子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「トイ・ストーリー3」:シリーズのクオリティーの高さを証明した見事な第3作

2010年08月22日 23時46分53秒 | 映画(新作レヴュー)
シネコンのチケット売り場で「トイ・ストーリー3を」と頼んだら,係の若い女性に「大人お一人様…だけですか?」と言われた。多分,私のような中高年が一人で「トイ・ストーリー3」を観に来る,というケースは極めて稀で,殆どが子供もしくは孫を連れて,というパターンのため,「子供○枚」と続く筈だと踏んで先手を打って言ってくれたのだろう。でも,「子供はかまってくれない」私は,一人だけで「トイ・ストーリー3」を観に行き,一人で涙を流して帰ってきたのだった。

韓流と並んでアニメにはとんと疎い私だが,このシリーズの先行作には,おもちゃ達の質感にまず驚かされ,次いでキャラクターの彫りに感動し,アドヴェンチャーとしての躍動感に心躍らされてきた。CG技術の巧みさは勿論だが,おもちゃ同士の反撥と融和と連携を中心に,子供とおもちゃの関係を真っ直ぐに見つめた脚本のプロット作りの上手さには,特筆すべきものがあった。
脚本家の橋本忍が良い映画の必要条件として挙げる名監督マキノ省三の言葉「一スジ,二ヌケ,三動作」つまり「第一に脚本,第二に映像,第三に演技」が,見事に実践されている。

シリーズ最終作となるらしい「3」は,その三つの要素が過去最高のレヴェルで達成された,素晴らしい作品になっていた。
おもちゃの所有者であるアンディとおもちゃ達の蜜月,つまりアンディがまだ小さかった頃の回想シーンから,やがてアンディが成長して大学に進学するらしいことが分かってくるまでのイントロ部分の演出から,もうおじさんの涙腺はやばかった。

「子供時代」という期間限定の付き合いが醸し出す切なさに,バービーとケン(最高に笑える)の恋物語という要素を挟み込むことによって,大人の世界を透かし絵として見せる技も冴えている。更に,途中でバズが「スペイン語バージョン」にリセットされてしまったり,新参者が年少組の幼児によって辛い目に遭う,というプロットによって,今のアメリカを支える(主にヒスパニック系の)移民が置かれた立場をさりげなく描くに至っては,社会性と娯楽の同居という,近年のハリウッドが避けてきた王道に真っ向から勝負を挑んでいるようにも見える。

従来のハリウッド的尺度から見れば,決して「ハッピーエンド」とは言えない決着の付け方を敢えて選択したクリエイターの,子供たちへの信頼の強さには,ジブリ作品のクリエイターが持っているのと同種の志が感じられて感動した。両者を繋いで,静かに子供たちを見守るある「キャラクター」の佇まいが,実に好ましい。
評価は,冒頭のシークエンスにおけるキノコ雲の扱いに関して「日本人」として若干の違和感を抱いたことと,いくら日本語吹き替え版でもテーマ曲くらいは吹き替えなしでランディ・ニューマンのあの歌声を聴けると思っていたのに,そこまで日本人の歌に「吹き替え」られていたのか,というショックを合わせて,星半分を減点した結果で,実質的には満点だ。あっぱれ,バズ&ウッディ&その他のみんな!
★★★★☆
(★★★★★が最高)


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