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映画「キングコング:髑髏島の巨神」:この時代に真っ正面から「怪獣映画」を問う勇気

2017年05月05日 20時02分07秒 | 映画(新作レヴュー)
ピーター・ジャクソンの「キングコング」は,「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズに続く,ビッグバジェットのオリジナル・リブートという雰囲気を持った大作だった。その大作感が堂々としていた一方で,「怪獣映画」に必要な「笑えるほどの馬鹿馬鹿しさ」といった点では,オリジナルへのリスペクトに端を発したと思われる行儀の良さの方が勝っていたような印象が強い。
それに比べるとジョーダン・ボート=ロバーツというまったく聞いたことのない名前の監督がメガホンを取り,しかも「髑髏島の巨神」などという,昔懐かしい新東宝系のエログロ怪物映画かと疑われるような副題が付いた本作は,予告編やフライヤーを見るだけでもB級感満載のプログラム・ピクチャーという雰囲気でワクワクさせてくれた。実際,肝心の本編もそんな期待に違わない熱い「怪獣映画」になっていた。

まずは第二次大戦までその存在すら知られておらず,更に時を経ること30年,ヴェトナム戦争終結時に初めて米軍が本格調査に入ることとなった「髑髏島」なる秘境の佇まいが良い。どう見ても新東宝作品としか思えない。その点で言うと,紅一点のカメラマンに扮したブリー・ラーソンが,アカデミー賞主演女優賞の次回作として,こういう世間的には「低俗アクション映画」にジャンル分けされるであろう作品に嬉々として出演しているのも実に好ましい。惜しむらくは「マタンゴ」における水野久美とまでは行かなくとも,コングが命に替えてでも守りたくなるような,妖艶な姿態を晒すシークエンスがあると完璧だったのだが。

初監督作「ナイトクローラー」で「人間」という地球上最悪のモンスターの狂気を抉りだしたダン・ギルロイの脚本は,部下思いなのか,単なる戦闘フェチなのかが判然としないサミュエル・L・ジャクソン扮する司令官の描写と,彼が調査隊一行との間で起こす葛藤部分でやや停滞するが,コング対変形オオトカゲの血湧き肉躍るバトルをクライマックスに,巧みに冒険譚を盛り上げる。
コング以外にうじゃうじゃ出てくる怪獣の造形も面白いし,まるでプロレスのバトルのように,劣勢に陥りながらも土壇場で火事場の馬鹿力を発揮して勝利を収めるというクリシェも,実に爽快に決まる。

エンド・クレジットが終わった後の映像で,次作でのキングギドラやモスラらしき怪獣の「予告先発」が告知されるのだが,思いの外,期待高まる黄金週間なり。
★★★☆
(★★★★★が最高)


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