子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2010年TVドラマ夏シーズン・レビューNO.6:「熱海の捜査官」

2010年08月20日 06時50分59秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
地方都市の女子高校生に起こる事件。地元警察に乗り込んで来る,あやしい「広域捜査官」。「時効警察」シリーズや映画「転々」でオダギリジョーと組んできた三木聡の新作が目指したのは,どこからどう見ても,デヴィッド・リンチが80年代に創り上げた,エポック・メイキングな連続TVドラマ「ツイン・ピークス」なのだった。

共通点は山ほどある。冒頭に記したように,事件の被害者がどちらも女子高校生であること。犯人に近いと思われる怪しい老人とセクシーなウェイトレスが登場すること。物語の舞台となる小都市の警察が,森林警備隊的であること。物語の背景にはセックス・スキャンダルが絡んでいる気配が濃厚だが,主人公の捜査官はどちらも超然としてそれに巻き込まれる気配さえ見せないこと。カイル・マクラクランが扮したクーパー捜査官は,画面には登場しないが,テープ起こしをしてくれる秘書と思しき「ダイアン」に向かって事件の状況を録音していたが,オダギリジョー扮する星崎捜査官も携帯電話のヘッドセットを使って,画面には登場しない秘書官らしき人物と常に連絡を取っていること。
更に第2回の放送では,「ツイン・ピークス」では謎の中心となっていた秘密の小部屋にそっくりな,ストリップ小屋ならぬ奇術劇場まで登場した。

逆に,異なる点としては,星崎はクーパーとは違って,ドーナツ中毒ではなさそうなことと,星崎には「時効警察」の流れを汲んで,北島捜査官(栗山千明)というパートナーがいるということが挙げられるが,町全体が秘密に関わっているという雰囲気は,極めて似ている。
一話完結の「時効警察」から何本かの劇場用映画を経て,1時間枠の連続ドラマへとフォーマットを変えながら,笑いとミステリーが渾然一体となった「脱力系カルト大河ドラマ」を目指す(多分)という三木聡の心意気は,続編とコミック原作だらけのドラマ界にあって,何とも頼もしく映る。

ふせえり,岩松了,松重豊といった三木ファミリーとオダギリジョーががっちりと組んだスクラムに,コメディエンヌの資質は確かな栗山千明がどう絡んでいくかが最大の焦点ではあるが,これまでのところは,市長の娘役で星崎にまとわりつく静電気みたいな女子高校生役の二階堂ふみが,かなり面白い味を出している。
お久しぶりの藤谷文子が「平成ガメラ」シリーズの少女役から一躍女教師役というのも,時の変遷を感じさせて感慨深い。こうなったら父親役で実父のスティーブン・セガールまで引っ張り出せれば仰天ものだが,フジの「ジョーカー」共々久しぶりに「どんな展開になるのか」というワクワク感を感じさせてくれるプログラムで,私はかなり嬉しい。


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