Music Mania

No Music No Life

オールオーバージャパンダ

2023年01月28日 | 邦楽
ギターパンダ「オールオーバージャパンダ」

ギターパンダの新作が出たので早速DLして聴いているがとてもいい。最高傑作かも。
今回は今まで以上に自分の内面に切り込み、弱さを曝け出している。
実際ギターパンダのようなインディーズ系ロッカーにとって、コロナ禍の社会は相当生きづらいものだっただろう。
1曲目の「虹の向こうから」では、ロックがお金に負けて名古屋の工場で素性を隠しながら働いてる男のことが歌われている。
インディーズ系のロッカーの現実だ。
また「中庭のヘビイチゴ」では発達障害の人のことが歌われていて、なかなか胸が締め付けられる詩になっている。
「見て見ぬふりをしていたので」では現在のSNSなんかで流行りの陰謀論について、ストレートに言っちゃってる。
ギターパンダさん、応援してます。

ギターパンダ「見て見ぬふりをしていたので」【Offical Music Video】


上田正樹とサウス・トゥ・サウス「この熱い魂を伝えたいんや」

みのミュージックで流れてた「ムカデの錦三」が気に入ったので、それが入ってるアルバムをDLした。
内容は1975年発表のデビューアルバムにしていきなりライブ盤で、しかも唯一のアルバムというレアなもの。
そして、異常なほど熱くすごいグルーヴのソウル/ファンクてある。
曲は上田正樹のオリジナルと思われる曲とソウル/ファンクのカバーで、それらが全く違和感なく同列に並んでいるのだが、それを可能にしているのが超強力なリズム隊だ。
ドラム、ベースのテクがあるというより、彼らの持つ天性のリズム感の相性が抜群なのだろう。
オーティス・レディングのカバーなんて、本家を超えてるのでは、と思わせるほど凄いノリである。
僕は上田正樹といえば「悲しい色やね」しか知らなかったんだけど、これは今まで聴いてなかったのがもったいないくらいの名ライブ盤だ。

上田正樹 & South To South お前を離さない

ロックが死んだのではなくオマエが死んだだけ

2023年01月06日 | 邦楽
昨年末くらいにみのミュージックで「ロックは死んだとかいってるやつへ」という動画がアップされた。
内容は、巷にいる「ロックは死んだ」とかいってる古いタイプのロックが聴きたい人に対し、こういうのが聴きたかったんでしょ?と2022年に発表されたオールドテイストのカッコいいバンドを紹介するというもの。
まずは、その動画を見ていただこう。

ロックが死んだとか言ってるやつへ


動画見ましたか?
見てないですよね、わかります。
だって面倒くさいもんね。
たとえ見たとしても、これはマジカッケーから聴いてみてと言われても聴きませんよね。
わざわざアーティスト名から検索してサブスクとかYouTubeで聴いてみるのって超面倒くさいから。
たぶん、ここを読んでる方で、ここで紹介されてるアーティストを実際に聴いてみた人って10人に1人くらいだろう。

動画で紹介されたアーティストは以下の5つ。
彼らの一番新しいアルバムをDLして全曲聴いたところ、どれも60年代から70年代のテイストを色濃く感じるサウンドで、なかなか面白いと思った。

・家主
・ゆうやけしはす
・すばらしか
・フーテン族
・工藤裕次郎

家主「DOOM」、1曲目のヘヴィなイントロにまず期待感が高まるけど、ボーカルがちょっと弱い。
この傾向はどの曲にもいえることで、曲そのものやアレンジのセンス、とくにディストーションギターのカッコよさは相当なものだけど、ボーカルの弱さが気になった。

ゆうやけしはす「怨恨戦士!! ルサンチマンvsシューマイ少女と神谷組 第一回戦 シケた街から風のように去れ!!」。
長すぎるし意味不明な題名、それだけでインパクトがあるが、中身は濃すぎるくらい濃い。
まるで60年代後半から70年代初めくらいのブリディッシュロック、というより昭和40年代の汗臭いロックと言った方がいいかもしれないオールドなサウンドだ。
とくにオルガンの音がレトロチックで、とても味がある。
ギターもファズが効いててよろしい。
曲はサイケやロックンロール、ブルース、フォークなどなかなかバラエティに富んでいる。
そして何よりロックしている。
メンバーの見た目も、昭和40年代の映画に出てくる素行の悪い若者のようである。

すはらしか「すはらしき」。
これは和製ローリングストーンズといった感じで、力強いブリテッシュロック風だ。
歌詞の世界観はちょっと忌野清志郎を感じさせる。
今もこんなに汗の匂いを感じさせるロックンロールをやってるバンドがあったなんて、少し驚きである。
ブルース風の曲も、黒人のソレというより、ストーンズがカバーしてるような雰囲気だ。

