峰野裕二郎ブログ

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私たちは進み来れたのだろうか

2007年06月09日 | 保護司
保護観察強化で再犯防止 更生保護法が成立(朝日新聞) - goo ニュース

連日、凶悪な犯罪が報じられています。その中に、ある時、保護観察中の人が引き起こした事件がありました。そしてそれは、商業主義マスコミの格好【かっこう】の標的となりました。
事件後、テレビのニュースショーでは、過激なことを言えば受けると、自らを売り込むことしか考えていないように見受けられる司会者・評論家・コメンテーターのみなさんが、更生保護・保護観察がいかに無力で機能していないかとあげつらいました。

社会的な関心を集めたことで、当局は何でもいいから、とにかく何かをしなければならなくなりました。それが今回の更生保護法の成立につながっています。

私の住んでいる佐々町には私を含め7名の保護司がいます。1人の保護司は保護観察事件を常時、1件から3件ほど抱えています。全国に保護司は約49,000人いますから、保護観察対象者はざっと見積もっても10万人弱いることになります。対象者が守らなければならないことを守らないからといって簡単に刑務所や少年院に戻せる数字ではありません。

社会の秩序を乱す行為に対し、何らかの私的、社会的制裁を加えることは、人類の歴史と共に常に存在してきました。それは、やがて「犯罪」と「刑罰」として捉えられるようになり、どのような行為が犯罪であり、それに対してどのような刑罰が科されるべきかは、すべて法律で定められるようになっていきました。
刑罰の形態は、生命刑(死刑)、身体刑(例えば鞭【むち】打ち刑)から自由刑(懲役【ちょうえき】・禁錮【きんこ】刑)、財産刑(罰金)へと展開していきましたが、それらはいずれも犯罪に対する社会的制裁、もしくは応報と考えられていました。

それが近代に入ると、人道主義的な思潮【しちょう】の広まりや、人間行動に関する科学的な知識の発展を受けて、刑罰の意義も単に犯罪者を罰するのではなく、その改善更生も視野に入れるようになってきました。
こうして18世紀の後半には刑務所に拘禁「こうきん】する目的は、単に収容者を罰することではなく、健全な社会常識や労働精神を涵養【かんよう】する教育的なものであると考えられるようになったのです。

さらに、19世紀の後半には犯罪者の改善更生を図るためには、事案によっては、矯正【きょうせい】施設に収容するよりも、実社会で生活させながら指導、援助することの方が効果的であるとされるようになり、ここに更生保護が誕生しました。

私たちの国の更生保護は、刑務所からの釈放者に対する民間篤志家【とくしか】や団体による慈善的な保護の伝統に加え、英米で発達した保護観察や仮釈放の方法を巧みに組み合わせたものです。犯罪者の社会復帰には地域社会の理解と協力が不可欠で、保護司制度は実に見事にこれを実現した制度であると国際的にも高く評価されています。

そもそも更生保護・保護観察というのは、犯罪者を地域社会の中で通常の生活をさせながら、社会の順良な一員となるように指導、援助するものですから、地域社会の人々の理解と協力がなければ効果を上げることは不可能なのです。

その更生保護・保護観察がうまくいっていないというのであれば、私たちの進歩って、一体なんだったんだろうと思います。

今回成立した更生保護法は、明らかに更生保護・保護観察の精神に反したものであり、私たちの精神性の後退を反映したものであるといえます。「保護観察強化」という意味不明の、その実、脅【おど】し以外の何ものでもない法律で再犯を防ぐことなどできるはずもなく、むしろ、保護司・保護監察官が安易にそれに頼るようになることで、保護観察で最も大切な対象者と保護司の信頼関係を築きにくくする恐れさえあります。

寛政2年(1790年)、老中松平定信は、火付盗賊改方長谷川平蔵の進言で、江戸石川島に人足寄場【にんそくよせば】を設け、かつて刑罰を受けたことがある人たちのための授産施設としましたが、これが更生保護制度の先駆【せんく】の1つと考えられています。
明治時代に入ると、篤志家による出獄人保護の事業が始まりました。出獄人保護事業は免囚保護とも呼ばれ、個人的な、あるいは宗教的な慈善救済の心情に発していますが、併せて再犯防止による社会全体の保護ということも認識されており、現在の更生保護の思想の原型をなすものです。

今こそ私は、先達【せんだつ】の高邁【こうまい】な精神を引き継ぎ、心ならずも罪を犯してしまった人たちに添っていこうと気持ちを新たにしています。
[ところどころ、法務省保護局・更生保護法人日本更生保護協会 保護司のてびきより引用しています]

あの子ツバメたちの昨日の様子です。カメラのピントを合わせる音に動じる様子もなく、お母さんが餌【えさ】を運んでくるのを待っていました。

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