を隠さふべしや深庇(阿波野青畝/可能)」
「鰯雲人に告ぐべきことならず(加藤秋邨/当然)」
「シュウセンは漕ぐべし愛は奪うべし(三橋鷹女/命令)」
「山吹や笠に指すべき技の形ナリ(芭蕉/適当・勧誘)」
「活用は二種類ありてク活用・カリ活用の用法があり
(『ク活用』:○・べく・べし・べき・ベケレ・○
,『カリ活用』:べから・べかり・○・べかる・○・○
)」
「接続は基本は終止もラ行のみ連体形に接続される
(終止形=一般:行くべし、死ぬべし
,連体形=ラ行:あるべし
)」
【『べし』の例句】
「逢ひ別るべく来て冬の虹淡し(小林康治/連用形)」
「花は葉に人はしづかに読むべかり(下村梅子/連用形)」
「茄子の花巧言令色滅ぶべし(沢木欣一/終止形)」
「邯鄲の冷たき脚を思ふべし(長谷川櫂/終止形)」
「鶏頭の十四五本もありぬべし(子規/終止形)」
「眠る山狸寝入りもありぬべし(茨木和生/終止形)」
「この梅に牛も初音と鳴きつべし(芭蕉/終止形)」
「梅雨の川こころ置くべき場とてなし(飯田龍太/連体形)」
「返すべき鍵が小箱に星祭(片山由美子/連体形)」
2016/03/30
【推量の助動詞『らむ』『けむ』】
「まとめれば『らむ』には三つの意味ありて今がどうかを推し量るなり
(現在推量:イマゴロハ…シテイルダロウ
,現在の原因推量:ノタメ…ダロウ、ドウシテ…ダロウ
,現在の伝聞・婉曲:…トイウ、…トカイウ
)」
「憶良らは今はまからむ子泣くらむそを負ふ母も吾を待つらむそ(山上憶良)」
「吹くからに秋の草木しをるればむべ山風を嵐といふらむ(文屋康秀)」
「活用は簡単なりし『らむ・らめ』で終止接続ラ行連体
(活用:○・○・らむ・らむ・らめ・○
,接続:終止形接続=書くらむ、散るらむ
,ラ行:連体形接続=あるらむ
)」
「下二段・上二段には要注意連体でなく終止接続
(謝った例
=×:暮るるらむ/○:暮るらむ
=×:過ぐるらむ/○:過ぐらむ
=×:消ゆるらむ/○:消ゆらむ
)」
「烏賊噛めば隠岐や吹雪と暮るゝらん(石橋秀野/正解は『暮るらむ』なので五音にしたかったのか)」
「鰯雲故郷の竈火いま燃ゆらん(金子兜太/終止形)」
「月明かし人を待つらむ藪虱(相生垣瓜人/終止形)」
「まとめれば『けむ』には三つの意味ありて過去がどうかを推し量るなり
(過去推量:…タダロウ、…ダッタダロウ
,過去の原因推量:…タトイウワケナノダロウ、トイウノデ…タノダロウ
,過去の伝聞・婉曲:…タトトイウ、…タソウダ
)」
「活用は簡単なりし『けむ・けめ』で連用形に接続したり
(活用:○・○・けむ・けむ・けめ・○)」
「幾人をこの火鉢より送りけむ(加藤秋邨/終止形)」
「春曙何すべくして目覚めけむ(野澤節子/終止形)」
「万葉の男摘みけむ蓬摘む(竹下しづの女/終止形)」
2016/03/30
「雪に耐え時間トキを越えたる大根の素直に白い十字の花よ(鳥海明子)」
「野菜とてお世話になりし大根の花咲きたるをわたしは知らず
(花言葉:適応力)」
「スズシロと春の七草の一つなり口に入るまで実態知ろう()」
「春分の末候となる本日は春を告げいる春雷の声(『雷乃声を発す』)」
「稲妻の光は米の豊作をもたらすといい語源でもあり(『稲の夫ツマ』と言うこと)」
2016/03/30
【推量の助動詞『む』『むず』】
「推量の助動詞大きなヤマ場なり数多きこと圧倒される(む、むず、らむ、けむ、べし、らし、めり、なり、まし、じ、まじ)」
「『む』=『むず』は同じ意味なり『むず』なるは『む』の打消しでないから注意()」
「『む』を『ず』にて打消すときは『ざらむ』なり語順が逆になっているなり()」
「『むず』なるは『む』+『と』+『す』合わされ『と』が詰まり『す』が濁っては『むず』となれる(『…むということをする』という意味)」
「中世に『む』の母音が脱落し『む』が『ん』に変化をしたり(『む』=『ん』=『むず』=『んず』皆同じ)」
「推量の助動詞『む』には意味多し『時』の解釈多彩なるゆえ(推量、意志、適当、勧誘、仮定、婉曲など)」
「日本では過去・現在・未来とはぼんやりとして連なりしもの()」
「まず主語が一人称であるならば『…シヨウ』と意志をあらわす()」
「猫じやらし心おきなく見て死なむ(齊藤玄)」
「その次は主語が二人称であるならば適当、勧誘の意味につかえり(適当:『…スルノガヨイ』
,勧誘:『…シマシヨウ』)」
「いざ子ども走ハシリありかむ玉霰アラレ(芭蕉)」
「三人称私とあなた以外ではすべて推量『…だろう』になれる()」
「新草を古草つつむ妻癒えむ(矢島渚男)」
「現代文仮定の『む』なる助動詞がないゆえ理解しがたものがあるかも()」
「草枕小春は替へむ夢もなし(水原秋桜子)」
「『む』と『むず』の上は動詞の未然形接続しては活用される()」
「父在らば秋晴れの坂山車越えむ(小澤克己)」
「蛍籠いづこに置かば安からむ(関戸靖子)」
「地球またかく青からむ龍の玉(鷹羽狩行)」
【む、むずの例句】
「朝顔や百たび訪はば母死なむ(永田耕衣/終止形)」
「この道もやがて凍てんと歩きゆく(星野立子)」
「わがための露日和かな働かむ(大木あまり)」
「連翹やこけし飾らむ他人の家(小林康治/連体形)」
「歳月の獄忘れめや冬木の瘤(秋元不死男/已然形)」
「別れなむ冬山の襞胸そこに(恩田侑布子)」