フーテン族「フーテン族の世界」は路線としてはゆうやけしはすに似ているが、こっちの方がよりロックンロールな感じがあり、すばらしかほどではないけど、ストーンズっぽくもおる。
なかにはギター弾き語りな曲があったり、ファンク調の曲があったりなど、表現の幅が広いのもいい。

工藤裕次郎はギター一本弾き語りで、歌メロやコード進行は70年代フォークそのものだ。
一曲がとても短いので、あっという間に全部聴いてしまう。
わりと好き嫌い分かれるタイプだと思うけど、好きな人はツボにハマると思う。

今回紹介されたアーティストおよびアルバムは、あくまでも古いタイプのロックが聴きたい人向けなので、別にこういうのが流行ってるわけではない。
そして、これが重要なところだけど、彼らは別に中高年向きにこういう音楽をやってるわけではなく、あくまでも同世代やもっと若い人に聴いてもらいたくてやってるのである。
若い人からすると、逆に新鮮に聴こえることもあるだろう。
興味のある方はYouTubeかサブスクで検索して聴いてみてはいかが?

話は「ロックは死んだ」に戻す。
少し前にSNSの某コミュニティで「私たちの世代は血の通った音楽を聴いてきた世代だから、最近のは受け付けない」と言ってる人がいた。
これもロックは死んだと同じようなものだろう。
つまり、今の音楽を聴かない自分は正しい、だって今のロックは死んでる、あるいは血が通っていないのだから。
と、正当化しているのである。
誤解してほしくないのは、中高年が今の音楽を聴かないことそのものは別に問題はないということ。
30歳すぎると人は新しい音楽を聴かなくなる人が多いという統計結果も出ている。
なので、自分はもう歳だから新しい音楽にはついていけないんだ、というのは普通のことであり、なんの問題もないことなのだ。
それなのに、今の音楽は死んでるとかいって自分を正当化しているのは、リスナーとして死んでるようなものなのだ。
ロックが死んだのではなくオマエが死んでるのだ。

樹影

2022年10月08日 | 邦楽
クレイジーケンバンド「樹影」

クレイジーケンバンドの新作である。
内容はいつものクレイジーケンバンド的な歌謡ロックで、期待を裏切らないクオリティーが保たれている。
チョイワルオヤジのノスタルジックなロックは50代の耳に心地よい。
今回ちょっと面白いと思ったのは「Honmoku Funk」という曲で、ジェイムス・ブラウンの影響が濃いファンクナンバーだ。
このリズムパターンは名曲「コールドスウェット」そのものだし、ホーンのアレンジもそれっぽい。
後半のトロンボーン(?)によるソロも味わい深くていい。
僕が知ってるなかでは、今までにはなかったタイプの曲だ。
続いて入っている「スカジャンブルース」もいい。
ブルースというよりR &Bだけどグルーヴ感溢れるベースがうねっていてカッコいい。

クレイジーケンバンド - 2022年8月3日発売ニューアルバム『樹影』ティザー



プライマル「ワイプ・ユア・アス・ユアセルフ!」

プログレメタルバンドのプライマルがサブスク配信を始めた。
プライマルとは数年前に四日市で対バンしたことがあるけど、ものすごいテクニカルなアンサンブルと、客に棒立ちを許さないノリの激しさをも持つバンドだ。
このアルバム、CDの方は一昨年くらいに発売されたと思うけどサブスク配信はつい最近である。
1曲目「ハングリースピリッツ」はTo-Melaっぽいリフがかっこいいハードなナンバー、「3.11」は東日本大震災をテーマにしたヘヴィなインスト曲だ。

BRIMAR at Music farm 20200927 "Lifeline"

シド、羊文学、野宮真貴

2022年05月23日 | 邦楽
シド「海辺」

ヴィジュアル系バンド、シドの新作アルバムである。
僕はこのバンドを初めて聴いたけど、とても親しみやすいメロディがあり、わりと万人向けな感じがした。
僕のような50を過ぎてる人間からすると、メロディラインに昭和歌謡の匂いを感じることができる。
彼らの年齢は知らないけど、おそらくまだアラフォー未満だろう。
それでこのメロディセンスはどこから来たのだろう?
一種の昭和ブームから来てるのかもしれない。
現に若い人の間で、昔の歌謡曲なんかも人気らしい。
他のアルバムはまだ聴いてないのでわからないけど、こういったメロディセンスがあるというのは大きなアドバンテージがあると思う。

