昭和51年開業の「東軒」(アズマケン)
場所は学芸大学駅の改札を出て左手の西口商店街を進み1本目を右折した左手。
昔ながらの町の中華屋さんの雰囲気を残す店内は、L字型カウンター席と壁に向き合う
カウンター席が4席。厨房内ではおじさん2人が調理を担当し、おばさんが接客応対。
私事になりますが、こちらは私が中学生のころ、よく出前を取ったお店。
今のお二人は当時、鍋を振るっていた男性とは違う方のように思うのですが…。
壁側のカウンター席に座り、注文したのは、中学生の私が最も好きだった、“もやしそば”@750。
メニューには、もやしラーメンと書いてあったけれど、おばさんがオーダーをとおしたとき
「もやしそば」と言ってたのでおそらく間違いないだろう。
卓上には、メニューのほか、醤油、酢、辣油、黒胡椒、一味、爪楊枝、紅しょうが。
割り箸は箸立てにまとめて。
着座後には水がもらえ、お目当てのそばに先立ち、鰹節と刻みネギをのせた冷奴が登場した。
ランチサービス?よくわからないが、見ると他のお客様にも提供があるので、遠慮なく
いただくことにする。のん兵衛はこういう小鉢が出ちゃうと、ビールでも飲みたくなるんだけれど。
壁を見たら、キンミヤ焼酎やちょとした小つまみの壁貼りメニューがアピールを仕掛けてくる。
今日はだめだめ。心は中学時代に戻って“もやしそば”を食べるのだから。
割り箸をパチンと割って、麺を探る。縮れ目の中細麺はやわやわ。
キャベツ、モヤシ、タマネギ、ピーマン、キクラゲと微量の豚肉は薄味のあんかけで
まとめられており、軟弱な中細麺に絡めてすすり上げる。
ん~。何十年前の記憶なのではっきりしないけれど、確かいつも味が微妙に違うんだよな。
今日は化学に醤油も足りない感じだ。こういう時は、卓上の黒胡椒が活躍するとき。
ドカスカとふりかけ、再び絡めていただく。
――お、近い近いぞ!
中学生の時、風邪の治りかけに回復食として求めたのが「東軒」の“もやしそば”だ。
当時はあんかけの野菜にニンジンもいたように思ったが、それももうよく思い出せない。
お客様は地元の年配者が中心、漏れ聞こえる会話からすぐに常連さんだとわかった。
私も学芸大学から引っ越していなかったら、普通に通っていたのかもしれないなあ。
商店街も昔と様変わりして店も色々と変わった。
移り変わりの激しいなか、当店が残っているが奇跡のようにさえ思う。
今回、訪問したのも店が無くなってしまってからでは、あの味を食べたくても食べれない
と考えたからだ。自身にとっては、歴史の1ページ。
思い出という付加価値がある唯一無二の“もやしそば”なのであります。
東軒 (アズマケン)
東京都目黒区鷹番3-7-4
TEL 03-3710-4070
営業時間/ 11:30~15:00 18:00~23:00