ロッコさんの散歩

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革命の子どもたち

2014年07月23日 | 映画

1960年代から70年代にかけて反資本主義、世界同時革命を目指した極左組織のリーダーだったドイツのウルリケ・マインホフと日本の重信房子の2人の娘たちやその関係者へのインタビューとその当時の映像で構成されたドキュメンタリー映画。

「革命」なんて言葉、今は本来の意味で使う人はほとんどない気がするが、あの時代は本気で口にする人がたくさんいたのだと改めて思った。今もイスラム過激派と呼ばれる人たちのテロは後を絶たないが、当時は日本人の過激派と呼ばれた人たちが海外でも日本でも空港、大使館、企業などを狙ったテロを頻発させていたことを思い出す。

ドイツのマインホフのことはまったく知らなかったが、重信房子はあの当時よく報道されており、日本で逮捕された時も卑屈に顔を隠したりせず、支援者たちに笑顔を見せて連行されていた記憶がある。信念を持った人は強いなぁという印象だった。その娘重信メイはジャーナリストとして最近中東問題などを取材しているので、この母と娘の人生に興味があって今回映画を観てみた。

母の方は学生運動を経て、革命思想に目覚め日本を出てベイルートを拠点に、パレスチナ人たちに共感し日本赤軍を立ち上げる。様々なテロ事件の直接の実行犯ではなかったようだが黒幕的存在として国際指名手配されていた。2000年に日本に偽造パスポートで入国した際に逮捕され現在はガンを患いながら刑務所で服役中。娘のメイはその母とパレスチナ人男性の間に生まれ、母とは離れて暮らしていた時期が長く、パレスチナ人社会のなかで20数年無国籍のまま育ち、日本に帰国した際に日本国籍を得た。パレスチナでは両親の活動のため命の危険もあったそうだ。今はジャーナリストとして日本で暮らし、母の元へも面会に通っているとのこと。たまたまそんな母から生まれたために過酷で数奇な運命を背負わされているわけだが、インタビューに答える彼女は凛として美しい。

暴力が問題解決にはならないと、重信房子も獄中で日本赤軍解体を宣言し、暴力による手段を否定しているようだがパレスチナとイスラエルの暴力による応酬は今も続いている。アメリカが支援するイスラエルの軍事力の前ではパレスチナがテロで対抗しなければならない一面もあるのだろうが、お互い報復の連鎖を繰り返し泥沼状態が続く。そんなところにたまたま生まれたために恐怖に晒され、命まで奪われる子どもたちの理不尽さ、不運。人は生まれる場所を選ぶことはできないし、どんな親を持って生まれるかも選べない。それなのに自分の出自を自慢したり、そのことで他人を差別したりする愚かさ。殺し、殺される危険もなく平穏に日常を暮らせることがいかに貴重かなど、いろいろ考えさせられる作品だった。

 

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