シド『海辺』全曲ティザー


羊文学「アオワ・ホープ」

オルタナ系バンド、未文学の新作アルバムである。
風変わりなバンド名はそれだけでインパクトがある。
羊で文学というと、どうしても村上春樹的なものを感じるのだが、Wikiによると関係なさそうだった。
このバンドはボーカルがなかなか魅力的だと思う。
決して歌唱力で聴かせるタイプではないけど、声質がいいのか、歌い方がいいのか、ひきこまれるものがある。
あと、サウンド作りのセンスがいい。
バンドとして、やはり演奏力を売りにするタイプではないけど、音色とフレーズの選び方がとてもうまい。

羊文学「光るとき」Official Music Video (テレビアニメ「平家物語」OPテーマ)


野宮真貴「ニュービューティフル」

元ピチカートファイブの野宮真貴の新作アルバムである。
この人、僕より年上だとは思ってたけど、もう還暦らしい。
だが、その歌声は昔と変わらず今も若々しく、知らずに聴いたらまだ20代で通用するくらいだ。
もちろん曲調も若々しく、アダルトテイストに走ることなく自分らしいと思われるポップスが詰まっている。
この中で昭和テイストだなと感じるのは、クレイジーケンバンドの横山剣が曲提供とデュエットボーカルを披露する「おないどし」だ。
完全に横山節メロディーだけど、野宮真貴のボーカルもパズルのピースがピタッと収まるみたいに相性がいい。

野宮真貴&横山剣「おないどし」LIVE MOVIE-Maki Nomiya & Ken Yokoyama (CRAZY KEN BAND)"Onaidoshi" LIVE MOVIE

四人囃子「おまつり」から読み解く「輪に入れない人」

2022年05月22日 | 邦楽
おまつり(やっぱりおまつりのある街へ行ったら泣いてしまった)

なにもすることがなくて
なにもすることがなくて
おろしたてのバラ色のシャツ着て
おまつりのある街へ
その街にはいつもおまつりがあるのさ

みんな輪になって踊る
みんな輪になって踊る
俺も踊ろうとしたけど
誰かの足をふんづけて
しょうがなしにみんなの匂いを
かいでまわっていたのさ

みんなで一つづつ歌を唄うことになって
みんなはもちろん彼女ののとを唄ったのさ
俺の番がやってきて
あのこのことを唄おうとしたけど
文句を忘れてフシだけで唄ったのさ
そしたらみんなは怒って
俺の頭を殴りつけたのさ

なにもすることがなくて
なにもすることがなくて
おろしたてのバラ色のシャツも
もうやぶれそう
やっぱりおまつりのある街へいくと
泣いてしまう


四人囃子の代表的な曲で「おまつり」というのがある。
歌詞は、暇なのでおまつりのある街へ行ったけど馴染めなかった、という内容。
ここに出てくる「おまつり」は、みんなが輪になって踊ったり、一人ひとりが自分の彼女の歌を歌ったりするようだ。
それで歌えなかったりするとみんなから殴られるらしい。
そんな気持ち悪いおまつりのある街ってあるのだろうか?
どこかの地方では、昔からそういうことをやってるのだろうか?
最初はそう思った。
このバンドの曲って「空飛ぶ円盤に弟が酔ったよ」とか、ファンタジーなのかなんなのかよくわからないのがあるので、あまり深く考えないでいた。

それが最近「一触即発デラックスエディション」というのを聴いてたら、ふと歌詞の意味が理解出来たような気がした。
ここでいう「おまつり」というのは、みんなが楽しそうにしている場とか、リア充な空間とか、そういうことを言ってるのではないだろうか。
数人から数十人の人が集まり、みんなキラキラ輝いていて、いかにもリア充してるみたいな空間。
それを「おまつり」という言葉で表していると解釈すればしっくりくる。
そこへ、なにもすることがない、つまり一人ぼっちの主人公がみんなの輪に参加してみたのだ。
でも彼はそこでうまくみんなに合わせられなかったり、挙げ句の果て、みんなを怒らせたりしてしまう。
やっぱりこういう場へいくと仲間はずれにされてしまう、という内容だ。
主人公の彼は、本当はみんなの輪に入りたい、キラキラした充実した時を過ごしたい、と思ってるし、もちろんみんなに迷惑をかけるつもりもない。
それなのにどうしてうまくいかないのだろうか?
これはなかなか難しい問題だけど、一言で言えば不器用なんだろう。
手先が不器用なのではなく人との接し方が不器用なんだと思う。
それと歌詞の初めの方で、おろしてのバラ色のシャツを着ていくと歌っている。
これは、自分を自分以上に見せようとしていることの描写かもしれない。
こういうところも、人とうまく馴染めない理由かもしれない。

歌の最後の方で、バラ色のシャツはもう破れそうだと歌っている。
もしかすると、ようやくバラ色のシャツが自分に馴染んできた、着こなせるようになってきたのだろうか。
それなら、不器用な彼も次におまつりのある街へ行っても泣かずにするかもしれない。

Omatsuri