今回の主役の一人と言っても良いマーク・ストロング扮するマーリンが口にする「ジョン・デンバーが好きなんだ」というセリフが,シリーズ2作目となる「キングスマン:ゴールデン・サークル」の空気感を象徴している。どこから見ても隙のない英国紳士が,実はアメリカを代表するフォーク(カントリー)・シンガーでありながら,一見英国流の「粋」とはほど遠い存在と思われるデンバーがフェイバリットだった,という,喜劇には必須のミスマッチ感覚が,第1作を遥かに凌ぐ秀逸なコメディに仕立て上げている。これはやられた。
評判となった第1作も悪くはなかった。コリン・ファースとストロング,二人の英国紳士が,ヤンキー青年を育て上げながら,世界征服を目論む敵と戦う。ミステリー風味を内包したスパイものでありながら,キレの良いアクションとブラックな笑いを随所に配した構成は,世界中から好意的な拍手で迎えられ,その結果こうして無事続編の制作と相成った訳だから。
だが私としては不満もあった。英国の諜報機関とそこで働くスパイを描く以上,「007」シリーズを意識しない訳にはいかない。その差別化を,視点を引いて大英帝国的エスタブリッシュメントに敬意を払いつつ,それを笑いのめすコメディとして描くという手法を選んだはずなのに,圧倒的に笑いの要素が足りなかった。その結果,アクションの残虐性のみが浮き上がってしまい,全体としてバランスを欠いた出来になってしまったように,私には見えた。
けれども,主にアメリカに舞台を移した本作は,その反省が十分に活かされている。冒頭に記したマーリンの「ジョン・デンバー愛」は,彼の文字通り一世一代の「カントリー・ロード」の熱唱で最高潮に達するのだが,それだけではない。もう一人の主役はエルトン・ジョン。彼が「トミー」以来の,そしてそれを踏まえたような役柄で出てきて,ファースがあわや殺人アイボにのど笛を切り裂かれようとする瞬間に救世主として登場するカットの衝撃力は,コメディ映画史上に残ると言っても過言ではないだろう。
更に敵役に抜擢されたジュリアン・ムーアの造形力も素晴らしい。アメリカの料理番組の人気ホステスと見紛うばかりの出で立ちで,「特製ミンチ」ハンバーガーを作る笑顔は,ハンバーガー・チェーン店からクレームが来てもおかしくないほどのおぞましさだった。悪役,かくあるべしだろう。
そんな数々の爆笑級の大笑いで彩られたラストの長回しアクションも最高。このペースでこれからも楽しませて欲しい。「カントリー・ロード」万歳!
★★★★★
(★★★★★が最高)
評判となった第1作も悪くはなかった。コリン・ファースとストロング,二人の英国紳士が,ヤンキー青年を育て上げながら,世界征服を目論む敵と戦う。ミステリー風味を内包したスパイものでありながら,キレの良いアクションとブラックな笑いを随所に配した構成は,世界中から好意的な拍手で迎えられ,その結果こうして無事続編の制作と相成った訳だから。
だが私としては不満もあった。英国の諜報機関とそこで働くスパイを描く以上,「007」シリーズを意識しない訳にはいかない。その差別化を,視点を引いて大英帝国的エスタブリッシュメントに敬意を払いつつ,それを笑いのめすコメディとして描くという手法を選んだはずなのに,圧倒的に笑いの要素が足りなかった。その結果,アクションの残虐性のみが浮き上がってしまい,全体としてバランスを欠いた出来になってしまったように,私には見えた。
けれども,主にアメリカに舞台を移した本作は,その反省が十分に活かされている。冒頭に記したマーリンの「ジョン・デンバー愛」は,彼の文字通り一世一代の「カントリー・ロード」の熱唱で最高潮に達するのだが,それだけではない。もう一人の主役はエルトン・ジョン。彼が「トミー」以来の,そしてそれを踏まえたような役柄で出てきて,ファースがあわや殺人アイボにのど笛を切り裂かれようとする瞬間に救世主として登場するカットの衝撃力は,コメディ映画史上に残ると言っても過言ではないだろう。
更に敵役に抜擢されたジュリアン・ムーアの造形力も素晴らしい。アメリカの料理番組の人気ホステスと見紛うばかりの出で立ちで,「特製ミンチ」ハンバーガーを作る笑顔は,ハンバーガー・チェーン店からクレームが来てもおかしくないほどのおぞましさだった。悪役,かくあるべしだろう。
そんな数々の爆笑級の大笑いで彩られたラストの長回しアクションも最高。このペースでこれからも楽しませて欲しい。「カントリー・ロード」万歳!
★★★★★
(★★★★★が最高)