Music Mania

No Music No Life

少年Hの原作を読む

2014年11月16日 | 読書
今年の夏、テレビで映画版の「少年H」を見たと書いたが、原作本も面白かったときいたので、その日のうちに注文した。
それから2,3日して家に届いたのだが、他にも読んでる本があるなどして、ずっと手つかずだった。
最近になってようやくページを開くことになったのだが、読み始めると止まらなくなるくらい夢中になった。

上下2巻のうち、最初の1巻は戦前の元気いっぱいな暮らしぶりが、実に生き生きと描かれている。
好奇心旺盛で、ワンパクで、毎日遊びに忙しくて、ときには親にいえないことや、危険なこともやってのける。
僕が幼い頃は、まだ古き良き昭和の名残があったので、少年Hの行動には「あるある」と膝を叩きたくなる部分も多い。
少年Hの友人たちも、「こんなヤツいたなぁ」と思わせる子ばかりだ。

後半の2巻目になると、戦中から戦後の話になる。
そのため、1巻目にあった明るさが少しづつ失われていき、シリアスな雰囲気になってくる。
世の中の流れに疑問をもつ少年Hは、表面的には皆に合わせるものの、常に納得の出来ない状態に耐えることになる。
やがて戦争が終わり、世の中がコロッと手の平を返したような世論になると、Hは正気でいられなくなってしまうのだった。

この物語を読み進める中で、忘れてはならない極めて重要な事柄がある。
少年Hは当時の平均的な男の子とはちょっと違う環境に育ったということだ。

・生まれ育ったのは、外国人の多い神戸という街だったこと
・父親は様々な国の人を相手に仕事をし、ときには家族ぐるみの付き合いがあったこと
・家族はキリスト教徒で、とくに母親は熱心なクリスチャンであったこと

さらに付け加えると、毎日が楽しい、今でいう「リア充」であったこと。
そのため戦争によって日常が変わっていくことに疑問を感じ、鬼畜米英を叫ぶ世論に共感できず、終戦のときにはホッとする。
そりゃあ、少年Hのような環境で育てば、そのように感じるのは当然だろう。

作者の妹尾河童という人は、自分の少年時代の話としてこれを書いている。
もちろん、そんな昔のことを、まるで昨日のことのように覚えてるわけがないから、いろいろ脚色したり、あとから資料と見比べて記載したり、あるいは思い違いもあるのだろう。
それでも戦前から戦後までの数年間を、一人の少年の目線という形でうまく表現出来ており、戦争資料ではなく、読み物として完成されている。
今現代の中学生くらいの子が読むと、どういう感想をもつのだろうか?

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