子供はかまってくれない

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映画「ソーセージ・パーティー」:「R15+のアニメ」という難しい選択

2016年11月27日 10時14分53秒 | 映画(新作レヴュー)
その昔,手塚治虫御大がご存命中に,虫プロの制作で「アニメラマ」と銘打った成人向けのアニメーション映画が3本公開された。御大は主に「制作総指揮」や「原案」という立場で関わっていたため,厳密に「手塚治虫作品」と言えるかどうかは微妙なところだが,「クレオパトラ」や「千夜一夜物語」といった題材を手塚流に翻案した作品の新聞広告を見て,子供心に「エッチなアニメを観に行くエッチな大人」などいるのだろうか,という素朴な疑問を持ったことを鮮明に覚えている。あれから40数年,なんとこの私が「エッチなアニメを観に行くエッチな大人」になってしまった。恐ろしいことだが,そんなおじさんはやはりいたのだった。
金正恩体制の北朝鮮を題材にした話題作「ザ・インタビュー」で物議を醸したセス・ローゲンが,声優だけでなく脚本とプロデュースにも参加した「ソーセージ・パーティー」は,そんな昔懐かしい作品を思い出させるかのように「R15+」指定という,実に難しいジャンルに挑んだ意欲作だ。

人間に食べられる運命を知らずに,買い物客に選んで貰ってスーパーマーケットの陳列棚から脱出することを夢見る食材達が,恋する相手と愛を交わすための奮闘努力を描いたコメディ映画。
しかしながら肝心の「R15+」指定部分の過激さを過剰に求めて劇場へ走った私のような観客の多くは,ほとんど肩透かしに近い思いを味わったことだろう。性的かつ上品とは言えない台詞のやり取りはそここに鏤められており,過激な描写も確かに終盤に用意されてはいる。しかし作品の大半は,離ればなれになった食材達が再会を果たし,人間に食べられる運命を仲間に周知した上で,そこから逃れるためのアドヴェンチャー劇に費やされる。
結果的には,活劇としての工夫の跡は確かに見られるものの,アクションのキレやアイデアの豊富さ,描写の拡がりや豊かさ等々,どれを取っても非生物の擬人化劇の先達である「トイストーリー」シリーズの偉大さが際立つ,ということになってしまった。

直接的な描写の限界に挑むよりも,際どい会話の妙や下品であってもつい吹き出してしまうようなユーモアで勝負した方が,遥かに勝算は高まったはず。残念ながら脚本段階で勝敗は決してしまった印象がある中,ただ一人健闘しているのはホットドッグのパン役を演じたクリスティン・ウィグ。本人は決してセクシー系の女優ではないのだが,「ブライズメイズ」の脚本をものした才女は,ゲロにまみれて奮闘した「ゴーストバスターズ」に続いて与えられた役回りを完璧にこなして,何とか最後まで観客の興味を繋ぎ止める。エンドクレジットに流れる「JOY TO THE WORLD」だけが,彼女の快演を爽快に言祝いでいる。
★★☆
(★★★★★が最高)


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