この何年かけっこう雪山にも行っているが、春山だったり小屋からのピストンだったり日帰りだったりで、真冬の縦走登山はしたことがない。そこで思い切って今年は行ってみることにした。さすがに単独では不安なので大枚を叩いてツアーに乗ることにした。
韮山に前泊、翌朝ガイドさんと落ち合って登山口の御座石温泉までタクシーで入る。そこから鳳凰小屋まで上り1泊、次の日に稜線に出て地蔵、観音、薬師の三山を縦走して南御室小屋でもう1泊、翌日夜叉神峠に下りるというツアーで参加者は男性3名、女性2名にガイド1名の編成。
何年か前の秋に西側の広河原から登ったことはあるが、東側からは今回が初めてだ。今なら稜線に出れば雪を抱いた北岳はじめ南アルプスの3000M峰の絶景が楽しめるはずだ。
8時過ぎ勇躍出発。出だしからけっこうな急登だが雪はない。そのうち凍った道に雪がうっすら積もっている状態になり滑りやすいのでアイゼンを付ける。
天気は曇天、時折強烈な冷たい風が吹きあがってくる。途中の燕頭山(2104M)ぐらいまでは順調に進んだが、この辺りで男性1名が体調不良で時折立ち止まりペースが遅くなる。ツアー登山なのでそれはやむなしだが、燕頭山からは雪も深くなり気温も低いので歩いているうちはいいのだがいったん止まると猛烈に寒い。
それでも男性はなんとかがんばって15時過ぎに全員無事鳳凰小屋到着。標高差1400M、コースタイムで5時間半のところ7時間かかったことになる。
秋にいったん閉じた鳳凰小屋は年末年始だけ営業しているのだが、八が岳などの通年営業の小屋のように寒さ対策はほとんどなし。土間に薪ストーブがあるが夕食が終わるとそれも消え、火の気はまったくなし。標高2400Mの小屋では零下10度から15度くらいになる。冷凍庫の中にいるようなものだ。
もちろんトイレは外にある。日が暮れてからトイレに行こうと真っ暗な中ヘッドライトの灯りを頼りにいくが回りが見えにくくトイレの場所がよくわからない。すぐ近くのはずなのだが・・・。しばらくウロウロしてやっと見つける。トイレの建物が真っ黒なのでわかりにくかったのだ。おまけにトイレの前は氷がバリバリに張っている。やれやれトイレに行って遭難するところだった。
着られるものはすべて身に着け十分に冷えた布団にもぐりこむ。足にもウールのソックスを3枚履くがそれでも暖かくはならない。厚着で窮屈なので寝がえりを打つのも大変だ。せめてシュラフカバーを持って来ればよかった。それと象足も。
もともと小屋やテントでは熟睡できたためしがないので当然だがやはり寒さが加わるとさらに厳しい。そんなこんなで長い夜が過ぎていく。